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……向こうの方でーーー。
……植本さんが控え室に戻られまーす。
控え室を出て、久弥と話していた自販機のフロアへ行った。たまに人が通り過ぎて行く光景を見ながら、黒崎と並んで座った。
ステージサイドのような賑やか状態だ。控え室は遮音になっているから、遠くに聞こえる感じがある。ここだけの話があるとか、ミーティングがされているからこそ、物音には気遣われている。
この出演者の控え室前では、ワゴンカーを使わずに荷物を運ぶ。マネージャーにかけた後で作業指示を出す。そういう流れができているそうだ。
自分達は新人だから気遣われていない。そもそもドアを開けっぱなしという状態だし、そういう気遣いを久弥が嫌っていることも理由だ。これからもそうする。
最初に教わる先輩のやり方を真似するのは、どの業界も同じだろうか?黒崎に聞いてみると、黒崎製菓では当てはまるそうだ。
「新入社員は2年後に異動させるからな。新しい先でやり方を身に着けている。新入社員達は、2年間は自由にさせている。いいだろう?」
「うん。でも、嫌なことがあるってことだよね?……ごめん。はっきり言ったよ」
「構わない。本調子が出てきたじゃないか。これからはどういう形を取るんだ?ドアを閉めておくのか?」
「ミーティングのときだけ閉めるよ。前を通る人が気を遣うもん。話しているよー、音を立てないようにしないとって。……先輩の控え室に行ったときに学んだよ」
「そうか。いろんなことを乗り越えてきた男の顔を見せてくれ」
「やっぱり聞こえていたじゃん~~」
「……こっちを見てくれ」
ほんの少し離れている程度だ。家の中にいる時のように頬に手を当てられた。俺も黒崎の顔を見つめた。目元のラインは上がっていないし、下がってもいない。
「黒崎さーん。笑ってよ。目じりがどうなるか見たいから」
「だったら面白い顔をしてくれ。何でもいい」
「何でもいいっていうのが困るんだよ。晩御飯のリクエストみたいじゃん。……これでどう?うーーーっ」
唇を尖らせて威嚇してやると、つまらないと言い返された。やっぱり晩御飯の状態だ。適当にテーブルに出してみると、どうも気に入らない様子のケースだ。
「これはどうー?あ……」
黒崎の足元を軽く蹴ってやると、頭の後ろに手を添えられて、強引に引き寄せられた。椅子から身を乗り出していたからヨロけてしまい、とっさに黒崎の肩に手を添えた。さらに近い距離で顔を見合わせた。
「……夏樹。その顔が好きだ。文句顔だ」
「ええ?もっといいやつを気に入ってよ。歌っている時とか、歩いている時とかさ~。んん……」
「……さっきは悪くなかった」
「なんだよ……。さっきのは独占欲ってやつ?」
「そうだ。俺もオープンにした。ここでしても構わないか?」
「なななにを?だめだよ。ここは人がいるから……。こらこら」
今度は脇の下に手を添えられた。いともたやすく引き上げられて、そばの壁の方に連れて行かれた。大きな観葉植物で通路から遮られている状況だ。
控え室フロアでは見ない配置だ。人が多いからこそ油断して危険な目に遭うケースがある。出演者やスタッフ問わずに。
こうして他のことに視線を巡らせたのは、頬に黒崎の息遣いを感じているからだ。外では素っ気ないくせに。急に困る。いろんな言い訳を考えた。
……植本さんが控え室に戻られまーす。
控え室を出て、久弥と話していた自販機のフロアへ行った。たまに人が通り過ぎて行く光景を見ながら、黒崎と並んで座った。
ステージサイドのような賑やか状態だ。控え室は遮音になっているから、遠くに聞こえる感じがある。ここだけの話があるとか、ミーティングがされているからこそ、物音には気遣われている。
この出演者の控え室前では、ワゴンカーを使わずに荷物を運ぶ。マネージャーにかけた後で作業指示を出す。そういう流れができているそうだ。
自分達は新人だから気遣われていない。そもそもドアを開けっぱなしという状態だし、そういう気遣いを久弥が嫌っていることも理由だ。これからもそうする。
最初に教わる先輩のやり方を真似するのは、どの業界も同じだろうか?黒崎に聞いてみると、黒崎製菓では当てはまるそうだ。
「新入社員は2年後に異動させるからな。新しい先でやり方を身に着けている。新入社員達は、2年間は自由にさせている。いいだろう?」
「うん。でも、嫌なことがあるってことだよね?……ごめん。はっきり言ったよ」
「構わない。本調子が出てきたじゃないか。これからはどういう形を取るんだ?ドアを閉めておくのか?」
「ミーティングのときだけ閉めるよ。前を通る人が気を遣うもん。話しているよー、音を立てないようにしないとって。……先輩の控え室に行ったときに学んだよ」
「そうか。いろんなことを乗り越えてきた男の顔を見せてくれ」
「やっぱり聞こえていたじゃん~~」
「……こっちを見てくれ」
ほんの少し離れている程度だ。家の中にいる時のように頬に手を当てられた。俺も黒崎の顔を見つめた。目元のラインは上がっていないし、下がってもいない。
「黒崎さーん。笑ってよ。目じりがどうなるか見たいから」
「だったら面白い顔をしてくれ。何でもいい」
「何でもいいっていうのが困るんだよ。晩御飯のリクエストみたいじゃん。……これでどう?うーーーっ」
唇を尖らせて威嚇してやると、つまらないと言い返された。やっぱり晩御飯の状態だ。適当にテーブルに出してみると、どうも気に入らない様子のケースだ。
「これはどうー?あ……」
黒崎の足元を軽く蹴ってやると、頭の後ろに手を添えられて、強引に引き寄せられた。椅子から身を乗り出していたからヨロけてしまい、とっさに黒崎の肩に手を添えた。さらに近い距離で顔を見合わせた。
「……夏樹。その顔が好きだ。文句顔だ」
「ええ?もっといいやつを気に入ってよ。歌っている時とか、歩いている時とかさ~。んん……」
「……さっきは悪くなかった」
「なんだよ……。さっきのは独占欲ってやつ?」
「そうだ。俺もオープンにした。ここでしても構わないか?」
「なななにを?だめだよ。ここは人がいるから……。こらこら」
今度は脇の下に手を添えられた。いともたやすく引き上げられて、そばの壁の方に連れて行かれた。大きな観葉植物で通路から遮られている状況だ。
控え室フロアでは見ない配置だ。人が多いからこそ油断して危険な目に遭うケースがある。出演者やスタッフ問わずに。
こうして他のことに視線を巡らせたのは、頬に黒崎の息遣いを感じているからだ。外では素っ気ないくせに。急に困る。いろんな言い訳を考えた。
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