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27-5(黒崎視点)
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16時半。
母のモデルスクールの事務所の前で、タクシーを降りた。約束の時間まで30分近くある。この辺りの華やかな街を歩いてみよう。
事務所を見て意外に思った。外観を中心に改装したと聞いたが、全体的に重苦しさのある空気に包まれていた。正面玄関は整えられている。女性が好みそうなデザインだ。母の希望だろう。
ここに来る前、あえて裏の通用口沿いの道を走らせて到着した。その通用口を見ると、とても管理が行き届いているとは言えない状態だった。出入り口の外に傘が乱雑に立てられて、ゴミ袋まで置いてあった。どこで取引相手が見ているのか油断できない。通りかかるだけで丸見えの建物だ。自宅はどうでもいい。
(清掃会社に依頼する経費を惜しんでいるのか?それなら、トップの母がやればいい。やるわけがないか。華やかな表舞台の住人としての、看板になりたがっている人だ……)
地元で開いていた教室は、スタッフの男性が運営していた。そして、当時の母名義の銀行口座には、別の男性名で毎月振り込みがあった。
なぜ知ったのか?都内に引っ越してきた頃、朝陽が荷物の中から通帳を見つけたからだ。二葉と朝陽の学費だと表に書かれていたから、躊躇なくページを開いたそうだ。当面の生活費を、ここから出せばいいと、俺に話すために。
そして、振込名を見てショックを受けた。朝陽の学校の教師だったからだ。漢字は分からないが、おそらく本人だろう。担任ではないという。理由を母に聞いた時は、教室の月謝だという話だった。そうではない気がしている。
(どういう流れで付き合いが始まったんだ……)
担任教師との面談で出向いた日ぐらいしか思い当たらない。俺との再会後から、男性関係が派手になったようだ。
この話には、夏樹がショックを受けた。自分が引き合わせたからだと思っているに違いない。一切口に出すことがなかった。二葉と朝陽が来たことを否定することにもなる。
(俺の方の判断ミスだ。あの人は、自分で選択しない選択をしてきた……)
これらは母の問題だ。俺に声をかけて名乗る選択をしたのは母だ。唯一のことか?俺も会いに行く選択をした。夏樹はその手伝いをしてくれた。それを受け止めたのは、俺の選択だ。
どうしてだ?あのモデル教室を調べることをしなかったのは。知人のツテを使えば容易いことだった。朝陽の学校教師との関係も知った。経営の実情と親子関係も。最初から分かっていた気がする。しかし、俺は気づかないふりをした。
これが母への情というものか?無条件で愛されると思い込んでいた。同じ家に暮らしていた当時は、母には心の余裕がなかった。体調も悪かった。これから打ち解けていけばいい。自分という息子がいて、母のことを守る力を持っている。それらは全て偽物だった。
ガーーーーー。
ブランドショップが建ち並ぶ通りを過ぎた。フラワーショップが、この通りに街に彩り豊かな花を添えている光景の中に入った。
カフェのガラス壁に映る自分は、ここには似合わない色味のスーツを着ている。黒に近い紺色だ。夏樹と並んで歩けば溶け込むだろう。不思議だ。今の自分の表情が悪いのか?とても穏やかではいられない。
(なんて顔をしているのか。二葉と朝陽が家で待っている。夏樹が付き添っている。今日は一貴が家にいる。親父は書斎にいるだろう……)
俺の年でもサポートが必要だったのか。自分では分からなかった。これから母に、2度目の別れを告げに行く。ただ話をするだけだ。これほど重苦しいものだったのか。
(俺ことを産みたかったのか?それを質問したことがない……)
自分は望まれて生まれてきたのだろうか?ふとした時に考えていた。今は気づいたことがある。俺のことを待ってくれていた人が、必ずいたことを。
たとえ母が望んでいなくても、生まれてくる赤ん坊の自分を取り上げた人がいる。医師だ。では、父はどうだろうか?当時の言動は想像でしかない。
母のモデルスクールの事務所の前で、タクシーを降りた。約束の時間まで30分近くある。この辺りの華やかな街を歩いてみよう。
事務所を見て意外に思った。外観を中心に改装したと聞いたが、全体的に重苦しさのある空気に包まれていた。正面玄関は整えられている。女性が好みそうなデザインだ。母の希望だろう。
ここに来る前、あえて裏の通用口沿いの道を走らせて到着した。その通用口を見ると、とても管理が行き届いているとは言えない状態だった。出入り口の外に傘が乱雑に立てられて、ゴミ袋まで置いてあった。どこで取引相手が見ているのか油断できない。通りかかるだけで丸見えの建物だ。自宅はどうでもいい。
(清掃会社に依頼する経費を惜しんでいるのか?それなら、トップの母がやればいい。やるわけがないか。華やかな表舞台の住人としての、看板になりたがっている人だ……)
地元で開いていた教室は、スタッフの男性が運営していた。そして、当時の母名義の銀行口座には、別の男性名で毎月振り込みがあった。
なぜ知ったのか?都内に引っ越してきた頃、朝陽が荷物の中から通帳を見つけたからだ。二葉と朝陽の学費だと表に書かれていたから、躊躇なくページを開いたそうだ。当面の生活費を、ここから出せばいいと、俺に話すために。
そして、振込名を見てショックを受けた。朝陽の学校の教師だったからだ。漢字は分からないが、おそらく本人だろう。担任ではないという。理由を母に聞いた時は、教室の月謝だという話だった。そうではない気がしている。
(どういう流れで付き合いが始まったんだ……)
担任教師との面談で出向いた日ぐらいしか思い当たらない。俺との再会後から、男性関係が派手になったようだ。
この話には、夏樹がショックを受けた。自分が引き合わせたからだと思っているに違いない。一切口に出すことがなかった。二葉と朝陽が来たことを否定することにもなる。
(俺の方の判断ミスだ。あの人は、自分で選択しない選択をしてきた……)
これらは母の問題だ。俺に声をかけて名乗る選択をしたのは母だ。唯一のことか?俺も会いに行く選択をした。夏樹はその手伝いをしてくれた。それを受け止めたのは、俺の選択だ。
どうしてだ?あのモデル教室を調べることをしなかったのは。知人のツテを使えば容易いことだった。朝陽の学校教師との関係も知った。経営の実情と親子関係も。最初から分かっていた気がする。しかし、俺は気づかないふりをした。
これが母への情というものか?無条件で愛されると思い込んでいた。同じ家に暮らしていた当時は、母には心の余裕がなかった。体調も悪かった。これから打ち解けていけばいい。自分という息子がいて、母のことを守る力を持っている。それらは全て偽物だった。
ガーーーーー。
ブランドショップが建ち並ぶ通りを過ぎた。フラワーショップが、この通りに街に彩り豊かな花を添えている光景の中に入った。
カフェのガラス壁に映る自分は、ここには似合わない色味のスーツを着ている。黒に近い紺色だ。夏樹と並んで歩けば溶け込むだろう。不思議だ。今の自分の表情が悪いのか?とても穏やかではいられない。
(なんて顔をしているのか。二葉と朝陽が家で待っている。夏樹が付き添っている。今日は一貴が家にいる。親父は書斎にいるだろう……)
俺の年でもサポートが必要だったのか。自分では分からなかった。これから母に、2度目の別れを告げに行く。ただ話をするだけだ。これほど重苦しいものだったのか。
(俺ことを産みたかったのか?それを質問したことがない……)
自分は望まれて生まれてきたのだろうか?ふとした時に考えていた。今は気づいたことがある。俺のことを待ってくれていた人が、必ずいたことを。
たとえ母が望んでいなくても、生まれてくる赤ん坊の自分を取り上げた人がいる。医師だ。では、父はどうだろうか?当時の言動は想像でしかない。
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