389 / 514
25-1 ミニライブ
しおりを挟む
8月21日、水曜日。14時。
IKUスタジオセンターのA6ホールにて、ステージのリハーサルをやっているところだ。明後日のイベントの分だ。久弥と原田さんの演奏を聴きながら、ステージサイドに待機した。悠人がギターの調整をやっている。
今回のイベントは、IKU所属のミュージシャンが31人出演する。バンドは6組だ。当日限定のバンドが数組予定されているから、大きな祭りになる。俺達TDDは3曲披露する。
限定ステージを楽しみにしている人が多い。やっと使い方を覚えたSNSを見て分かった。チケットは完売だ。コンビニ予約分も一般発売もソールドアウトだ。
久弥のスケジュールが詰まっている。ほとんどが裏方の仕事だ。引退前に多くのファンと会いたいと希望し、 今回のイベントに急遽参加が決まった。明後日のライブで、やっと休めると喜んでいた。終わった後ではない。ライブをやることが休みだと笑っていた。
タッタターーー、ダダダ!
スピーカーから激しいリズムが響いてきた。原田さんの生ドラム音とギターが合わさった後、一瞬の停止の後で再開し、同時に鳴り終えてラストを迎えた。この息の合い方には、毎回のように感動している。
オッケー!
佐伯さんのーー、原田さんのセットを!
ステージ監督の声がスピーカーから聞こえた。待機していた機材スタッフが動き、久弥の演奏ギターを受け取った。さらにドラムの位置調整が入り、一気に慌ただしくなった。そして、また静かな時間が始まる。ここは演奏を楽しむ空間でなく、誰もが固唾をのんで、自分の持ち場を守っている。
ギターの調整を終えたようだ。悠人がぽかんと口を開けた後、今度は肩を落として沈んだ。ギタリスト祭典のステージで輝いていたのに。久弥の演奏を聴いては、こういう反応をしている。
「だめだだめだーー。あのギターソロの後に弾きたくないよ。下手くそだもん……」
「ゆうとー。祭典のステージを思い出せよ。先輩たちに及ばないのは普通だって、高宮さんも言ってくれたのに。悠人のギターは気持ちが伝わってくるんだ。演奏技術も評価されているのに。……久弥!悠人が沈んでいるんだ~」
「おおーー、おつかれーー。夏樹の言うとおりだ。楽曲の感情がこもっている。超絶演奏テクに走らないタイプで行け!」
「だめだだめだーー。褒められていないよー」
「……夏樹。おやつを持っていないか?糖分が足りないんだろう」
「控え室にあるよ。長谷部さーん。……持って来てくれたんだ」
長谷部さんが奥からやって来て、トートバッグを持ち上げた。それを休憩テーブルにセットして用意してくれた。周りのスタッフの分も。
リハーサルをやっている間、こまめに食べるようにしている。聖河さんのアドバイスだ。お腹に入るものなら何でもいいが、できれば、おむすびと鶏肉のグリルがいい。今日は2つ持ってきた。おやつの手作りマフィンも。
さっそくマフィンを取り出すと、悠人の顔色がよくなった。かぼちゃ入りの分だからだ。喜ぶと思って作ってきた。そばの休憩テーブルへ移動した後、悠人がモグモグと食べ始めた。
「かぼちゃを多めに入れて作ったよ」
「なつきー。元気が出たよ。ありがとう。こっちはプレーンタイプ?」
「そうだよ。食べていいよ。俺はおむすびを食べるから。……それ、一個残してね。ああー、全部食べたの?その食べかけでいいよ。うんうん。こっちも食べろよ。梅干しおむすび。もうリハーサルが終わるから」
「こらこら。君も食べないとー」
「もう入らないもん。ちょうどいい。……大和、おつかれーー」
「ただいまー!いい方向に話が進んだよ」
「よかったーー」
飯野さんとの話が終わり、大和が戻ってきた。以前所属していたスカイレールレコードとの所属契約問題があり、何度も話し合いを持っていた。向こうが違反だと主張した分は道理が通らず、IKUへ難癖をつけてきた。それも片付けに入り、今回のイベントに心置きなく出られることになった。
IKUスタジオセンターのA6ホールにて、ステージのリハーサルをやっているところだ。明後日のイベントの分だ。久弥と原田さんの演奏を聴きながら、ステージサイドに待機した。悠人がギターの調整をやっている。
今回のイベントは、IKU所属のミュージシャンが31人出演する。バンドは6組だ。当日限定のバンドが数組予定されているから、大きな祭りになる。俺達TDDは3曲披露する。
限定ステージを楽しみにしている人が多い。やっと使い方を覚えたSNSを見て分かった。チケットは完売だ。コンビニ予約分も一般発売もソールドアウトだ。
久弥のスケジュールが詰まっている。ほとんどが裏方の仕事だ。引退前に多くのファンと会いたいと希望し、 今回のイベントに急遽参加が決まった。明後日のライブで、やっと休めると喜んでいた。終わった後ではない。ライブをやることが休みだと笑っていた。
タッタターーー、ダダダ!
スピーカーから激しいリズムが響いてきた。原田さんの生ドラム音とギターが合わさった後、一瞬の停止の後で再開し、同時に鳴り終えてラストを迎えた。この息の合い方には、毎回のように感動している。
オッケー!
佐伯さんのーー、原田さんのセットを!
ステージ監督の声がスピーカーから聞こえた。待機していた機材スタッフが動き、久弥の演奏ギターを受け取った。さらにドラムの位置調整が入り、一気に慌ただしくなった。そして、また静かな時間が始まる。ここは演奏を楽しむ空間でなく、誰もが固唾をのんで、自分の持ち場を守っている。
ギターの調整を終えたようだ。悠人がぽかんと口を開けた後、今度は肩を落として沈んだ。ギタリスト祭典のステージで輝いていたのに。久弥の演奏を聴いては、こういう反応をしている。
「だめだだめだーー。あのギターソロの後に弾きたくないよ。下手くそだもん……」
「ゆうとー。祭典のステージを思い出せよ。先輩たちに及ばないのは普通だって、高宮さんも言ってくれたのに。悠人のギターは気持ちが伝わってくるんだ。演奏技術も評価されているのに。……久弥!悠人が沈んでいるんだ~」
「おおーー、おつかれーー。夏樹の言うとおりだ。楽曲の感情がこもっている。超絶演奏テクに走らないタイプで行け!」
「だめだだめだーー。褒められていないよー」
「……夏樹。おやつを持っていないか?糖分が足りないんだろう」
「控え室にあるよ。長谷部さーん。……持って来てくれたんだ」
長谷部さんが奥からやって来て、トートバッグを持ち上げた。それを休憩テーブルにセットして用意してくれた。周りのスタッフの分も。
リハーサルをやっている間、こまめに食べるようにしている。聖河さんのアドバイスだ。お腹に入るものなら何でもいいが、できれば、おむすびと鶏肉のグリルがいい。今日は2つ持ってきた。おやつの手作りマフィンも。
さっそくマフィンを取り出すと、悠人の顔色がよくなった。かぼちゃ入りの分だからだ。喜ぶと思って作ってきた。そばの休憩テーブルへ移動した後、悠人がモグモグと食べ始めた。
「かぼちゃを多めに入れて作ったよ」
「なつきー。元気が出たよ。ありがとう。こっちはプレーンタイプ?」
「そうだよ。食べていいよ。俺はおむすびを食べるから。……それ、一個残してね。ああー、全部食べたの?その食べかけでいいよ。うんうん。こっちも食べろよ。梅干しおむすび。もうリハーサルが終わるから」
「こらこら。君も食べないとー」
「もう入らないもん。ちょうどいい。……大和、おつかれーー」
「ただいまー!いい方向に話が進んだよ」
「よかったーー」
飯野さんとの話が終わり、大和が戻ってきた。以前所属していたスカイレールレコードとの所属契約問題があり、何度も話し合いを持っていた。向こうが違反だと主張した分は道理が通らず、IKUへ難癖をつけてきた。それも片付けに入り、今回のイベントに心置きなく出られることになった。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのアルフレッドが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
アルフレッドの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる