上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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28-11

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 カチャ。

 ドアを開くと、本の匂いがした。落ち着く匂いだ。後で一貴さんも来ると思うから、ドアを開きっぱなしにしておいた。椅子が2脚ある。小さなテーブルもある。ここで何度も長居したことだろう。

「あ、珈琲を持ってくれば良かったかな。後で良いか」

 さあ、アルバムを探そう。奥の方に行くと、分かりやすく置いてくれていた。一度も開かなかったのだろうか。表紙が新しいままのように感じた。それを椅子とテーブルのところまで持って来て、ページを開いた。写真の下には日付が貼り付けられている。今から33年前のガーデンパーティーの様子のようだ。若い頃のお義父さんが写っている。黒崎もいるだろうか。日付からいうと4歳だ。6歳でこの家に来たというから、居ないかも知れない。拓海さんと晴海さんは写っていそうだ。

「華やかなこともやったんだなあ。何かのお祝いかな?」

 女性に抱かれた赤ちゃんの写真を見つけた。ママも居る。だったら黒崎も来ているだろう。そして、赤ちゃんを抱っこした女性と並んで写っている、拓海さんと晴海さんの写真があった。さらにページをめくっていくと、女性から口元を拭かれている黒崎の写真を見つけた。お手伝いさんだろうか。この家に来るまで、お手伝いがお母さんがわりだったと黒崎が言っていた。この家に来てからもそうだ。そして、拓海さんがいた。

「拓海さんとの初対面は6歳の時だって言っていたけど。覚えていなかったみたいだな。4歳だもんね。大人ばっかりのところに来て、びっくりしていなかったかな?」

 黒崎の小さいときは引っ込み思案だったという。こんなに大勢の中では戸惑ったかもしれない。アルバムの中では、よく黒崎が写っている。しかし、拓海さんや晴海さんと写ったものはない。そして、どの写真にも、お手伝いさんらしい女性と写った写真ばかりだ。ママとは一枚だけある。さっきの赤ちゃんを抱いた女性がいる。菜々子さんと書かれていて驚いた。

「早瀬さんのお母さんだ!それなら、赤ちゃんは早瀬さんじゃないかな?ここに来ていたんだなあ」

 もしかしたら純白さんもいるかもしれない。そう思ったが、それらしい人を見つけることができなかった。そして、胸の鼓動が高鳴った。バーテルスさんに似ている人が写っていたからだ。

「まさかフェリックスさん?早瀬さんのお母さんとは別れているはずなんだけど」

 2人が一緒に写っている物は一枚もない。まさか呼ぶわけがないだろうと思った。バーテルスさんの親戚の人だろうと思った。

「あ、カズ兄さん……」
「おまたせ。良い物は見つかったか?」
「アルバムを見つけたよ。ガーデンパーティーのやつみたいだよ」
「へえーー」

 電話を終えた一貴さんが部屋に入ってきた。そして、開いているアルバムを見て驚いている。早瀬さんの赤ちゃんの時の写真だと分かったからだ。一貴さんもいるだろうか。それを聞くと、覚えていない光景だそうだ。俺達は2人並んで座り、アルバムをめくっていった。
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