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何となく触っただけなのに。目じりが下がった顔もいいよと言うと、照れくそうにされた。藍生ちゃんの話題が出ると、練習中でも肩の力が抜けるそうだ。反対だと思うと言いながら。今もニヤけている。
「怖い顔を見せたくないからじゃないの?兄貴がやっていることが、ツライことだって思われたくないって……」
「なつきー。良いことを言うなよ。君のことを叱れなくなっただろ。うひぇー?」
「いろんなことを乗り越えた男の顔を見せてよ~」
斜め向かいに座っている悠人のことを、テーブルに身を乗り出すようにして見つめた。久しぶりに、ゆっくり向き合っている。アマチュア時代のステージを思い出した。
俺が苦手な箇所を歌うときに悠人が来て、向かい合ってリズムを取って乗り越えた。まるで踊っているかのようだから、観客が笑いで沸き立った。せーのー!というアイコンタクトが合図だった。緊張で顔が引きつっていたのに、笑っていた。
今はどうだろうか?コンテストに出たら楽しめるだろう。会場内やバンドの動きを確認しながらだ。無我夢中では歌えない。
聡太郎と大和がメンバーになり、新しいドラム担当を探している。全く新しいバンドになっても楽しめる。こうやってふざけていられる。聡太郎と大和の表情も笑っている。しかし、悠人が眉をしかめている。
「なつきー。やめろよーー」
「どうしてだよ~?」
「こういう距離で見つめ合いたくないよー。妙な方の誤解を受けそうだもん。デキているとかさ」
「……ないない。俺の瞳は茶色だからさ。悠人の黒い瞳がきれいだなって思っているんだ。……なんだよー?気色悪いってことかよ?」
「……裕理さんが、カズさんに言われたことを思い出したんだ。俺は現場にいなかったけどさーー」
そういうことかと腑に落ちた。緑色の瞳が綺麗だと言って、一貴さんが早瀬さんにキスをしたことがある。早瀬さんは許してくれたし、悠人は仲良くしてくれている。2人は度量が大きい。
「悠人は度量があるね。どんと構えていろっていうのにも、真実味があるよ」
「トラウマは残っているんだよ?……ほおー。噂をすれば影だね。カズさんの声がしているよ。入ってくると思う。文句は兄貴に言ってねー」
「……遠慮するよ。よく聞こえたねえ?」
コンコン。
ごく普通のノック音がした後、一貴さんが入って来た。スーツを着ている。プラセルがTDDの衣装提供をしているが、今夜は仕事を持ち込まないと言っていたのに。めったに2人きりになれない、藤沢との時間を大事にしたいからだ。
飯野さんにインタビューしていた記者さんとの挨拶が始まり、黒崎からアイコンタクトを受けた。おいでと言っている。
「……こっちに来てくれ。……長谷部さん。自販機のところに行ってきます」
「先にカズ兄さんと話すよ。理久の様子も聞きたいし。……こらこら。もう知らないよ~」
「あの記事の件だろう。お前には席を外させておきたい。集中できなくなる」
「そっか……。ありがとう」
「……機嫌を取ってやる」
さり気なく肩を抱かれ時に見上げると、おまたせと小声で言われた。黒崎の肩越しに、聖河さんが大和の肩をもんでいた。一貴さんには記事の話題が向けられている。
黒崎から強引に頭を引き寄せられて、そう怒るな、誤解は解かないぞと笑われた。俺はいいよと呟きを返して、控え室を出た。
「怖い顔を見せたくないからじゃないの?兄貴がやっていることが、ツライことだって思われたくないって……」
「なつきー。良いことを言うなよ。君のことを叱れなくなっただろ。うひぇー?」
「いろんなことを乗り越えた男の顔を見せてよ~」
斜め向かいに座っている悠人のことを、テーブルに身を乗り出すようにして見つめた。久しぶりに、ゆっくり向き合っている。アマチュア時代のステージを思い出した。
俺が苦手な箇所を歌うときに悠人が来て、向かい合ってリズムを取って乗り越えた。まるで踊っているかのようだから、観客が笑いで沸き立った。せーのー!というアイコンタクトが合図だった。緊張で顔が引きつっていたのに、笑っていた。
今はどうだろうか?コンテストに出たら楽しめるだろう。会場内やバンドの動きを確認しながらだ。無我夢中では歌えない。
聡太郎と大和がメンバーになり、新しいドラム担当を探している。全く新しいバンドになっても楽しめる。こうやってふざけていられる。聡太郎と大和の表情も笑っている。しかし、悠人が眉をしかめている。
「なつきー。やめろよーー」
「どうしてだよ~?」
「こういう距離で見つめ合いたくないよー。妙な方の誤解を受けそうだもん。デキているとかさ」
「……ないない。俺の瞳は茶色だからさ。悠人の黒い瞳がきれいだなって思っているんだ。……なんだよー?気色悪いってことかよ?」
「……裕理さんが、カズさんに言われたことを思い出したんだ。俺は現場にいなかったけどさーー」
そういうことかと腑に落ちた。緑色の瞳が綺麗だと言って、一貴さんが早瀬さんにキスをしたことがある。早瀬さんは許してくれたし、悠人は仲良くしてくれている。2人は度量が大きい。
「悠人は度量があるね。どんと構えていろっていうのにも、真実味があるよ」
「トラウマは残っているんだよ?……ほおー。噂をすれば影だね。カズさんの声がしているよ。入ってくると思う。文句は兄貴に言ってねー」
「……遠慮するよ。よく聞こえたねえ?」
コンコン。
ごく普通のノック音がした後、一貴さんが入って来た。スーツを着ている。プラセルがTDDの衣装提供をしているが、今夜は仕事を持ち込まないと言っていたのに。めったに2人きりになれない、藤沢との時間を大事にしたいからだ。
飯野さんにインタビューしていた記者さんとの挨拶が始まり、黒崎からアイコンタクトを受けた。おいでと言っている。
「……こっちに来てくれ。……長谷部さん。自販機のところに行ってきます」
「先にカズ兄さんと話すよ。理久の様子も聞きたいし。……こらこら。もう知らないよ~」
「あの記事の件だろう。お前には席を外させておきたい。集中できなくなる」
「そっか……。ありがとう」
「……機嫌を取ってやる」
さり気なく肩を抱かれ時に見上げると、おまたせと小声で言われた。黒崎の肩越しに、聖河さんが大和の肩をもんでいた。一貴さんには記事の話題が向けられている。
黒崎から強引に頭を引き寄せられて、そう怒るな、誤解は解かないぞと笑われた。俺はいいよと呟きを返して、控え室を出た。
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