460 / 514
26-28
しおりを挟む
理久がうれし泣きをはじめた。今度は悠人が涙を拭き取った後、げえええっと声をあげた。鼻水まで指先についたからだった。ちょうどいい。テーブルの布きんで悠人の手元を包むと、また声をあげた。彼の方こそ賑やかだ。
「なつきー。羊羹を拭いたばかりだろーー」
「そんなに汚れていないからいいじゃん。ここは綺麗にしているんだ。誰かの部屋とは違うよ。二葉の部屋だよ。悠人の嫌いなものは出てこないけど。そこまでいかないよ。うんうん」
「ひいいいいっ。さっき部屋にいたのに。うひぇ?りくーー、泣いたカラスがもう笑ったよ。……嫌な表現なのー?もうーー」
カラスと言えばクロウだ。久弥のライブに出るというなら、伊吹も一緒にどうだろう?俺が久弥に頭を下げる。芸名もお揃いにするといい。提案しよう。
「理久。いいことを思いついたんだ。伊吹お兄ちゃんが、久弥のラストライブに出演できるように頼んでみるよ。あの人は弟に苦労しているクロウ。理久は生き生きしたクロウだよ」
「ふむふむ。俺からも頼んであげるよ。伊吹さんのことも好きだもんねー?薫陶を受けてこいよ!」
「はははは!こっちにこーーい」
「やめろよーーー」
枝川さんが笑っている。ソファーに寝転がりそうな勢いだ。ここにも自分を選んだ人がいるように思えた。理久が恥ずかしがって離れようとしている。それを阻むように枝川さんが抱きしめて、何度も頬にキスを始めた。
「幸也君……。いい男ぶるなよーー」
「包容力、決断力、度量の大きさ。どれも足りない。かないっこない……」
「エロさが負けているからよかった。お兄ちゃんが嫌がっていたレベルだもん。だからモテなかったんだ。幸也君はモテるから勝っているよ?」
「ああーー。ますます落ち込みそうだ!男はエロい方が偉い。……そういう君のことが好きだ。帰って来てくれてありがとう」
「他に行く場所がないもん。いろんな場所に出かけようよ!気晴らしに」
「それなら約束できる。これをやっておこう」
二人が指切りげんまんを始めた。周りから安堵のため息が聞こえてきた時、自分の頬が温かくなった。もらい泣きか?安堵の涙が?その答えは、”うれし泣き”と、”悔し泣き”だ。
理久が大きく前進して歩き始めた。悠人がカモメになって、悠々と空を飛び始めている。だったら俺は?自分こそ迷子そのものだと思った。黒崎が俺のそばに立って見つめてきた。でも、涙を拭いてくれない。
「あとで話を聞かせてくれ」
「もちろんだよ。俺も泣いたよ。慣れている?」
「ああ。お疲れさま。お手伝い天使たちだ」
「縁起の悪いことを言うなってば~……」
「その演技を担いだ。数日間だけ堪える……」
その言葉にドキッとした。見上げると笑っていた。悲しそうでもある。期待している答えだろう。心の準備をして待っていると、スローモーションのように、黒崎の唇が動いた。
「表彰式に出かけてくる。あの男の子ウサギに会いたい」
「今回は再会だね!アップルパイビスケットも再開するんだろ?」
「そうなるように説得する。グループとしても、小さな手助けをする」
たった数日離れるだけだ。またこぼれ落ちた涙はなんだろう?寂しい涙?応援する涙?その答えは”うれし泣き”だ。
主役の理久たちを放っておいて、黒崎の力強い腕に抱きしめられた。もちろん、俺の方からもありったけの力を込めて抱き返した。こうして夜は更けていった。
「なつきー。羊羹を拭いたばかりだろーー」
「そんなに汚れていないからいいじゃん。ここは綺麗にしているんだ。誰かの部屋とは違うよ。二葉の部屋だよ。悠人の嫌いなものは出てこないけど。そこまでいかないよ。うんうん」
「ひいいいいっ。さっき部屋にいたのに。うひぇ?りくーー、泣いたカラスがもう笑ったよ。……嫌な表現なのー?もうーー」
カラスと言えばクロウだ。久弥のライブに出るというなら、伊吹も一緒にどうだろう?俺が久弥に頭を下げる。芸名もお揃いにするといい。提案しよう。
「理久。いいことを思いついたんだ。伊吹お兄ちゃんが、久弥のラストライブに出演できるように頼んでみるよ。あの人は弟に苦労しているクロウ。理久は生き生きしたクロウだよ」
「ふむふむ。俺からも頼んであげるよ。伊吹さんのことも好きだもんねー?薫陶を受けてこいよ!」
「はははは!こっちにこーーい」
「やめろよーーー」
枝川さんが笑っている。ソファーに寝転がりそうな勢いだ。ここにも自分を選んだ人がいるように思えた。理久が恥ずかしがって離れようとしている。それを阻むように枝川さんが抱きしめて、何度も頬にキスを始めた。
「幸也君……。いい男ぶるなよーー」
「包容力、決断力、度量の大きさ。どれも足りない。かないっこない……」
「エロさが負けているからよかった。お兄ちゃんが嫌がっていたレベルだもん。だからモテなかったんだ。幸也君はモテるから勝っているよ?」
「ああーー。ますます落ち込みそうだ!男はエロい方が偉い。……そういう君のことが好きだ。帰って来てくれてありがとう」
「他に行く場所がないもん。いろんな場所に出かけようよ!気晴らしに」
「それなら約束できる。これをやっておこう」
二人が指切りげんまんを始めた。周りから安堵のため息が聞こえてきた時、自分の頬が温かくなった。もらい泣きか?安堵の涙が?その答えは、”うれし泣き”と、”悔し泣き”だ。
理久が大きく前進して歩き始めた。悠人がカモメになって、悠々と空を飛び始めている。だったら俺は?自分こそ迷子そのものだと思った。黒崎が俺のそばに立って見つめてきた。でも、涙を拭いてくれない。
「あとで話を聞かせてくれ」
「もちろんだよ。俺も泣いたよ。慣れている?」
「ああ。お疲れさま。お手伝い天使たちだ」
「縁起の悪いことを言うなってば~……」
「その演技を担いだ。数日間だけ堪える……」
その言葉にドキッとした。見上げると笑っていた。悲しそうでもある。期待している答えだろう。心の準備をして待っていると、スローモーションのように、黒崎の唇が動いた。
「表彰式に出かけてくる。あの男の子ウサギに会いたい」
「今回は再会だね!アップルパイビスケットも再開するんだろ?」
「そうなるように説得する。グループとしても、小さな手助けをする」
たった数日離れるだけだ。またこぼれ落ちた涙はなんだろう?寂しい涙?応援する涙?その答えは”うれし泣き”だ。
主役の理久たちを放っておいて、黒崎の力強い腕に抱きしめられた。もちろん、俺の方からもありったけの力を込めて抱き返した。こうして夜は更けていった。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのアルフレッドが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
アルフレッドの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる