回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 午前4時。

 この時間に目が覚めるのは習慣というものだろう。夜に抱かれた後、翌朝も抱かれる日があるからだ。だいたいがこの時間に襲われる。そして、5時過ぎには起きる時間を迎えている。寝不足気味だ。

 今日はほんの3時間前に抱かれたばかりだ。会食で遅くなろうとも、早瀬の”欲”には変化がない。どんな生態系をしているのかと思う。

「悠人君、起きたのか?」
「いつもの習慣だよ。ふわあ~」
「この時間にも抱いているからね。しようか?」
「バカ!」

 両足で早瀬の身体を蹴って押しのけてやった。しかし、笑いながら覆いかぶさってきて、素晴らしい吸引力のキスを受け取った。これが掃除機なら売れそうだ。

「やめてよー。もう少し寝たいから」
「はいはい。今夜に備えておくよ。出張の前夜だし」
「一泊二日だよ。ひと晩だけだよ。それぐらい俺だって……」
「へええ?ひと晩だけの我慢か。いいことを聞いた」
「あああ……」 

 どうしよう?寝ぼけて本音が出てしまった。ニヤニヤ笑っているから、ますます恥ずかしくなった。毛布をかぶりベッドの隅の方へ移動した。しかし、あっさりと引き戻されてしまった。出ておいでと言われても、素直に出られない。笑われているからだ。

 毛布の隙間からチラッと見ると、早瀬がベッドから起き上がっていた。ベッドのスプリングが揺れた後、しんと静かになった。なぜならば、声をかけることなく出て行ったからだ。慌てて起きあがって追いかけた。黙ってどこかに行ってほしくない。同じ家で過ごしていてもだ。

 早瀬のことを追いかけて、キッチンで発見した。冷蔵庫から水を取り出していた。毎日の習慣の一つで、ダイニングの椅子に腰かけて飲んでいる。本格的に起きるということだ。3時間も寝ていなのに。

「もう少し寝たらー?30分でも……」
「二度寝すると調子が悪い。ソファーでダラダラするよ」

 君の方こそ寝ていろと言われた。まだ1時間はゆっくり出来るなら一緒に過ごしたい。しかし、もしかすると、一人で居たいのかもしれない。俺がいると、しゃべりたくなるだろう。ここは遠慮しよう。

「わかった。ベッドに戻るよ」
「遠慮なしに言いたいことを……、どうぞ。はいはい」
「一人でダラダラしたいだろ?ベッドにいるよ」
「おいでー」
「いいってば……」
「素直じゃない子は好きだよ。一緒に寝転がろう」
「いいよー?そうしたいなら」
「……ぷっ」

 抱きかかえられるようにして、ソファーへ移動した。寝転がった早瀬のうえにもたれ掛かった。しぶしぶやっているというふりをした。本当はこうしたかった。ゆっくりと頭を撫でられた。背中から伝わる早瀬の体温と、身体にかけているタオルケッドが温かい。

 ウトウトしていると、朝のニュースが始まった。いくつかの見出しが出ていて目で追っていると、黒崎製菓のものがあった。

「……『この時間のニュースです。黒崎製菓とワタベ電機の提携による効果……。3月期の第2四半期決算発表後を受けて……』」
「黒崎製菓、好調だねー、よかったね」
「おかげさまで。沈まずに済んだよ」
「大丈夫だろ?」
「さあねー。これからも分からないぞ?千尋製菓のニュースもあるぞ」
「え……」

 また悪いニュースだろうか?この企業は早瀬の実家に関係している。創業者者一族であり、祖父の弟が代表取締役社長を務めている。父親は専務取締役だ。その他にも、身内が役員として名前を連ねている。

 その代表取締役社長が引退することで、跡目争いが起きている。業績が落ちているなか、そのニュースが出てしまったことで、さらに悪影響を及ぼしてしまった。現在は大手企業への身売りが検討されているそうだ。
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