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まるで庭の噴水のようだ。リビングの天井から差した光が、朝陽の涙を白く輝かせた。しかし、水たまりにならない。だから、波紋という波の輪が起きない。二葉が拭き取ってしまうからだ。
カインの二葉が、大雑把に朝陽の顔を拭いている。そのアベルが、大人しく座って笑っている。朝陽は優しい子だ。医師を目指したのは、二葉の怪我も理由にあると思う。
「あさひー。医学部に入ったのは、二葉のことがあるからだろ?」
「うん。認める。お姉ちゃんを超える成績を出したいからっていうのが建前だった。ああー、お兄ちゃんだった。怒るなって。全然変わっていないぞ……」
「お前が泣かすからだ!早く言え!」
「わあ……、今度は二葉が泣いたよ~」
わざと茶化した。黒崎が帰る前で良かった。もう泣いた顔を見せたくないと言い切っていたからだ。朝陽もそうだろう。涙の跡を隠させよう。温かいものと、冷たいおしぼりを交互にあてればOKだ。さっそく立ち上がったところで、朝陽から止められた。
「俺が取ってくる。何が要る?」
「いいよ。そんなに気を遣うなよ~」
「社長がいるからだ。怖いから。……泣いた顔を見せたくないって?もう平気になった。わあわあ泣いているぞ。社長の前で。苛めてくるし……」
「ええーー?マジで!?」
「おおーー……」
社長とは、一貴さんのことだ。驚いて目をぱちくりしていると、朝陽の背中越しにあるドアが前触れもなく開き、3人一緒に驚いて肩を震わせた。そこに立っていたのは、羽音さんだった。てっきり黒崎かと思った。
「はははーー。ごめんね。少し開いていたから遠慮なく……」
「気にしないでください。キッチンに行くので手伝います」
「ありがとう。もう仕上がるから声をかけに来た。黒崎さんは、まだ帰らないのかな?甘さ控えめのプリンを作った。温かくても美味しいレシピだよ」
「もうすぐ帰って来ます。ラインが入ったばかりなので。プリンミックス粉を使ったんですか?話していたメーカーの」
「いいや。自分で配合した。駆け出しの頃、岩野洋菓子店で働いててねー。僕が作ったものを店頭に出していた。すごいだろ?皆の分は、プリンアラモードに仕上げたよ。……ははは!そんなに喜んでもらえるのかー?」
二葉と朝陽が嬉しそうな声をあげた。まるで小学生の兄弟のようだった。そして、楽曲のEDENのPVに登場する兄弟のようでもある。同じソファーに並んで座って笑っている。
「プリンアラモードか。久しぶりだなあーー」
「何年も食べていないよ。手伝います」
「島川さんが運んでくる。迎えに行ってあげて」
「はーーい!」
二葉たちが同時に立ち上がった。今までは別々に行動していたからなのか、共通の知り合いに会っても、兄弟だと気づかれないレベルだと聞いたことがある。家の中でも別々に過ごしてきたのに、今はジャレ合って、先を急ぐそうにして部屋を出て行った。
その様子を、羽音さんが嬉しそうな顔をして見つめていた。その反対に、俺の方は羽音さんのことを見つめた。料理全般が苦手だと思っていたのに。
「スイーツは得意なんですね。料理全般が苦手だって思っていました」
「全般得意だよ。だって、君の厚焼き玉子が食べたいからだよ。料理上手な先輩に持って行くのは、恥ずかしいんだろ?そうだよねーー?」
ぎく。全くその通りだ。偉そうにしないように気を付けている。快活な笑い声と同時に、頬をくすぐる指先に驚いた。こんなスキンシップは初めだ。
「変な意味はない。僕は変な男だけど。そういう顔を、現場でも見せてあげるといいよ。黒崎常務モードって言っていたよね?佐伯君からも聞いた。……黒崎さんの仕事中を見たことがないから想像するしかないけど、リラックスしているんじゃないかな?君の場合は緊張感がありすぎる。……この家は大変だね。しっかりしないといけないね。……僕は、夏樹君がクマの着ぐるみに驚かされた光景が好きなんだ。魅力的だったよ。こういう面で期待に応えてみない?」
返事ができなかった。天井からの明かりで視界が反射して、室内の様子が見えなくなった。羽音さんが笑っている。俺も泣いたのだろうか?力が抜けた。
カインの二葉が、大雑把に朝陽の顔を拭いている。そのアベルが、大人しく座って笑っている。朝陽は優しい子だ。医師を目指したのは、二葉の怪我も理由にあると思う。
「あさひー。医学部に入ったのは、二葉のことがあるからだろ?」
「うん。認める。お姉ちゃんを超える成績を出したいからっていうのが建前だった。ああー、お兄ちゃんだった。怒るなって。全然変わっていないぞ……」
「お前が泣かすからだ!早く言え!」
「わあ……、今度は二葉が泣いたよ~」
わざと茶化した。黒崎が帰る前で良かった。もう泣いた顔を見せたくないと言い切っていたからだ。朝陽もそうだろう。涙の跡を隠させよう。温かいものと、冷たいおしぼりを交互にあてればOKだ。さっそく立ち上がったところで、朝陽から止められた。
「俺が取ってくる。何が要る?」
「いいよ。そんなに気を遣うなよ~」
「社長がいるからだ。怖いから。……泣いた顔を見せたくないって?もう平気になった。わあわあ泣いているぞ。社長の前で。苛めてくるし……」
「ええーー?マジで!?」
「おおーー……」
社長とは、一貴さんのことだ。驚いて目をぱちくりしていると、朝陽の背中越しにあるドアが前触れもなく開き、3人一緒に驚いて肩を震わせた。そこに立っていたのは、羽音さんだった。てっきり黒崎かと思った。
「はははーー。ごめんね。少し開いていたから遠慮なく……」
「気にしないでください。キッチンに行くので手伝います」
「ありがとう。もう仕上がるから声をかけに来た。黒崎さんは、まだ帰らないのかな?甘さ控えめのプリンを作った。温かくても美味しいレシピだよ」
「もうすぐ帰って来ます。ラインが入ったばかりなので。プリンミックス粉を使ったんですか?話していたメーカーの」
「いいや。自分で配合した。駆け出しの頃、岩野洋菓子店で働いててねー。僕が作ったものを店頭に出していた。すごいだろ?皆の分は、プリンアラモードに仕上げたよ。……ははは!そんなに喜んでもらえるのかー?」
二葉と朝陽が嬉しそうな声をあげた。まるで小学生の兄弟のようだった。そして、楽曲のEDENのPVに登場する兄弟のようでもある。同じソファーに並んで座って笑っている。
「プリンアラモードか。久しぶりだなあーー」
「何年も食べていないよ。手伝います」
「島川さんが運んでくる。迎えに行ってあげて」
「はーーい!」
二葉たちが同時に立ち上がった。今までは別々に行動していたからなのか、共通の知り合いに会っても、兄弟だと気づかれないレベルだと聞いたことがある。家の中でも別々に過ごしてきたのに、今はジャレ合って、先を急ぐそうにして部屋を出て行った。
その様子を、羽音さんが嬉しそうな顔をして見つめていた。その反対に、俺の方は羽音さんのことを見つめた。料理全般が苦手だと思っていたのに。
「スイーツは得意なんですね。料理全般が苦手だって思っていました」
「全般得意だよ。だって、君の厚焼き玉子が食べたいからだよ。料理上手な先輩に持って行くのは、恥ずかしいんだろ?そうだよねーー?」
ぎく。全くその通りだ。偉そうにしないように気を付けている。快活な笑い声と同時に、頬をくすぐる指先に驚いた。こんなスキンシップは初めだ。
「変な意味はない。僕は変な男だけど。そういう顔を、現場でも見せてあげるといいよ。黒崎常務モードって言っていたよね?佐伯君からも聞いた。……黒崎さんの仕事中を見たことがないから想像するしかないけど、リラックスしているんじゃないかな?君の場合は緊張感がありすぎる。……この家は大変だね。しっかりしないといけないね。……僕は、夏樹君がクマの着ぐるみに驚かされた光景が好きなんだ。魅力的だったよ。こういう面で期待に応えてみない?」
返事ができなかった。天井からの明かりで視界が反射して、室内の様子が見えなくなった。羽音さんが笑っている。俺も泣いたのだろうか?力が抜けた。
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