回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 ザワザワ、ガーーー、ガチャガチャ。

 ショッピングモール・カンタレラへ到着した。クリスマス一色のモール内には、定番のクリスマスソングがエンドレスで流れている。

「クリスマスソングって、失恋ものが多くない?もう居ないのにって歌っているのが悲しいよ……」
「そう言われるとそうだね。今始まったのはハッピーなものだ。……“裕理さんのことが欲しい”と歌ってごらん」
「俺が欲しいのは角煮マンと、ミカリンステッキの実寸大だよ」
「可愛くないなあ。俺が歌ってやろう」

 早瀬が鼻歌まじりで歌い始めたことで、吹き出しそうになった。しかしそれはすぐに消え去り、歌のうまさに驚いた。軽く歌ってここまで歌えるなら、本気を出すと、どうなるのか?

「上手すぎるよ。ボーカルの誘いはなかったの?」
「ボーカルが脱退して居ない時は歌っていたよ。でも、ギターの演奏に集中したくて、ヘルプ程度だった」
「ほお……」

 早瀬の新しい一面が見えた。毎月のように驚いているから、何かの冗談のようだ。それを口にすると、同じようなことを言い返された。

「君もビックリ箱だよ。ミカリンごっこ、ブルーキック。歌だって上手だ。ソロではブルースをやるといい」
「佐久弥にも言われたよ。歌声はハスキーなんだってさ。自分だと分からないんだよ。夏樹も言ってた」
「外見は愛くるしいのに、歌声と演奏がシブくて、とにかくカッコいい。ギャップに驚くよ」

 歩いているうちに、目当てのドラッグストアに到着した。日頃から使っているものは、ネットで注文している。この時期だけ使うものを目指して買いに来た。早瀬の段取り術である。

 洗剤のコーナーへ来た。たまにメーカーを変えている。早瀬は綺麗好きだから、こういう物には敏感だ。俺は匂いフェチだから大歓迎だ。

 商品棚には”オススメ”と書かれていたり、香りのサンプルが置かれたりしている。匂いが強いものがあるから、要注意だ。柔軟剤だと、乾いた後でも匂う商品がある。

 ネットで評判がいいという洗剤のコーナーへ来た。たしかに目新しいものが置いてある。海外モノやネーミングが面白いものがある。お試しサイズがないから、一発勝負だ。

「これなんかどう?グリーン系」
「見たことがない商品だ。『過去も流せるシリーズ』か。変わったネーミングだ」
「クンクン……。どこかで嗅いだことがあるんだ」

 どこだったろう?あれこれ思い出していると、夏樹の顔が浮かんだ。彼が着ているパーカーから同じく匂いがしていた。

「夏樹が使っていると思う。タオルハンカチとか、パーカーとか」
「さすがだね。ここにあるなら連絡しよう」
「どこにー?」
「夏樹君へ。ドラッグストアに買い物があると言っていたよ。電話をかけてくれる?」
「オッケー。……もしもし。なつきー。外へ買い物に出て来たんだけどね……」

 電話をかけると、庭にいるようだった。ドラッグストアに来ていることと、過去も流せるシリーズがあること、そして、ホッカイロは要らないか?とも伝えた。

「他にも要る物があったら買っていくよ」
「助かるよ~。部分洗いの『黒歴史』が欲しい。あるかな?」
「ちょっと待ってねー。……裕理さーん。『黒歴史』はある?……あるって。他には?」
「えーっとね。柔軟剤の『エプロン姿』も欲しい」
「あるよー。買っていくよ」
「ありがとう。……そうだ。ミカンが沢山あるから、持って帰ってね」
「はーい。じゃあねー」

 電話を切った後、さっそく商品をカゴに入れた。うちの分でも『エプロン姿』を買うことにした。

 これで年末の買い出しが終了した。お互いの両手には荷物を下げている。洗剤やホッカイロ、新年から使うタオル類や布きんなどだ。

 ザワザワとしたフロア内を歩いていると、入浴剤の匂いがしてきた。通りかかったショップは、バスグッズの専門店だ。フルーツや野菜を使った石鹸や、入浴剤を売っている。

「悠人君。入ろうか?」
「荷物が多いからいいよ。今度にする」
「福袋を売っているぞ?見てみたい」

 早瀬がさっと店内に入って行った。早瀨はあまり興味が無いのを知っている。入ったのは、俺が好きだからだ。この照れくさい思いが、心を温かくさせた。

 お互いのことを思うがばかりに気持ちがすれ違っていたのに、今では大違いだ。乗り越えてよかったと思った。
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