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珈琲の匂いで目が覚めた。足元の小さな灯りだけが付けられていて、部屋の中がオレンジ色に染まっている。ギシッと音がした後、ベッドが沈んだ。顔に温かいものが触れている。目を開けると、早瀬から背中を撫でられていた。
「裕理さん?」
「……身体はどう?」
「大丈夫だよ。ちょっとダルいだけ。明日は土曜日だし……」
「……どこか行きたい場所はあるのか?連れて行く約束をしていた」
どこがいいかな?せっかくだからと思いながらも、身体を休めてもらいたい。しかし、早瀬は納得しないだろうから、近場でゆっくりできる場所がいいだろう。あれこれと考えていると、早瀬が何かを思い出したように笑った。
「ここへ引っ越してきた時、何でも欲しいものをプレゼントする約束をしたぞ。君に嫌なことをしたから。あれから教えてもらっていないぞ?思いついたのか?」
「ウーン。マジで思いつかないんだ」
「マジカル少女ミカリンの、クルクルステッキでも構わないぞ?」
「ぷぷぷっ。クレーンゲームにしかないんだよ。実寸大は非売品なんだ」
「そうか。そこへチャレンジに行こうか。明日か明後日」
「そうだね!そうしようよ。ご飯も食べて……、映画も観ようよ」
「これからたくさんデートをしよう」
「へへへ……」
すがりつくようにして抱きついた。そこで欲しいものを思いついた。物ではなくて、気持ちというものだろう。早瀬は俺のことを見るときに、誰かを重ねている気がしていた。本人は否定するが、やっぱり存在しているだろう。いつか俺のことだけ見てくれればいいと思ったが、欲張りたくなった。
「裕理さん。欲しいものを思いついたよ。……”もの”じゃないけど」
「どんなものだ?」
「俺のことだけ見てほしい。誰かのことを重ねるのは仕方がない。でもさ、寂しいんだ。たまにしか重ねてほしくない。それ以外は、俺のことだけ見てよ」
「悠人。俺が重ねているのは昔の自分だ。親の目を気にしてばかりいて、音楽をやることで自由になった。でも、それを捨てたようなものだ。君には自由になってもらいたい」
「ふむふむ……」
「君は俺とは違う人間だ。代償にしていた事は自覚している。今は違う。夢を叶える手伝いがしたい。君のことを見ている」
「へへへ……」
これでスッキリした。ここに居るのは、31歳の早瀬裕理という男だ。困ったような戸惑ったような、許しを乞うような目をしている。こんな顔をさせたくないのに、誤解をさせてしまった。せっかくの誕生日なのに、ごめんねと思った。
「もうすぐで裕理さんが生まれた時間だよ。誕生日おめでとう!これで、”31歳の早瀬裕理”が生まれたんだよ!さっきまでは、30歳のユーリっていう男の子、今のあなたは”早瀬裕理”。……いろんな顔を持っている人。……全部を否定しないで。いろんな面があるからいいんだよ。……可視光線みたいだよ。光は波長の長さでいろんな色になるんだ。自分が”赤”に見えても、隣の人は、”橙色”かもしれない。黄色の人もいるかも。何が正解なのか、答えを出すことが全部じゃないって分かったんだ。俺にとっても誕生日かも」
「はあ……」
「んんー?どうしたのかなー?お兄さんに言ってごらんよ」
「どっちが年上なのか分からない」
「今日は俺の方が年上だよ。どっちでもいいんだけど。日付が変わらないうちにプレゼントを渡したいんだ。時計を気にしてたのは、それが理由だよ」
どっこいしょっと。起き上がって立ち上ろうとすると、腰に力が入らなくて転がってしまった。ベッドに顔を突っ伏す体勢になり、せっかくの良いムードが台無しになった。そして、早瀬からプレゼントをどこに置いてあるのかと聞かれて、楽器部屋にあると答えた。取りに行ってくれるそうだ。寝室を出て行く早瀬の後ろ姿を見つめた。
そして、足音が聞こえてきた後、ドアが開かれた。入ってきたのは、31歳の早瀬だ。嬉しそうにプレゼントを開けている姿を、じっと見つめた。プレゼントのお返しは、俺へのキスだ。さらに、エロいことを希望された。さすがにやめてくれと言い、ベッドから蹴り出してやった。
「裕理さん?」
「……身体はどう?」
「大丈夫だよ。ちょっとダルいだけ。明日は土曜日だし……」
「……どこか行きたい場所はあるのか?連れて行く約束をしていた」
どこがいいかな?せっかくだからと思いながらも、身体を休めてもらいたい。しかし、早瀬は納得しないだろうから、近場でゆっくりできる場所がいいだろう。あれこれと考えていると、早瀬が何かを思い出したように笑った。
「ここへ引っ越してきた時、何でも欲しいものをプレゼントする約束をしたぞ。君に嫌なことをしたから。あれから教えてもらっていないぞ?思いついたのか?」
「ウーン。マジで思いつかないんだ」
「マジカル少女ミカリンの、クルクルステッキでも構わないぞ?」
「ぷぷぷっ。クレーンゲームにしかないんだよ。実寸大は非売品なんだ」
「そうか。そこへチャレンジに行こうか。明日か明後日」
「そうだね!そうしようよ。ご飯も食べて……、映画も観ようよ」
「これからたくさんデートをしよう」
「へへへ……」
すがりつくようにして抱きついた。そこで欲しいものを思いついた。物ではなくて、気持ちというものだろう。早瀬は俺のことを見るときに、誰かを重ねている気がしていた。本人は否定するが、やっぱり存在しているだろう。いつか俺のことだけ見てくれればいいと思ったが、欲張りたくなった。
「裕理さん。欲しいものを思いついたよ。……”もの”じゃないけど」
「どんなものだ?」
「俺のことだけ見てほしい。誰かのことを重ねるのは仕方がない。でもさ、寂しいんだ。たまにしか重ねてほしくない。それ以外は、俺のことだけ見てよ」
「悠人。俺が重ねているのは昔の自分だ。親の目を気にしてばかりいて、音楽をやることで自由になった。でも、それを捨てたようなものだ。君には自由になってもらいたい」
「ふむふむ……」
「君は俺とは違う人間だ。代償にしていた事は自覚している。今は違う。夢を叶える手伝いがしたい。君のことを見ている」
「へへへ……」
これでスッキリした。ここに居るのは、31歳の早瀬裕理という男だ。困ったような戸惑ったような、許しを乞うような目をしている。こんな顔をさせたくないのに、誤解をさせてしまった。せっかくの誕生日なのに、ごめんねと思った。
「もうすぐで裕理さんが生まれた時間だよ。誕生日おめでとう!これで、”31歳の早瀬裕理”が生まれたんだよ!さっきまでは、30歳のユーリっていう男の子、今のあなたは”早瀬裕理”。……いろんな顔を持っている人。……全部を否定しないで。いろんな面があるからいいんだよ。……可視光線みたいだよ。光は波長の長さでいろんな色になるんだ。自分が”赤”に見えても、隣の人は、”橙色”かもしれない。黄色の人もいるかも。何が正解なのか、答えを出すことが全部じゃないって分かったんだ。俺にとっても誕生日かも」
「はあ……」
「んんー?どうしたのかなー?お兄さんに言ってごらんよ」
「どっちが年上なのか分からない」
「今日は俺の方が年上だよ。どっちでもいいんだけど。日付が変わらないうちにプレゼントを渡したいんだ。時計を気にしてたのは、それが理由だよ」
どっこいしょっと。起き上がって立ち上ろうとすると、腰に力が入らなくて転がってしまった。ベッドに顔を突っ伏す体勢になり、せっかくの良いムードが台無しになった。そして、早瀬からプレゼントをどこに置いてあるのかと聞かれて、楽器部屋にあると答えた。取りに行ってくれるそうだ。寝室を出て行く早瀬の後ろ姿を見つめた。
そして、足音が聞こえてきた後、ドアが開かれた。入ってきたのは、31歳の早瀬だ。嬉しそうにプレゼントを開けている姿を、じっと見つめた。プレゼントのお返しは、俺へのキスだ。さらに、エロいことを希望された。さすがにやめてくれと言い、ベッドから蹴り出してやった。
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