回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 12時半。

 午前中の講義は予定通りに進行した。ここからは、昼休憩中の参加者を見る時間だ。チームごとに分かれて順番に休憩を取る。黒崎と平田が会場に残り、俺と枝川が控え室で待機し、昼食を取っている。

 これにはいくつかの理由がある。休憩中の参加者の態度を見ること、もめ事をおさめること、ルール違反者を確認することだ。

 参加者同士の連絡先の交換を禁止しているが、この時間に行われることが多い。2年前までは、他企業のように禁止していなかった。今年からは方針を変えた。

 それは、ある企業で問題が起きたからだ。参加者同士が無理やりに交換して、もめ事に発展したこと、ストーカーまがいのことも起きたからだ。インターンシップ中は責任があるため、終わってから個人間の付き合いをしてもらう。

「枝川。もっとゆっくり食べろ。長丁場だぞ」
「早瀬代理。夏樹君のまわりが人だかりになって、平田が張り付いています。フォローに入りたいです」
「横井さんに様子を見てもらう。……横井さん。平田のフォローに回ってくれないか?休憩を30分延長して取るように」
「はい!」

 これからオフィスに戻る社員に頼んだ。長丁場になることは理解しているため、臨機応変に対応している。今回は全体のリーダーとして、全体をまわす。

「悠人君に連絡しないんですか?待っていますよー?」
「悠人のビデオ通話を見るのが目的だろう?」
「イケメンになったじゃないですか。可愛い系だったのに。見せてください」
「電話にする」
「手出しはしません」
「俺のものだ」

 枝川は恋人探しに余念がない。いい奴だが気が多いため、相手に信用されずに恋人候補にしてもらえない。今もこうして人のパートナーに興味を持っている。

 ラインを開くと、悠人からのメッセージが入っていた。今期に取っている授業が終わり、冬休みに入っている。昼食は作り置きのものや、本人が作って食べている。電話をかけるとすぐに出た。待っていてくれたのか?

「……もしもしーー」
「昼休憩に入った。もう食べているのか?」
「うん。スパニッシュオムレツが美味しいよ。温野菜サラダも。卵焼きを作ったよ」
「たまごだらけか」
「継続は力なり。端っこが柔らかくできたよ」
「……明日の朝が楽しみだ」
「ビデオ通話にしないの?」
「ここに枝川がいるから見せたくない」
「……へへへ」

 そこへ、枝川の視線が動き、椅子から立ち上った。平田が入って来たからだ。何か起きたのか?悠人に断りを入れて、電話を切った。

 控室を出ながら、平田から話を聞いた。2人は同じDグループだ。山岡という学生からしつこく連絡先を聞かれたのが、吉川という女子学生だ。

 吉川が毅然として断ると、大学つながりの複数の名前を出してきた。おまけに、SNSに無断で写真を投稿されたと相談があった。さすがにやりすぎだ。もめ事第1号の氏名を確認した。

「枝川、会場内をチェックしてくれ」
「分かりました」 
「O大の山岡達哉か。本人はどうしている?」
「知らぬふりです」
「ははは……。枝川、経歴を覚えているか?」
「はい。山岡君は……」

 お互いに渇いた笑い声がもれた。平田も一昨年に似たようなやらかしたからだ。インターンシップの参加中にで“就活であい”という名のことをした。その後、平田は相手に平謝りをして、グループワークでは成果を出した。その結果、入社している。

 今回は注意するだけの話だろうか?何かが違う予感がする。新聞沙汰はご免だ。企業側が迷惑することを理解していないか、どうでもいいと思っているのだろう。

 平田が夏樹のそばへ向かった。たしかに人だかりが出来ており、夏樹が何かを断っている様子だ。如月が周りの参加者をたしなめているようだ。その中には、理久の姿があった。

(……ここで行くわけにはいかない。反省させよう。山岡は?ああ、他の子に声をかけているのか。……こっちに気づいたのか?この距離でか?)

 山岡が顔をひきつらせたのは、間違いなく俺のことに気づいたからだ。吉川がホッとした顔をしている。

「山岡達哉君だね?話を聞かせてもらう。こちらへ」
「はい……」

 返事だけは大人しい素振りをしている。中身は反対だろう。彼を連れて、後方の壁際に向かった。
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