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黒崎の横顔を眺めながら、髪の毛を拭いた。朝起きた時にシャワーを浴びるから、ドライヤーは省く。黒崎が何も声をかけてこない。俺の方も喋らずにしておき、お風呂上りの習慣を始めた。
初めの頃は女の子みたいだと思って抵抗があったが、必要に駆られて手に取るようになった。お風呂上がりに、化粧水と乳液を付けることだ。カメラが入る時は濃いメイクを施しているから、肌が乾燥して荒れやすい。テレビなどの映像で見ると濃くなくて、顔色が良く映っているぐらいになる。
カタカタ……。
すぐに取り出せる場所に置くことも抵抗があったが、要は慣れだと分かった。どういうこだわりだったのか?今になって不思議だ。
敏感肌用の化粧水を顔に浸透させながら、鏡の中の自分を眺めた。女の子のように見えていた顔が嫌いだった。今は男にしか見えないと思う。しかし、大して顔立ちが変わっていない。毎日見ているからか?写真や取材記事を後で見よう。
「夏樹。独り言を続けているぞ?」
「口に出ていたんだね。うるさかった?」
「いいや。何も喋らない方に違和感がある。声を聞かせてもらいたい」
「うるさいって言うくせに?」
「ケースバイケースだ。本気で言ったことは……」
「んんーー?」
黒崎が口ごもり、そのまま黙って見つめ合った。化粧水をなじませている自分と、わずかに動揺している黒崎が鏡に映り込み、傍から見た俺達の姿が見られた。全く似ていない。雰囲気すらもだ。似ていると言われたことには驚いたが、決して嫌ではない。でも、今はホッとしている。自分が自分で良かったと、はっきりしない安心を手に入れた。
「黒崎さーん。ぺらぺら。ぺらぺら」
「初めて本気で言いたい」
「ふうーーん?話題を変えるよ。俺達って似ていないよね?」
「何かあったのか?……そうか。俺も似ていないと思う。気負った時に似ているんじゃないのか?ステージでは感じたことがない」
「ナツキだからね。黒崎製菓で地位が欲しいだなんて言ったのに……」
やっぱりそういう事か。無意識のうちに、黒崎のイメージをお手本にしたならおかしくない。自然な発想だ。その通りだと、黒崎が頷いてくれた。
「まだどっしり構える年齢じゃない。迷子大歓迎だ」
「うん……。あんたにも乳液をつけてあげるよ。ぱちぱちっと。……あれ?嫌がらないの?」
「お前の顔が面白いからだ。……伊吹君とも似ていないぞ。知っていたか?」
「マジで?同じ顔だよ?目元とか」
「植本さんのインスタに出ている分を見せてやる。この間、スタジオへ訪ねて来たんだろう?」
「うん。早く見たい。……もっとゆっくりしたい?」
「リビングへ行こう。12月のドイツ旅行の件も話したい。見送るぞ」
「そうだね。ごめんね。俺のことで……」
クリスマスマーケットへ遊びに行く予定だった。年末に向けて会社が忙しい時期に入るが、4日間の休暇ならOKだと言っていた。俺が6月に倒れるまでは。今年は見送る流れになる。コンサートを控えているし、自分の方も不安があることを言い出せないでいた。何となくだ。
「ドイツへ行かなくても、楽しめる方法を考えている。それを話したい。百面相をしないのか?……そうか、つまらないのか」
「そんなことはないよ。ありが……。こうするね~」
嬉しいよ。ありがとう。その言葉を出す前に首を振られた。それならこうしたい。手に残っている乳液を、黒崎の頬に擦りこんでやった。さすがに身じろいで眉を寄せた。それが面白くて続けていると、とうとう手を掴んで阻まれて、バタバタ遊びながらリビングへ行った。
初めの頃は女の子みたいだと思って抵抗があったが、必要に駆られて手に取るようになった。お風呂上がりに、化粧水と乳液を付けることだ。カメラが入る時は濃いメイクを施しているから、肌が乾燥して荒れやすい。テレビなどの映像で見ると濃くなくて、顔色が良く映っているぐらいになる。
カタカタ……。
すぐに取り出せる場所に置くことも抵抗があったが、要は慣れだと分かった。どういうこだわりだったのか?今になって不思議だ。
敏感肌用の化粧水を顔に浸透させながら、鏡の中の自分を眺めた。女の子のように見えていた顔が嫌いだった。今は男にしか見えないと思う。しかし、大して顔立ちが変わっていない。毎日見ているからか?写真や取材記事を後で見よう。
「夏樹。独り言を続けているぞ?」
「口に出ていたんだね。うるさかった?」
「いいや。何も喋らない方に違和感がある。声を聞かせてもらいたい」
「うるさいって言うくせに?」
「ケースバイケースだ。本気で言ったことは……」
「んんーー?」
黒崎が口ごもり、そのまま黙って見つめ合った。化粧水をなじませている自分と、わずかに動揺している黒崎が鏡に映り込み、傍から見た俺達の姿が見られた。全く似ていない。雰囲気すらもだ。似ていると言われたことには驚いたが、決して嫌ではない。でも、今はホッとしている。自分が自分で良かったと、はっきりしない安心を手に入れた。
「黒崎さーん。ぺらぺら。ぺらぺら」
「初めて本気で言いたい」
「ふうーーん?話題を変えるよ。俺達って似ていないよね?」
「何かあったのか?……そうか。俺も似ていないと思う。気負った時に似ているんじゃないのか?ステージでは感じたことがない」
「ナツキだからね。黒崎製菓で地位が欲しいだなんて言ったのに……」
やっぱりそういう事か。無意識のうちに、黒崎のイメージをお手本にしたならおかしくない。自然な発想だ。その通りだと、黒崎が頷いてくれた。
「まだどっしり構える年齢じゃない。迷子大歓迎だ」
「うん……。あんたにも乳液をつけてあげるよ。ぱちぱちっと。……あれ?嫌がらないの?」
「お前の顔が面白いからだ。……伊吹君とも似ていないぞ。知っていたか?」
「マジで?同じ顔だよ?目元とか」
「植本さんのインスタに出ている分を見せてやる。この間、スタジオへ訪ねて来たんだろう?」
「うん。早く見たい。……もっとゆっくりしたい?」
「リビングへ行こう。12月のドイツ旅行の件も話したい。見送るぞ」
「そうだね。ごめんね。俺のことで……」
クリスマスマーケットへ遊びに行く予定だった。年末に向けて会社が忙しい時期に入るが、4日間の休暇ならOKだと言っていた。俺が6月に倒れるまでは。今年は見送る流れになる。コンサートを控えているし、自分の方も不安があることを言い出せないでいた。何となくだ。
「ドイツへ行かなくても、楽しめる方法を考えている。それを話したい。百面相をしないのか?……そうか、つまらないのか」
「そんなことはないよ。ありが……。こうするね~」
嬉しいよ。ありがとう。その言葉を出す前に首を振られた。それならこうしたい。手に残っている乳液を、黒崎の頬に擦りこんでやった。さすがに身じろいで眉を寄せた。それが面白くて続けていると、とうとう手を掴んで阻まれて、バタバタ遊びながらリビングへ行った。
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