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この店は、ローザーさんのお兄さんが経営しているという。お菓子も美味しいから勧めたいと言ってくれた。夏樹君へ渡してもいいですか?と、黒崎の方へ先に聞いていた。爽やかな雰囲気が意外だ。いつも濃密な空気があるのに。
「ありがとうございます。頂きます。お兄さんはいらっしゃいますか?」
「今日は不在で。伝えます。……藤沢君から聞いたけど、ご家族を空港へ見送りに行くんでしょう?一緒に包んでもらうわ。長旅でしょうから。空港で食べると良いわ」
「ありがとう。何でも食べるんだ。えーーっと」
小さなメニューを見せてもらい、バニラとリンゴ入りの一口パイを選んだ。それを頼んだ後、ローザーさんが周りに会釈しながら、向こうのテーブルへ戻った。よかったなと、黒崎が言った。ヤキモチを妬いたのかと聞くと、お前の方だろうがと言い返されて、居たたまれない気持ちになった。完全に図星だ。
「なんだよ~、あんたの方こそさーー」
「警戒したからだ。言っただろう」
「……”僕とは似ていない”って言っていたのに?」
「聖河さんが本当に好みなのか?と聞き返した。鈍いぞ」
「そういうことか……。うんうん。鈍いよ。認める」
「それでいい。何かあれば逃げろ」
「んん……、無理に食べさせるなよ~」
サラダについている、スモークサーモンを口元に持ってこられた。もう黙っておけという意味だ。素直に口に入れて見つめると、黒崎が眉間に軽く皺を寄せた。そのお返しに、唇を尖らせてやった。周りから笑い声が聞こえているが、気にしないでおく。
「口元についているぞ。……拭いてやる」
「指先で取って舐めてよ。家の中みたいに」
「ここじゃやらない。普段からだ」
「一言多くなったね?うんうん、いいことだよ」
「お前は減らせ。いや、そのままでいろ」
「どっちだよ?ふん。よーし、残りを食べるよ。急がないとね」
「そっちを食う。半分でも腹に入れておけ」
小さなフライを食べてくれた。俺は一個食べた。こういうことをするのは行儀が悪いと言っていたのは、いつ頃までだろう?さすがに今でも、ムードの漂う夜のレストランではやらない。さり気なく温かい飲み物をオーダーされて、それが当たり前になっている。焼き菓子をテイクアウトすることも。
「……クッキーの他にも選んでおけ。明日の分だ」
「やったー。お義父さんの分も選ぶよ。来たことがないだろうし。和菓子オンリーになったからねえ。これがいい」
バター不使用のビスケットを見つけた。自分の分も頼んでおく。ふと気づくと、黒崎が焼き菓子のカウンターの前へ立っていた。どれがいいのか言っていないのに。そして、彼が戻ってきた時、選んだ商品を全部オーダーしたことを知った。
「びっくりしたよ。何も言っていないのに」
「選んでいるところを見た。バター不使用は人気らしい。しっとりとした食感だそうだ」
「へえ。ミルクが入っているのかな。お義父さんに合うね。柔らかい方がいいからさ。今年82歳だもん。歩く距離が長くなったねえ?」
「外に出る楽しみを覚えたからだろう。ドアすら自分で開けなかった」
「それは仕方のないことだよ。側近に囲まれていたから。その人達、ほとんど会社に残っていないよね?グループ企業か、コンサルティングへ行ったって聞いた。うーーん。仕事の話はいけないね~」
「……そろそろ出よう。あいさつしておけ」
そうしよう。席を立って、向こうのテーブルへ手を振った。藤沢が顔を上げて軽く振り返してきた。ローザーさんが真剣な顔をして話をしながら、さっと俺達に会釈した。
お菓子を受け取って店を出た後、アイスクリームの開発と、今月のミニライブのことを話しながら空港へ向かった。
「ありがとうございます。頂きます。お兄さんはいらっしゃいますか?」
「今日は不在で。伝えます。……藤沢君から聞いたけど、ご家族を空港へ見送りに行くんでしょう?一緒に包んでもらうわ。長旅でしょうから。空港で食べると良いわ」
「ありがとう。何でも食べるんだ。えーーっと」
小さなメニューを見せてもらい、バニラとリンゴ入りの一口パイを選んだ。それを頼んだ後、ローザーさんが周りに会釈しながら、向こうのテーブルへ戻った。よかったなと、黒崎が言った。ヤキモチを妬いたのかと聞くと、お前の方だろうがと言い返されて、居たたまれない気持ちになった。完全に図星だ。
「なんだよ~、あんたの方こそさーー」
「警戒したからだ。言っただろう」
「……”僕とは似ていない”って言っていたのに?」
「聖河さんが本当に好みなのか?と聞き返した。鈍いぞ」
「そういうことか……。うんうん。鈍いよ。認める」
「それでいい。何かあれば逃げろ」
「んん……、無理に食べさせるなよ~」
サラダについている、スモークサーモンを口元に持ってこられた。もう黙っておけという意味だ。素直に口に入れて見つめると、黒崎が眉間に軽く皺を寄せた。そのお返しに、唇を尖らせてやった。周りから笑い声が聞こえているが、気にしないでおく。
「口元についているぞ。……拭いてやる」
「指先で取って舐めてよ。家の中みたいに」
「ここじゃやらない。普段からだ」
「一言多くなったね?うんうん、いいことだよ」
「お前は減らせ。いや、そのままでいろ」
「どっちだよ?ふん。よーし、残りを食べるよ。急がないとね」
「そっちを食う。半分でも腹に入れておけ」
小さなフライを食べてくれた。俺は一個食べた。こういうことをするのは行儀が悪いと言っていたのは、いつ頃までだろう?さすがに今でも、ムードの漂う夜のレストランではやらない。さり気なく温かい飲み物をオーダーされて、それが当たり前になっている。焼き菓子をテイクアウトすることも。
「……クッキーの他にも選んでおけ。明日の分だ」
「やったー。お義父さんの分も選ぶよ。来たことがないだろうし。和菓子オンリーになったからねえ。これがいい」
バター不使用のビスケットを見つけた。自分の分も頼んでおく。ふと気づくと、黒崎が焼き菓子のカウンターの前へ立っていた。どれがいいのか言っていないのに。そして、彼が戻ってきた時、選んだ商品を全部オーダーしたことを知った。
「びっくりしたよ。何も言っていないのに」
「選んでいるところを見た。バター不使用は人気らしい。しっとりとした食感だそうだ」
「へえ。ミルクが入っているのかな。お義父さんに合うね。柔らかい方がいいからさ。今年82歳だもん。歩く距離が長くなったねえ?」
「外に出る楽しみを覚えたからだろう。ドアすら自分で開けなかった」
「それは仕方のないことだよ。側近に囲まれていたから。その人達、ほとんど会社に残っていないよね?グループ企業か、コンサルティングへ行ったって聞いた。うーーん。仕事の話はいけないね~」
「……そろそろ出よう。あいさつしておけ」
そうしよう。席を立って、向こうのテーブルへ手を振った。藤沢が顔を上げて軽く振り返してきた。ローザーさんが真剣な顔をして話をしながら、さっと俺達に会釈した。
お菓子を受け取って店を出た後、アイスクリームの開発と、今月のミニライブのことを話しながら空港へ向かった。
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