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16時。
全体の直前リハーサルが終わった。自分達の出番の後、ベテルギウスの分を見学した。俺達は原田さんの姿を目に焼き付けて、なんとなく寂しさを紛らわせた。先輩バンドメンバーとして会えるのに。
ざわざわと慌ただしいステージ周辺では、今夜はスムーズに進みそうだという声が飛び交った。一同が胸を撫でおろしている。30人越えの出演者のタイムスケジュール、各個人の動き方、パターン。そういうものが上手く嚙み合わせる必要がある。プロデューサー、ステージ監督、アシスタント。みんなが大忙しだ。
IKU所属ミュージシャン限定のイベントだから、もめ事自体は起こらないそうだ。実際に起きた光景を想像したが、まだぼんやりとしか思い浮かばない。大和はこの話を聞いて苦笑した。
「もう平気だよ。淡々と受け止めているから。どっかの収録でモメたとか、知り合い同士で喧嘩してて気まずいとか。派閥的なものがあってー、遠慮するとか。まだ俺達は分からない」
「やまとー。無理するなよ。控え室で休もうよ。なつきー、ラーメンの出前を取ろうか?」
「俺はお腹いっぱい。……そうだ。かぼちゃサラダの差し入れが届いているよ。羽音さんから」
「やったー。マンションの近くの店だと思う。お勧めしたいって教えてくれたんだ」
今日は羽音さんも出演者の一人だ。同じステージに立てるのが嬉しい。もう3か月近く会っていなかったから、俺も悠人も楽しみにしていた。大和と聡太郎のことも紹介したい。
「そうだ。大和もカボチャが好きだよね?ロールパンサンドにも使っていたよ。食べに行こうよ」
「うん。さっそく。悠人君はハロウィン生まれなんだなー?だから、カボチャが好きなの?」
「……んん?」
「……うひぇ?」
悠人と声が重なった。さらに顔を見合わせて、今まで気づかなかったねと呟いた。大和がゲラゲラ笑い出して、ごめんねと謝りだした。からかったのか?悠人が眉をひそめてツッコミを入れて、あちこちから笑いが起こった。
「げええええっ。その冗談は面白くないよ。おばあちゃんが作ってくれる煮物が美味しくて、好物になったんだ。……ひいいいいっ、謝るなよ!」
「ごめん。せっかくの思い出を……」
大和がショゲた。明るく笑い飛ばしたり、余計なことを言って沈み込んだりと忙しい。感情表現が豊かで繊細なタイプは、黒崎家の家族にもいる。一貴さんのことだ。大和の背中を押して控え室へ促した。強引に。
「はいはい。大和。分かっているよ。笑わそうとしたんだよね?ここにいる人も笑ったよ。……ああー、しまった。2人分のかぼちゃが無いかも?聡太郎君が待機しているから、もう食べられたよ。うんうん。うへへ、早く行けよ~」
作戦成功だ。大和と悠人が急いで歩き出した。黒崎から教わったアドバイスが役立った。ざわついたときには、一人だけフラットな感情の人がいると収まりやすい。さっと別の場所に移動させて解決する。
新しいバンドが決まった次の日から、黒崎からアドバイスを受けることが増えた。リーダーの役目をするのは反対しない。いっそう身体を大事にするはずだと言っていた。それは良いプレッシャーだと教わった。
先を急ぐ2人を眺めて歩きながら、黒崎のことを思い浮かべた。俺は成長して立派になったそうだ。黒崎の隣に立って胸を張れる日が近いと思う。そう思い込もう。
悠人のように鼻息を荒くしていると、控え室のドアが開いて、聡太郎が手を振ってきた。もうすぐで黒崎が到着することと、すでに伊吹が来て待ちかねていると声をかけてきた。家族の仲裁が必要になると心づもりをして、控え室に入った。
全体の直前リハーサルが終わった。自分達の出番の後、ベテルギウスの分を見学した。俺達は原田さんの姿を目に焼き付けて、なんとなく寂しさを紛らわせた。先輩バンドメンバーとして会えるのに。
ざわざわと慌ただしいステージ周辺では、今夜はスムーズに進みそうだという声が飛び交った。一同が胸を撫でおろしている。30人越えの出演者のタイムスケジュール、各個人の動き方、パターン。そういうものが上手く嚙み合わせる必要がある。プロデューサー、ステージ監督、アシスタント。みんなが大忙しだ。
IKU所属ミュージシャン限定のイベントだから、もめ事自体は起こらないそうだ。実際に起きた光景を想像したが、まだぼんやりとしか思い浮かばない。大和はこの話を聞いて苦笑した。
「もう平気だよ。淡々と受け止めているから。どっかの収録でモメたとか、知り合い同士で喧嘩してて気まずいとか。派閥的なものがあってー、遠慮するとか。まだ俺達は分からない」
「やまとー。無理するなよ。控え室で休もうよ。なつきー、ラーメンの出前を取ろうか?」
「俺はお腹いっぱい。……そうだ。かぼちゃサラダの差し入れが届いているよ。羽音さんから」
「やったー。マンションの近くの店だと思う。お勧めしたいって教えてくれたんだ」
今日は羽音さんも出演者の一人だ。同じステージに立てるのが嬉しい。もう3か月近く会っていなかったから、俺も悠人も楽しみにしていた。大和と聡太郎のことも紹介したい。
「そうだ。大和もカボチャが好きだよね?ロールパンサンドにも使っていたよ。食べに行こうよ」
「うん。さっそく。悠人君はハロウィン生まれなんだなー?だから、カボチャが好きなの?」
「……んん?」
「……うひぇ?」
悠人と声が重なった。さらに顔を見合わせて、今まで気づかなかったねと呟いた。大和がゲラゲラ笑い出して、ごめんねと謝りだした。からかったのか?悠人が眉をひそめてツッコミを入れて、あちこちから笑いが起こった。
「げええええっ。その冗談は面白くないよ。おばあちゃんが作ってくれる煮物が美味しくて、好物になったんだ。……ひいいいいっ、謝るなよ!」
「ごめん。せっかくの思い出を……」
大和がショゲた。明るく笑い飛ばしたり、余計なことを言って沈み込んだりと忙しい。感情表現が豊かで繊細なタイプは、黒崎家の家族にもいる。一貴さんのことだ。大和の背中を押して控え室へ促した。強引に。
「はいはい。大和。分かっているよ。笑わそうとしたんだよね?ここにいる人も笑ったよ。……ああー、しまった。2人分のかぼちゃが無いかも?聡太郎君が待機しているから、もう食べられたよ。うんうん。うへへ、早く行けよ~」
作戦成功だ。大和と悠人が急いで歩き出した。黒崎から教わったアドバイスが役立った。ざわついたときには、一人だけフラットな感情の人がいると収まりやすい。さっと別の場所に移動させて解決する。
新しいバンドが決まった次の日から、黒崎からアドバイスを受けることが増えた。リーダーの役目をするのは反対しない。いっそう身体を大事にするはずだと言っていた。それは良いプレッシャーだと教わった。
先を急ぐ2人を眺めて歩きながら、黒崎のことを思い浮かべた。俺は成長して立派になったそうだ。黒崎の隣に立って胸を張れる日が近いと思う。そう思い込もう。
悠人のように鼻息を荒くしていると、控え室のドアが開いて、聡太郎が手を振ってきた。もうすぐで黒崎が到着することと、すでに伊吹が来て待ちかねていると声をかけてきた。家族の仲裁が必要になると心づもりをして、控え室に入った。
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