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黒崎が大人しく電子新聞を読んでいる間に、朝ご飯をテーブルに並べた。こうして動いている方が気持ちが落ち着く。わかめと豆腐の味噌汁を注いだところで、黒崎に声をかけた。
「黒崎さーん。アンー。ご飯だよーー」
「アン。……具合が悪いのか?」
「ええ?熱っぽい?」
「そうでもない。膝から降りたくないのか?」
「調子が悪いかもしれないね。9時に病院に連れて行くよ」
昨日も食欲があったし、今の動き方も変わった様子がない。黒崎の膝の上から降りようとしないだけだ。そっと顔を上げさせて両目を見ても、元気そうに見える。しかし、尻尾が垂れたままだ。心配になる。その時、黒崎が小さく吹き出した。何か事情を突き止めたのか?
「何か分かった?」
「ああ。見当がついた。そのまま目を閉じてやってくれ。見つけて欲しくないらしい」
「ほっとしたよ~。どんなことをやったのかな?」
言われた通りに目を閉じた。悪戯の発覚を恐れたのか。わざとやっていないことは分かっている。元気が良すぎて、クッションを散らかして、鉢植えや棚で遊ぶ程度だ。丸みのある木製の物を使っている分、怪我の心配がない。
黒崎が立ち上がった気配がした。テラス窓の方を過ぎて、俺のパソコンや趣味のグッズが置いてある棚の方へ行った。
(うーん。珍しいなあ……。アンが好きなものがあったっけ?)
薄目を開けてアンの方を向くと、しょげた様子で座っていた。よっぽどのことをやったのか?物音がしなかったのに。
そこへ、黒崎から肩を叩かれて目を開いた。段ボール箱のそばに、レース編みのクロスが落ちていた。まだ編みかけの分だ。アンからすれば高い位置に置いてあった。そして、お互いに笑い声が漏れた。ああしまった。アンがそういう顔をした気がしたからだ。
「段ボールを踏み台にして取ったわけ?器用だね~」
「しばらく寂しい思いをさせたか……」
「うん。アンー。ごめんね。明日からゆっくりするよ。……黒崎さん。あのお店へ行こうよ」
「明後日にしないか?……決まりだ」
この間行った、藤沢とローザーさん達に会ったレストランのことだ。テラスの向かいにもテーブル席があり、ペット連れがOKだ。あの後で黒崎が気づいた。
お義父さんと一緒にいても、たまには俺達とも出かけたい。そう言われている気がした。今日でスケジュールがひと段落つく。黒崎が身体を撫でてやり、やっと元気を出した。
「機嫌を直したのかな?……え?やめてよーー。いたたた。はずれるよー」
今度はじゃれついてきた。抱き着いてきたというよりも、エクステに興味を持っている。もっと見せろと言うかのように、右肩へ乗り上げてきた。すぐに黒崎に助けを求めた。
「黒崎さーん。アンを抱っこしてよ……。いててて。簡単には外れないけどさ……」
「お前と遊びたがっている。ダイニングの椅子に座らせてやれ」
「うん。一緒に行こうね。はいはい。いったん離れてね。……こらこら、欲しいものがあるの?」
髪を束ねた大きなシュシュを欲しがっている。ダメだと言っているのに引っ張って遊び始めて、とうとう床に押し倒された。このまま少し遊ぼうとしたら、アンがシュシュを咥えて、キッチンへ走って行った。俺としては寂しい。
「明日は動物病院に行く日だったか?」
「そうだったよ~。フィラリアの予防薬を受け取りに。……この袋にも書いてあるんだ。アン、頑張ろうね~。……苛めていないよ」
アンが黒崎のそばに戻ってきた。フィラリアの薬袋に気づいたのか。明日は土曜日だから、黒崎にも付き添ってもらおう。なかなか病院に入れない様子を見たい。
忍び笑いをしたのに、黒崎から何もされなかった。それどころか、微笑み返されて恥ずかしくなり、そそくさと朝ご飯を食べ始めた。ああしまったという事態にならないように。
「黒崎さーん。アンー。ご飯だよーー」
「アン。……具合が悪いのか?」
「ええ?熱っぽい?」
「そうでもない。膝から降りたくないのか?」
「調子が悪いかもしれないね。9時に病院に連れて行くよ」
昨日も食欲があったし、今の動き方も変わった様子がない。黒崎の膝の上から降りようとしないだけだ。そっと顔を上げさせて両目を見ても、元気そうに見える。しかし、尻尾が垂れたままだ。心配になる。その時、黒崎が小さく吹き出した。何か事情を突き止めたのか?
「何か分かった?」
「ああ。見当がついた。そのまま目を閉じてやってくれ。見つけて欲しくないらしい」
「ほっとしたよ~。どんなことをやったのかな?」
言われた通りに目を閉じた。悪戯の発覚を恐れたのか。わざとやっていないことは分かっている。元気が良すぎて、クッションを散らかして、鉢植えや棚で遊ぶ程度だ。丸みのある木製の物を使っている分、怪我の心配がない。
黒崎が立ち上がった気配がした。テラス窓の方を過ぎて、俺のパソコンや趣味のグッズが置いてある棚の方へ行った。
(うーん。珍しいなあ……。アンが好きなものがあったっけ?)
薄目を開けてアンの方を向くと、しょげた様子で座っていた。よっぽどのことをやったのか?物音がしなかったのに。
そこへ、黒崎から肩を叩かれて目を開いた。段ボール箱のそばに、レース編みのクロスが落ちていた。まだ編みかけの分だ。アンからすれば高い位置に置いてあった。そして、お互いに笑い声が漏れた。ああしまった。アンがそういう顔をした気がしたからだ。
「段ボールを踏み台にして取ったわけ?器用だね~」
「しばらく寂しい思いをさせたか……」
「うん。アンー。ごめんね。明日からゆっくりするよ。……黒崎さん。あのお店へ行こうよ」
「明後日にしないか?……決まりだ」
この間行った、藤沢とローザーさん達に会ったレストランのことだ。テラスの向かいにもテーブル席があり、ペット連れがOKだ。あの後で黒崎が気づいた。
お義父さんと一緒にいても、たまには俺達とも出かけたい。そう言われている気がした。今日でスケジュールがひと段落つく。黒崎が身体を撫でてやり、やっと元気を出した。
「機嫌を直したのかな?……え?やめてよーー。いたたた。はずれるよー」
今度はじゃれついてきた。抱き着いてきたというよりも、エクステに興味を持っている。もっと見せろと言うかのように、右肩へ乗り上げてきた。すぐに黒崎に助けを求めた。
「黒崎さーん。アンを抱っこしてよ……。いててて。簡単には外れないけどさ……」
「お前と遊びたがっている。ダイニングの椅子に座らせてやれ」
「うん。一緒に行こうね。はいはい。いったん離れてね。……こらこら、欲しいものがあるの?」
髪を束ねた大きなシュシュを欲しがっている。ダメだと言っているのに引っ張って遊び始めて、とうとう床に押し倒された。このまま少し遊ぼうとしたら、アンがシュシュを咥えて、キッチンへ走って行った。俺としては寂しい。
「明日は動物病院に行く日だったか?」
「そうだったよ~。フィラリアの予防薬を受け取りに。……この袋にも書いてあるんだ。アン、頑張ろうね~。……苛めていないよ」
アンが黒崎のそばに戻ってきた。フィラリアの薬袋に気づいたのか。明日は土曜日だから、黒崎にも付き添ってもらおう。なかなか病院に入れない様子を見たい。
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