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12時半。
ざわざわ……。
カッコいいな……。
そこそこ空いているソクラテス食堂にて、昼ご飯の時間を迎えた。ここにいる4年生は就活後の企業内定をもらい、大学院の入試合格発表を終えて、まずはひと段落だと息をついている状況だ。この後に続くのは、卒論の仕上げというルートだ。
理学部内では、惑星環境学科のみが卒論提出の必要がない。普段の実験演習がその代わりになっている。外に出かけて地質を調べて、サンプルを持ち帰り、コツコツと顕微鏡をのぞいて記録を取る。毎日の積み重ねだ。悠人と日下と俺は、のんびり過ごせている。
八代は大学院に合格し、通常の研究生活に戻れた。ただし研究室の活動が忙しくて、入試勉強が間に合わないかもしれないというピンチがあった。それを乗り越えることができた。
この4人で学食にやって来た。さらに珍しいメンバーが加わり、同じテーブルに座っている。赤みのある髪の毛の男性と、優し気な顔立ちに、快活な笑い声を立てている男性だ。彼らが何か話すたびに、日下が相槌を打って笑った。八代がニコニコしながら、ソーダアイスを食べている。さすがに、この2人の姿と名前を知っていた。羽音さんと久弥だ。
「みんなー。急にお邪魔してごめんね。僕たち2人だけだと、学生さんからドン引かれているみたいだった。これでゆっくり食べられるよ。佐伯くーん。誘ってくれてありがとう」
「ぎゃはは。誘っていません。タクシーに強引に乗り込んできたでしょう?」
「渡したいものがあったから。大学生の体験もしたい。公開講座に出ようかな?……俺が講師役?ははは、勉強ができなかったのに。佐伯君が一緒なら……」
「羽音さん!これが美味いです。ここに来たら食べないと。ゆうとー、ありがとう」
「ふむふむ。いいよーー。どうぞーー」
悠人がお茶のお代わりを運んできて、追加のカボチャサラダもテーブルに置いた。さっそく、久弥が羽音さんにサラダを勧めた。
仲がいいなあと思っていると、悠人からこっそり教えてもらった。あれは”黙って食べろ”という意味だと。そうだろうか?先輩を立てていると思う。
「おーーい。夏樹君。遠慮がちにしないでくれないか?……佐伯君がいけないんだよ?それを一口くれ。女の子みたいだって?いいじゃないか。君が食べているポテトがほしい」
羽音さんが、久弥が食べているポテトを横からつまんで、ぱくっと口に放り込んだ。いかにも美味しいといった表情で食べている。こんな顔をするなんて知らなかった。食べることが好きだとは聞いていたのだが。
キャーーー。
どこからか悲鳴が起きた。この二人の光景を見ての反応のようだ。さっきから目立っている。さすがは羽音さんと久弥だ。それをストレートに口にすると、悠人が呆れた声をあげた。
「なつきーー。君だって歌手なんだよ?ここじゃ忘れるけどね」
「何も変わらないもん。卒業するのが寂しいよ。たまに来られたらいいけど。腰が重くなりそうだからさ」
「一緒に来ようよ。月一回は。くさかー。八代をよろしくね!」
「もちろんだ。春までに引っ越すことにした。近所のマンション同士だ。放っておけないからなー。……ああー、ノアだ。えーーっと。真羽を呼びますからね……」
日下が立ち上がった。羽音さんと真羽が従兄弟同士だと知っているから、さっそく気を利かせて探し始めた。でも、今日は一緒ではないようだ。
そこへ、羽音さんから声がかけられた。家で会うから構わないよと。日下がノアを呼び寄せようとすると、さらに首を振って笑った。
「せっかくのランチタイムを邪魔するから。ええ?僕が言うとおかしいのか。……ノア君はかっこいい子だね。時矢が会わせてくれなくてねー。焼肉を食べに連れて行きたいのに。……夏樹くーん。食べ終わったら帰るだろう?よかったら、一緒に乗っていないか?佐伯君は教授に会って帰るそうだ」
「ありがとうございます。でも、遠回りになるので……」
「遠慮しないで。悠人君は授業があるし。家の玄関の前まで行く。ウサギ君のモニュメントを見せてよ」
今日のことを知っているようだ。久弥がアイコンタクトを送ってきた。悠人はサラダを食べることに集中している。黒崎が留守にする話と、さらに今日のことを悠人から聞いたようで、フォローされているのが分かった。
(対岸に立っていた黒崎さんとママが会えたのに、また離れる。見えない波に押されてじゃない。今回は理由があるから対立する……)
ありがとうございます。ここにいる皆にもお礼を言った。そして、わいわい話しながら、黒崎製菓特製のソフトクリームを頬張った。
ざわざわ……。
カッコいいな……。
そこそこ空いているソクラテス食堂にて、昼ご飯の時間を迎えた。ここにいる4年生は就活後の企業内定をもらい、大学院の入試合格発表を終えて、まずはひと段落だと息をついている状況だ。この後に続くのは、卒論の仕上げというルートだ。
理学部内では、惑星環境学科のみが卒論提出の必要がない。普段の実験演習がその代わりになっている。外に出かけて地質を調べて、サンプルを持ち帰り、コツコツと顕微鏡をのぞいて記録を取る。毎日の積み重ねだ。悠人と日下と俺は、のんびり過ごせている。
八代は大学院に合格し、通常の研究生活に戻れた。ただし研究室の活動が忙しくて、入試勉強が間に合わないかもしれないというピンチがあった。それを乗り越えることができた。
この4人で学食にやって来た。さらに珍しいメンバーが加わり、同じテーブルに座っている。赤みのある髪の毛の男性と、優し気な顔立ちに、快活な笑い声を立てている男性だ。彼らが何か話すたびに、日下が相槌を打って笑った。八代がニコニコしながら、ソーダアイスを食べている。さすがに、この2人の姿と名前を知っていた。羽音さんと久弥だ。
「みんなー。急にお邪魔してごめんね。僕たち2人だけだと、学生さんからドン引かれているみたいだった。これでゆっくり食べられるよ。佐伯くーん。誘ってくれてありがとう」
「ぎゃはは。誘っていません。タクシーに強引に乗り込んできたでしょう?」
「渡したいものがあったから。大学生の体験もしたい。公開講座に出ようかな?……俺が講師役?ははは、勉強ができなかったのに。佐伯君が一緒なら……」
「羽音さん!これが美味いです。ここに来たら食べないと。ゆうとー、ありがとう」
「ふむふむ。いいよーー。どうぞーー」
悠人がお茶のお代わりを運んできて、追加のカボチャサラダもテーブルに置いた。さっそく、久弥が羽音さんにサラダを勧めた。
仲がいいなあと思っていると、悠人からこっそり教えてもらった。あれは”黙って食べろ”という意味だと。そうだろうか?先輩を立てていると思う。
「おーーい。夏樹君。遠慮がちにしないでくれないか?……佐伯君がいけないんだよ?それを一口くれ。女の子みたいだって?いいじゃないか。君が食べているポテトがほしい」
羽音さんが、久弥が食べているポテトを横からつまんで、ぱくっと口に放り込んだ。いかにも美味しいといった表情で食べている。こんな顔をするなんて知らなかった。食べることが好きだとは聞いていたのだが。
キャーーー。
どこからか悲鳴が起きた。この二人の光景を見ての反応のようだ。さっきから目立っている。さすがは羽音さんと久弥だ。それをストレートに口にすると、悠人が呆れた声をあげた。
「なつきーー。君だって歌手なんだよ?ここじゃ忘れるけどね」
「何も変わらないもん。卒業するのが寂しいよ。たまに来られたらいいけど。腰が重くなりそうだからさ」
「一緒に来ようよ。月一回は。くさかー。八代をよろしくね!」
「もちろんだ。春までに引っ越すことにした。近所のマンション同士だ。放っておけないからなー。……ああー、ノアだ。えーーっと。真羽を呼びますからね……」
日下が立ち上がった。羽音さんと真羽が従兄弟同士だと知っているから、さっそく気を利かせて探し始めた。でも、今日は一緒ではないようだ。
そこへ、羽音さんから声がかけられた。家で会うから構わないよと。日下がノアを呼び寄せようとすると、さらに首を振って笑った。
「せっかくのランチタイムを邪魔するから。ええ?僕が言うとおかしいのか。……ノア君はかっこいい子だね。時矢が会わせてくれなくてねー。焼肉を食べに連れて行きたいのに。……夏樹くーん。食べ終わったら帰るだろう?よかったら、一緒に乗っていないか?佐伯君は教授に会って帰るそうだ」
「ありがとうございます。でも、遠回りになるので……」
「遠慮しないで。悠人君は授業があるし。家の玄関の前まで行く。ウサギ君のモニュメントを見せてよ」
今日のことを知っているようだ。久弥がアイコンタクトを送ってきた。悠人はサラダを食べることに集中している。黒崎が留守にする話と、さらに今日のことを悠人から聞いたようで、フォローされているのが分かった。
(対岸に立っていた黒崎さんとママが会えたのに、また離れる。見えない波に押されてじゃない。今回は理由があるから対立する……)
ありがとうございます。ここにいる皆にもお礼を言った。そして、わいわい話しながら、黒崎製菓特製のソフトクリームを頬張った。
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