上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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 これからバンド全体として一曲演奏して、今日のリハーサルが終了だ。大和はサポートメンバーのベースとして参加する。新メンバーだと発表するのは、30日の新曲発売日に合わせた。その時は、聡太郎も同時に紹介ができる。29日に黒崎製菓を退職する。

 ステージの機材調整が続いているから、もう少し休憩時間がある。4人で椅子に座り、伊吹の話題が出された。先週、植本さんと久弥がやっているラジオ番組に出演した。イベントにもゲストで出る。

「桜木君のことより先に、夏樹の兄貴じゃないかと聞かれるだろう」
「忘れていたよ。兄弟だってことは分かっているよ?まずは俺とのつながりを連想するのか~」
「ぎゃはは。中山伊吹だとは紹介していない。弟に苦労する兄貴・クロウだ。ありがたい」
「それを言われると文句が出せないよ。ババン!って出てくる?イベントの時」
「いや。関係者席にいる。インタビューを振られて答えて、佐伯久弥とコラボする社長ですとアピールするわけだ」
「意外だなーー。伊吹さんなら、ズッコケそうなことをやりそうなのに。わわわ、ごめんね。インタビューの時に暑苦しくなりそうだね!……気温が30度超えるのに。げええええっ」

 そう気を遣うなと、悠人の背中をさすった。普段から発言に気をつけているが、仕事現場では慎重すぎるぐらいになる。それが柔らかくなり、現場でもストレートに口にするように変わった。おかげで、スタッフ達との垣根が低くなったようだ。

 全く無かったようで、誰よりも高いものが存在していた。それを実感したのは、あの祭典ステージが終わった直後だ。控え室へ戻ってきた植本さんが悠人の肩を抱き、周りの人に大きく頷いた。この子を褒めてやってくれ!と。

 次々と泣きだす人が出てきて、自然と悠人の肩に触れて励ますという光景が広がっていた。カッコよく控え室へ運ばれたときには、花道を通るかのような拍手が起きていた。

 バキ!

 悠人が食べていたピスタッチオの殻が、ザラザラとテーブルの上に散らばった。固いものを開けたのか。指先の力まで強くなったようだ。

「悠人君が殻を破ったね!ほらーー」
「ほらーって?……げええええっ」
「ああーー、飛んで行ったね。取ってあげるから食べていろよ~」
「夏樹、スルーしたな。天然か?」
「なんで?殻が飛んだよね……」
「やまとー、なつきー。狙っただろ?」

 その話は後にする。テーブルの上を片付けて、新しいナッツ類の個装を開けた。それを紙皿に並べ、ドリンクバーから冷たい烏龍茶を持って来た。これでちょうどいい。すると、大和が俺の方を見ていた。

「さっきからどうしたの?口に何かついているかな?自分の唇しかないよ」
「げええええっ。面白くないよー」
「最近、ノアと電話で話しているからね。いい影響を受けたと思う。恋愛相談がメインだけど」
「ノア君か。久しぶりに会いたいなあ。いつ戻って来る?」
「今朝の7時に羽田に着いたよ。明後日のイベントに来てくれるんだ」
「ぜひ話したい。あの兄貴にも頼んでくれない?」
「いいよーー。帰った後で連絡するよ」

 兄貴とは二葉のことだ。二葉も同じ便で帰ってきた。向こうでは、バーテルス家の人に温かく迎えられて、スイーツショップの店頭を手伝い、ノアの幼なじみ達とも親しくなれた。足を向けて寝られない。

 それだけの理由ではないが、俺はノアの恋愛話を聞いている。俺が適任ではない分、話しやすいそうだ。なんだか引っかかる表現ではある。神仙教授から相談に乗ると声を掛けられたが、丁重に断ったそうだ。
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