回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 控え室に入り、午後のグループ編成の段取りに入った。これは毎回のことだ。エントリーシートと面接時の印象で、相性が良さそうな者同士を組み合わせている。実際には差があることと、上手くいくわけがないケースがある。黒崎がペンを走らせた後、グループ変更を指示した。

「……枝川。佐伯君については、Cグループに入れる。夏樹と如月君と同じグループだ。この3人はうまくはずだ」
「……承知しました。午後からは1名減って、79名での実施と……」

 結局、行き過ぎたナンパをした山岡達哉は参加を取りやめた。ほんの数分、話しただけだった。反省の色なしで、親の地位も口にしていた。ある会社の経営者の息子であり、国会議員が身内にいるらしい。

 本人には教えていないが、迷惑を掛けられた吉川は、ある企業の重役の娘だ。豊栄企画の取引先だったはずだ。あのまま止めない方がよかったと思うのは、個人としての感情だ。

(夏樹君があんな目に遭った。気づかないでよかった…。悠人も、ああいう類の奴が近づいてくるタイプだ。もっと気をつけさせないとな。白澤の件もあった……)

 夏樹が高校時代に、ある大学生から車に押し込まれそうになり、乱闘になった事があった。それが、今日参加していた山岡だ。あの事件の後で、親戚と養子縁組をして姓が変わったと聞いたが、また姓を戻したらしい。あの大学生の名前は山岡達也だった。ここへのエントリーシートに記載されていたのは、山岡達哉だ。名前の字が違う。それについては事情があった。子供の頃に病気をして、普段使う名前の字を変えていたという話だ。夏樹の事件の時は、字を変えていたそうだ。エントリーシートには本名だったというわけだ。

 俺も黒崎も、彼の参加に気づかなかった。もちろん夏樹も。この大勢の中で紛れて、すぐに分からない。黒崎は冷静にしているが、気が気ではないはずだ。山岡に参加を辞退させる事ができて、かえって都合が良かった。

 すると、司会進行役からのアナウンスが会場内に響き渡った。

「……参加者80名のうち、急用のため、お一人が帰られましたので、79名での実施となります。人数が少ないグループが出てきますが……」

 参加者が一人帰った。それを告げられた参加者達が囁き合い始めた。さらにグループ編成が行われたことで、会場内がざわついた。理久がどうしているだろうか。夏樹や如月と同じグループにしてある。

 会場内では、新しいグループに移動して、笑顔を浮かべる参加者達を見かけた。その中には理久の姿があり、新しいグループから笑顔で受け入れられていた。枝川の方を向くと、軽く頷き返された。このグループ編成で良かったようだ。これで残りの日程を続けていく。良かった。理久や参加者達を見て、そう思った。
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