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こんなに真剣に考える理久のことを、深く考えすぎだとは言えない。ありったけの力を込めて、胸の奥から吐き出せたということだ。きっと、ここにいない二人も願っていたと思う。スタジオに詰めっぱなしで”再開”のアレンジを仕上げている久弥と、黒崎製菓の数年後のビジョンを進めている早瀬さんという、双子のように動ける二人だ。
「久弥を呼ぼうか?枝川さんのプライドが傷ついてもいいなら」
「だから夏樹君のことが好きなんだ。堂々と言うから。自信がある。嫌われてもいいんだもんね?」
「今はそうじゃないよ。怖いって分かる。悠人が戻ってきたよ。黒崎さんも。……枝川さんが話したいことがあるってさ。はいはい。顔を上げようね……」
ソファーの背で隔てられた対岸というべき向こうには、全く位置を変えずに、悠人と二葉が立っている。ハラハラしているのに優しい顔をしている。俺もそうだろうか?黒崎が静かに見守っている中、枝川さんが声色を和らげて、理久に話しかけた。
「静久さんになりたいのか?なれると思うのか?」
「ううん。目標にした人だよ」
「今の理久には別のアドバイスをするだろう。君が中学生になった時に亡くなったんだな?その頃から時間が止まっているぞ。あの頃の君は、あの時だけに存在した。いきなりのことだったから、心の整理がついていないんじゃないのか?」
「ううん。お別れが言えた時期があったんだ。……本当は事故で亡くなっていない人だよ。車の信号待ちで、後ろの車に追突されたんだ。その一週間後に心臓発作で亡くなったんだ。たぶん、その時に悪くなったと思う。俺達はそう思ってる。……その間に同窓会に出たり、ライブハウスの人に会ったりして、毎日忙しくしていたよ。お別れができたんだと思う……っ。俺は映画を観に連れて行ってくれたよ。春の忙しい時期なのに。俺は傲慢だった!」
理久がはっきりと言った。勝手に想像して悲しんで、守ってもらった身体に怪我をさせた。そうすれば楽になると逃げた。誰も喜ばない方法だと言った。
「そういう人に守ってもらえたんだぞー?光栄に思え。静久さんになりたいって思うことが傲慢だ!……あーーあ。久弥さんは仕事中だ。裕理君は出張中。静久さんは遠くにいる。俺しか迎えに来る人がいなかった。我慢してくれよー?」
「何を言っているんだよ!幸也君に来てほしかった。俺が来いって言った時は、そうすればいい」
「それをはっきり言え」
「幸也君がはっきり言わないからだよ。俺も言えない」
「人のせいにするな」
「幸也君のせいだよ!」
「ここでどうしたいのかを選べ!その上で希望進路を目指すのなら応援する」
「俺は自分を選ぶよ!あ……」
その時だ。理久の中の漠然とした不安が流れ落ちたように感じた。噴水ではなく、ぽたっと、両目から雫のような涙をこぼしたからだ。長いまつ毛に引っかかって落ちている。俺はそれが分かるぐらいに理久のことを見つめている。引き寄せられるようにして。
「ここにいるは誰なんだ?理久かー?」
「そうだよ!」
「自己紹介してくれ。信用できない」
「はじめまして……っ。佐伯理久です。理工学部の4年生です。機械工学を重点的に学んでいました。黒崎製菓の開発部のインターンに参加しています。このまま黒崎製菓で働きたいと思っています」
「はじめまして。枝川幸也です。黒崎製菓の営業企画部で、自分自身に苦労しています。今回は僕の方の不手際です」
「そんなことはありません!」
「そんなことはあります」
「ばーーか!」
「いいよ。比べられて幸せだ。早瀬専務を越えようとしていたんだぞ?」
「うん。知っているよ。どうしてかな?って思っていたよ」
「違う人だった。俺が気張るのは……」
「うん。そんなに深く考えるなよ!比べていないし」
「おーい。うんって答えたじゃないか……」
枝川さんが真っ赤な顔をした。俺たちを見て軽く首を振っている。いつものことだというから、つい笑い声が立ってしまった。
「久弥を呼ぼうか?枝川さんのプライドが傷ついてもいいなら」
「だから夏樹君のことが好きなんだ。堂々と言うから。自信がある。嫌われてもいいんだもんね?」
「今はそうじゃないよ。怖いって分かる。悠人が戻ってきたよ。黒崎さんも。……枝川さんが話したいことがあるってさ。はいはい。顔を上げようね……」
ソファーの背で隔てられた対岸というべき向こうには、全く位置を変えずに、悠人と二葉が立っている。ハラハラしているのに優しい顔をしている。俺もそうだろうか?黒崎が静かに見守っている中、枝川さんが声色を和らげて、理久に話しかけた。
「静久さんになりたいのか?なれると思うのか?」
「ううん。目標にした人だよ」
「今の理久には別のアドバイスをするだろう。君が中学生になった時に亡くなったんだな?その頃から時間が止まっているぞ。あの頃の君は、あの時だけに存在した。いきなりのことだったから、心の整理がついていないんじゃないのか?」
「ううん。お別れが言えた時期があったんだ。……本当は事故で亡くなっていない人だよ。車の信号待ちで、後ろの車に追突されたんだ。その一週間後に心臓発作で亡くなったんだ。たぶん、その時に悪くなったと思う。俺達はそう思ってる。……その間に同窓会に出たり、ライブハウスの人に会ったりして、毎日忙しくしていたよ。お別れができたんだと思う……っ。俺は映画を観に連れて行ってくれたよ。春の忙しい時期なのに。俺は傲慢だった!」
理久がはっきりと言った。勝手に想像して悲しんで、守ってもらった身体に怪我をさせた。そうすれば楽になると逃げた。誰も喜ばない方法だと言った。
「そういう人に守ってもらえたんだぞー?光栄に思え。静久さんになりたいって思うことが傲慢だ!……あーーあ。久弥さんは仕事中だ。裕理君は出張中。静久さんは遠くにいる。俺しか迎えに来る人がいなかった。我慢してくれよー?」
「何を言っているんだよ!幸也君に来てほしかった。俺が来いって言った時は、そうすればいい」
「それをはっきり言え」
「幸也君がはっきり言わないからだよ。俺も言えない」
「人のせいにするな」
「幸也君のせいだよ!」
「ここでどうしたいのかを選べ!その上で希望進路を目指すのなら応援する」
「俺は自分を選ぶよ!あ……」
その時だ。理久の中の漠然とした不安が流れ落ちたように感じた。噴水ではなく、ぽたっと、両目から雫のような涙をこぼしたからだ。長いまつ毛に引っかかって落ちている。俺はそれが分かるぐらいに理久のことを見つめている。引き寄せられるようにして。
「ここにいるは誰なんだ?理久かー?」
「そうだよ!」
「自己紹介してくれ。信用できない」
「はじめまして……っ。佐伯理久です。理工学部の4年生です。機械工学を重点的に学んでいました。黒崎製菓の開発部のインターンに参加しています。このまま黒崎製菓で働きたいと思っています」
「はじめまして。枝川幸也です。黒崎製菓の営業企画部で、自分自身に苦労しています。今回は僕の方の不手際です」
「そんなことはありません!」
「そんなことはあります」
「ばーーか!」
「いいよ。比べられて幸せだ。早瀬専務を越えようとしていたんだぞ?」
「うん。知っているよ。どうしてかな?って思っていたよ」
「違う人だった。俺が気張るのは……」
「うん。そんなに深く考えるなよ!比べていないし」
「おーい。うんって答えたじゃないか……」
枝川さんが真っ赤な顔をした。俺たちを見て軽く首を振っている。いつものことだというから、つい笑い声が立ってしまった。
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