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ザーーーー。
ちょうどいいタイミングの音が鳴った。安斎さんと羽音さんが映った撮った写真がプリントアウト完了した。さっと取り出した時、久弥が写真を手に取った。3人で写った分にサインを始めている。ごく自然な動作に尊敬する。
”佐伯久弥”に声をかけてくれた人と話すときの久弥は、腰が低すぎることがなくて、柔らかい話し方をして、堂々とした佇まいをしている。最初から同じだと思ったら、そうでもなかったことを遠藤さんから聞いた。人見知りタイプだったからこそ、引きつった笑い方の時があったそうだ。嬉しいのに気を遣ってしまう結果だ。
俺が自然にファンに接することができるようにと、ごく自然に促されてきた。どうして細かいところまで気づくのかと不思議だった。心の中で戸惑っていることまで知られていた。押し付けられることがなく、たまにイジられて笑いが起こり、その流れで周りの人と話ができるという形だ。
「なつきーー。俺が後方支援になった後、引っ込み思案をどうするんだ?」
「もう無くなったよ。大丈夫です」
「ぎゃはは。うそつけ!先週の見かけたぞ?スタジオの外だ。高校生からキャーキャー言われて、真っ赤になっていたくせに」
「見るなよ~~」
「たまには言われたかったんだろう?近所の人からは平気なのにな。マザコン!」
「言うなよ~~」
あっさり否定できない。先日のことだ。テレビ番組に出演した”中山クロウ”による、中山家の次男坊のエピソードを語られてしまったのが理由だ。
小学生の時のエピソード集なのに、いまだに続いているような印象を与えられた。おかげで仕事現場に行くたびに、お母さん孝行の青年だと褒められる。それには、”お母さんが大好きな22歳”という解釈も含まれている。
カタ……。
羽音さんも写真を撮ってサインを始めてくれた。こういう時は静まり返っている。綺麗な字でメッセージを添えて、なるべく読み取りやすいようなサインを描いている。まるで手紙に書くように。そして、久弥のフルネームのサインを見て笑い声を立てた。
「僕と佐伯君は縁があるんだよ。知っていた?名前と声質のことだよ」
「そうですか……。ふむふむ。ふーーってやるな」
「俺は知りたいよ。どんなもの?」
「それはねーー。これを見て欲しい。引退コンサートでコラボする分の、パンフレットに書くメッセージを選んでいた時に気づいた。はい……」
羽音さんからノートを見せてもらった。久弥という名前の由来と字に関するものがメモされていた。久弥の”弥”という字は、”彌”とも書く。久しい、行き渡るという意味になる。なるほど。羽音さんの、端から端まで行き渡る声を連想させる。それを聞いた久弥が渇いた笑いを漏らした。
「何が何でもつながるつもりかーー?」
「実際は無理だし。いいの?ははははーー。冗談だよ。脈があるの?うぬぼれてもいい?」
「……続きを読みたい。夏樹、朗読してくれ」
「……”彌”という字は、弓と爾に分けることができる。爾という字のなりたちは、ハンコの形をしていることから、二つのものが近づく、融合するという意味に取れる。これに”弓”を合わせて、弓の弦を端と端を近づけて、張り渡す様を表現している。……久しい。行き渡るという意味に繋がる。……わあーー。上弦の月の天使みたいだね。再開の楽曲に繋がるよ!ソロコンサートではやらないの?……久弥?」
「続けてくれ……」
さらに読み進めて解釈した。これに続けて”半月”のことに触れている。同じ月なのに、その時に光って見えている面の大きさで印象が変わる。まるで同じ人物の顔のようだ。いや、みんなが多面体なのか。
同じ半月でも、上弦と下弦では見立てが異なる。何かを射ようとして、弓矢を上に向けているのが上弦の月なら、下弦の月は、弓矢を下げている。何かを見て踏み留まったということだ。
久弥がぼんやりした顔のままで、ノートを見つめている。だんだんと目頭が潤んできたのが分かり、羽音さん心配そうな顔をして離れた。すぐに久弥が首を振り、お礼を言ったことで、ホッとした顔をした。
「羽音さん。ありがとうございます……」
「かっこいい名前だね。もう弓矢を下げたのかな?」
「とっくに下げている。守りたい子たちのために。引退コンサートでは下げる。TDDでは上に向ける。後方支援担当として、弓張りの再開だ!」
(あれ?天使みたいだな……)
赤みのある髪の毛が太陽の光に反射して、金色に見えた。今日の白いTシャツによく映えている。廊下に面した扉を全開にしていることから、そこにあるステンドグラスの光が入り込み、まるで久弥が天使のように見えた。そして、羽音さんが隣にいる。彼も天使に見えた。
どういうめぐり合わせだろうか?縁起が悪いかも知れないから言わないでおこう。忍び笑いをしている俺のことを見て、2人から頬をつねられてしまった。
もちろんすぐに、玄関先に居る黒崎に助けを求めた。あの2人の天使に苛められたのだと言いながら、彼の胸にすがって泣きまねをしてやった。
ちょうどいいタイミングの音が鳴った。安斎さんと羽音さんが映った撮った写真がプリントアウト完了した。さっと取り出した時、久弥が写真を手に取った。3人で写った分にサインを始めている。ごく自然な動作に尊敬する。
”佐伯久弥”に声をかけてくれた人と話すときの久弥は、腰が低すぎることがなくて、柔らかい話し方をして、堂々とした佇まいをしている。最初から同じだと思ったら、そうでもなかったことを遠藤さんから聞いた。人見知りタイプだったからこそ、引きつった笑い方の時があったそうだ。嬉しいのに気を遣ってしまう結果だ。
俺が自然にファンに接することができるようにと、ごく自然に促されてきた。どうして細かいところまで気づくのかと不思議だった。心の中で戸惑っていることまで知られていた。押し付けられることがなく、たまにイジられて笑いが起こり、その流れで周りの人と話ができるという形だ。
「なつきーー。俺が後方支援になった後、引っ込み思案をどうするんだ?」
「もう無くなったよ。大丈夫です」
「ぎゃはは。うそつけ!先週の見かけたぞ?スタジオの外だ。高校生からキャーキャー言われて、真っ赤になっていたくせに」
「見るなよ~~」
「たまには言われたかったんだろう?近所の人からは平気なのにな。マザコン!」
「言うなよ~~」
あっさり否定できない。先日のことだ。テレビ番組に出演した”中山クロウ”による、中山家の次男坊のエピソードを語られてしまったのが理由だ。
小学生の時のエピソード集なのに、いまだに続いているような印象を与えられた。おかげで仕事現場に行くたびに、お母さん孝行の青年だと褒められる。それには、”お母さんが大好きな22歳”という解釈も含まれている。
カタ……。
羽音さんも写真を撮ってサインを始めてくれた。こういう時は静まり返っている。綺麗な字でメッセージを添えて、なるべく読み取りやすいようなサインを描いている。まるで手紙に書くように。そして、久弥のフルネームのサインを見て笑い声を立てた。
「僕と佐伯君は縁があるんだよ。知っていた?名前と声質のことだよ」
「そうですか……。ふむふむ。ふーーってやるな」
「俺は知りたいよ。どんなもの?」
「それはねーー。これを見て欲しい。引退コンサートでコラボする分の、パンフレットに書くメッセージを選んでいた時に気づいた。はい……」
羽音さんからノートを見せてもらった。久弥という名前の由来と字に関するものがメモされていた。久弥の”弥”という字は、”彌”とも書く。久しい、行き渡るという意味になる。なるほど。羽音さんの、端から端まで行き渡る声を連想させる。それを聞いた久弥が渇いた笑いを漏らした。
「何が何でもつながるつもりかーー?」
「実際は無理だし。いいの?ははははーー。冗談だよ。脈があるの?うぬぼれてもいい?」
「……続きを読みたい。夏樹、朗読してくれ」
「……”彌”という字は、弓と爾に分けることができる。爾という字のなりたちは、ハンコの形をしていることから、二つのものが近づく、融合するという意味に取れる。これに”弓”を合わせて、弓の弦を端と端を近づけて、張り渡す様を表現している。……久しい。行き渡るという意味に繋がる。……わあーー。上弦の月の天使みたいだね。再開の楽曲に繋がるよ!ソロコンサートではやらないの?……久弥?」
「続けてくれ……」
さらに読み進めて解釈した。これに続けて”半月”のことに触れている。同じ月なのに、その時に光って見えている面の大きさで印象が変わる。まるで同じ人物の顔のようだ。いや、みんなが多面体なのか。
同じ半月でも、上弦と下弦では見立てが異なる。何かを射ようとして、弓矢を上に向けているのが上弦の月なら、下弦の月は、弓矢を下げている。何かを見て踏み留まったということだ。
久弥がぼんやりした顔のままで、ノートを見つめている。だんだんと目頭が潤んできたのが分かり、羽音さん心配そうな顔をして離れた。すぐに久弥が首を振り、お礼を言ったことで、ホッとした顔をした。
「羽音さん。ありがとうございます……」
「かっこいい名前だね。もう弓矢を下げたのかな?」
「とっくに下げている。守りたい子たちのために。引退コンサートでは下げる。TDDでは上に向ける。後方支援担当として、弓張りの再開だ!」
(あれ?天使みたいだな……)
赤みのある髪の毛が太陽の光に反射して、金色に見えた。今日の白いTシャツによく映えている。廊下に面した扉を全開にしていることから、そこにあるステンドグラスの光が入り込み、まるで久弥が天使のように見えた。そして、羽音さんが隣にいる。彼も天使に見えた。
どういうめぐり合わせだろうか?縁起が悪いかも知れないから言わないでおこう。忍び笑いをしている俺のことを見て、2人から頬をつねられてしまった。
もちろんすぐに、玄関先に居る黒崎に助けを求めた。あの2人の天使に苛められたのだと言いながら、彼の胸にすがって泣きまねをしてやった。
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