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ボーーン、ボーーン。
玄関のインターフォンが鳴った。ちょうど黒崎が降りて行ったから、その足でドアを開いて出迎えた。やっぱり枝川さんだった。仕事帰りだろう。スーツ姿で入ってきた姿を見た時、胸の鼓動が跳ねた。見るからに疲れた顔をしている。
「副社長。夜分に失礼いたします」
「気にするな。仕事を放って来られたか?」
常に仕事が忙しいのは想像できる。黒崎と早瀬さんが営業企画部を出た後、一つの部署の課長なのに、部内全体を仕切るようなポジションになっている。橋本部長のサポート役として。
「橋本部長のサポートに苦労しているか?」
「はい。そのままの状況です。早瀬部長代理ポジションを断った代わりに、さらに多忙になりました」
「引き受ければ自由に動きやすくなる。課長職のままじゃ、権限の幅が狭い」
「目指すのは早瀬専務ではありません。そうですよー。張り合っています。いいしょうが……」
「そう自暴自棄になるな」
二人の会話を聞いて安心した。緊張感がない。枝川さんがくつろぎ切っているのを感じることができた。俺達の方を見てふんぞり返るような姿勢になった。元気だぞと威張りたいらしい。
「枝川さん。こんばんはーー。リビングに入ってください。ここは寒いから」
「ありがとう。もうすぐ出てくるだろう?……副社長すみません、よろしいでしょうか?ここで待たせてください。本人が出てくるのが大事です。俺は座って待っています。合コンの席にも座ったので」
「……リビングに行け」
(そっか。喧嘩中ではあるのか……)
理久は大人として仲直りしたと言っていた。ギスギスしたままでいるのは気持ちが良くない。だからといって、はいそうですかと普段通りの関係に戻りたくない。融通の利かない自分にも納得がいかないのだと。たまには飲みに行ってくつろぎたいだろう。友達のふざけた振る舞いに笑いたい。それが合コンという仕組まれたものでも。それも分かっていると言った。
(ばーーかって言えればいいのにか……)
あっけらかんとした人間になりたい。天真爛漫な姿に戻りたい。そこから脱却したくてジャンプしたのに。何歩か進んで下がるのを繰り返しで疲れたと思う。
何を焦っているのだろう?自分も似ている面があるからこそ、疑問に感じている。期限付きの目標があるのか?形がないものなのに。それを枝川さんは理解している。相談してもらえなくても。
「枝川さーん。椅子を持って来たよ。せめてこっちに」
「ありがとう。急にごめんね」
「いえいえ。お茶も用意するよ。冷えているから……」
太郎が隠れていた階段の下から椅子を持って来て、ホールの真ん中に置いた。ウケ狙いではない。ここなら理久から見えるし、迷うことなくたどり着けるだろう。
悠人がリビングに様子を見に行ってくれた。その後ろ姿を眺めながら、枝川さんが黒崎の方を向いてふんぞり返った。だらっとしている。
「聞いてください……」
「どうした?」
「理久の言動に振り回されています。発明が好きで開発部に入った。サエキ酒造の件があるにしても。当初の目標が叶っています。ディアドロップの名前が無くなるから悩んでいるとは思っています。……久弥さんのソロコンサートに出演が決まりました。ギターの練習を積んでよかったと本人が言いました。……目標がクリアしていった。……それなのにですよ?……別の方面の仕事に就きたがっている。裁判官です。大学時代の友人に話を聞いておきました。理久の性格では難しいようです。それをストレートに本人に言いました。……これは本人の希望じゃないはずだ。すみませんでした……」
「たしかにそうだ。話してもらえないなら混乱する」
「……理久は本当は何になりたいんだろう」
黒崎が枝川さんの肩を叩いた。理久が望んだものが目の前にある。頑張ってきた成果がでた。しかし、それに満足できずに、全く方向性の違うものに腕を伸ばしている。好奇心旺盛な理久らしい。しかし、無理をしていると思う。俺も違和感を持っている。ディアドロップのこととは別だろうか。
玄関のインターフォンが鳴った。ちょうど黒崎が降りて行ったから、その足でドアを開いて出迎えた。やっぱり枝川さんだった。仕事帰りだろう。スーツ姿で入ってきた姿を見た時、胸の鼓動が跳ねた。見るからに疲れた顔をしている。
「副社長。夜分に失礼いたします」
「気にするな。仕事を放って来られたか?」
常に仕事が忙しいのは想像できる。黒崎と早瀬さんが営業企画部を出た後、一つの部署の課長なのに、部内全体を仕切るようなポジションになっている。橋本部長のサポート役として。
「橋本部長のサポートに苦労しているか?」
「はい。そのままの状況です。早瀬部長代理ポジションを断った代わりに、さらに多忙になりました」
「引き受ければ自由に動きやすくなる。課長職のままじゃ、権限の幅が狭い」
「目指すのは早瀬専務ではありません。そうですよー。張り合っています。いいしょうが……」
「そう自暴自棄になるな」
二人の会話を聞いて安心した。緊張感がない。枝川さんがくつろぎ切っているのを感じることができた。俺達の方を見てふんぞり返るような姿勢になった。元気だぞと威張りたいらしい。
「枝川さん。こんばんはーー。リビングに入ってください。ここは寒いから」
「ありがとう。もうすぐ出てくるだろう?……副社長すみません、よろしいでしょうか?ここで待たせてください。本人が出てくるのが大事です。俺は座って待っています。合コンの席にも座ったので」
「……リビングに行け」
(そっか。喧嘩中ではあるのか……)
理久は大人として仲直りしたと言っていた。ギスギスしたままでいるのは気持ちが良くない。だからといって、はいそうですかと普段通りの関係に戻りたくない。融通の利かない自分にも納得がいかないのだと。たまには飲みに行ってくつろぎたいだろう。友達のふざけた振る舞いに笑いたい。それが合コンという仕組まれたものでも。それも分かっていると言った。
(ばーーかって言えればいいのにか……)
あっけらかんとした人間になりたい。天真爛漫な姿に戻りたい。そこから脱却したくてジャンプしたのに。何歩か進んで下がるのを繰り返しで疲れたと思う。
何を焦っているのだろう?自分も似ている面があるからこそ、疑問に感じている。期限付きの目標があるのか?形がないものなのに。それを枝川さんは理解している。相談してもらえなくても。
「枝川さーん。椅子を持って来たよ。せめてこっちに」
「ありがとう。急にごめんね」
「いえいえ。お茶も用意するよ。冷えているから……」
太郎が隠れていた階段の下から椅子を持って来て、ホールの真ん中に置いた。ウケ狙いではない。ここなら理久から見えるし、迷うことなくたどり着けるだろう。
悠人がリビングに様子を見に行ってくれた。その後ろ姿を眺めながら、枝川さんが黒崎の方を向いてふんぞり返った。だらっとしている。
「聞いてください……」
「どうした?」
「理久の言動に振り回されています。発明が好きで開発部に入った。サエキ酒造の件があるにしても。当初の目標が叶っています。ディアドロップの名前が無くなるから悩んでいるとは思っています。……久弥さんのソロコンサートに出演が決まりました。ギターの練習を積んでよかったと本人が言いました。……目標がクリアしていった。……それなのにですよ?……別の方面の仕事に就きたがっている。裁判官です。大学時代の友人に話を聞いておきました。理久の性格では難しいようです。それをストレートに本人に言いました。……これは本人の希望じゃないはずだ。すみませんでした……」
「たしかにそうだ。話してもらえないなら混乱する」
「……理久は本当は何になりたいんだろう」
黒崎が枝川さんの肩を叩いた。理久が望んだものが目の前にある。頑張ってきた成果がでた。しかし、それに満足できずに、全く方向性の違うものに腕を伸ばしている。好奇心旺盛な理久らしい。しかし、無理をしていると思う。俺も違和感を持っている。ディアドロップのこととは別だろうか。
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