回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 カタ……。

 ドキドキしながら箱を開くと、あの店で試着したデザインの指輪が入っていた。それを見て、一気に視界が波打って見えなくなった。すぐに刻印を見たいのに。そして、お礼を言いたいのに、早瀬のことがボヤけて見えない。

「ここまで感激してもらうと本望だ。さあ、付けてみよう」
「うぇーー」
「いい返事だ」

 テーブル越しに手を取られて、指輪が薬指に通されていく。天井からの照明に反射して輝いている。胸が痛くてたまらない。おまけに指には違和感がある。どうしたんだろう?早瀬が苦笑している。

「……痛くないか?」
「違和感があるよ。なんでだろう?」
「……むくんでいるんだな。手の全体がだよ」
「そっか。昨日からお茶ばっかり飲んでいたもん」
「……今日は入らないから、明日にしよう」
「げえええっ」
「……見てごらん。ここまでしか入らない」
「ひいいいいっ」

 たしかに言われた通りの状態だ。最後の関節の手前で交通渋滞をしている。ショックを受けていると、今着けているネックレスを外せと言われた。すぐに外して渡すと、指輪をチェーンへ通し始めた。何も飾りがないシンプルなものだから、指輪が目立つ。このために買ってくれたのか?

「裕理さーん。このネックレス、このためのやつ?」
「そのとおり。恥ずかしがって、指輪をつけないだろうと思ったからだ。その心配はなかったのか?」
「うん、ないよ!絶対につけるからね。たまにはチェーンに通して楽しむよ。……ありがとう」
「どういたしまして」
「あれ?もうつけているの?」

 いつの間にか、早瀬の薬指にも指輪がはめらていた。俺が庭を眺めている間だという。その早業にビックリした。

「裕理さん、パッパッとやるよね。段取りがいいよ。……うぇ」
「泣くか驚くか、どっちかにしようね」
「だって、うぇ……。なんでも……」
「段取りの良さは秘書時代に培ったものだ。大変な人のサポートをしていた」
「今は夏樹がケツを叩いているもんね。うぇ、うぇ」

 嬉しすぎて涙が落ちるし、お腹も鳴っている。沢山食べたから満腹に近いというのに。泣き笑いしながら食べていると、喉につっかえた。カッコ悪すぎる。

「けほっ、ごほ……」
「トントン」
「トン、トン……」
「はははははーーっ」
「もうっ、笑うなよーー」
「カッコ悪いぞーー」
「いいじゃん。お互い様だよ。今さらだよ」
「へえ?それなら圭一さんみたいに、下着一枚でウロつこうか?その姿で冷蔵庫の水を飲んでいるんだ」
「げえええっ。オジサンだよーー」

 夏樹から聞いていたが、マジでだったのか。さすがに早瀬はやっていない。男同士だが、どうも恥ずかしい気がする。

 さすがに満腹になった頃に、ケーキが運ばれて来た。それはミニサイズのもので、全部食べることができた。改めて、早瀬の段取りのよさに驚いた。

 楽しい時間を過ごした後、満腹になりすぎて動けなくなった。ヨロヨロと店から出て、早瀬から支えられてタクシーに乗り込んだ。目的地は我が家だ。
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