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夏樹は黒崎製菓グループの経営陣側としての勉強を始めている。お父さんから紹介された、村山さんという人が先生になっている。今回の事件のことが教材になり、危機管理と対処方法を考えてメールを送っていた。
もっと遠くに行くのかな?その世界が合っているのなら、俺の希望を押し付けられない。一緒に音楽をやりたいのだと。夏樹のことには憧れている。羨ましいと思ったこともある。実家の両親からも、黒崎家からも求められているからだ。
俺の場合は両親からは求められていない。祖母だけが居場所だった。目立たない存在の子供だった。家族が集まる場所でも隅っこの方にいる。居ないことにすら気がつかれない。
この話をした時、自分を貶めるようなことを言うなと、夏樹から叱られた。早瀬からもだ。今ではパートナーと親友、ミュージシャンとしても求められている。大丈夫だ。こうして考え込んでいるうちに、番組が進んでいた。
「あああーー、もうすぐ終わるよーー」
「『……オーープン・ザ・ドアーー!生まれ変わろうね!』……来週のミカリンは”友達がやって来た”……みんな見てねーー』」
きれいな旋律の曲が流れた後、放送が終わった。次のニュースの時間までは長いCMタイムだ。スマホで再放送分をチェックした。
「ふむふむ。今日は“新しい命”だったのかー。そうだ。絵本を読まないと……」
夏樹は絵本が好きで、自分でもストーリーを書いている。妹が生まれる話をすると、構想が浮かんだと話していた。読んでくれと頼まれている。早瀬が帰ってくるまで読もう。珈琲を飲みながら、パソコンを開いた。
添付ファイルを開くと、”神さまからのお願い”というタイトルがあった。登場人物の紹介欄もある。夏樹の実家がモデルだ。
「お父さん、お母さん、兄の伊吹、妹の万理。主人公が”夏樹”なのか。ふむふむ……」
次のページから物語が始まった。
「……夏樹と万理が生まれる前のお話です。2人はずっと兄妹で生まれています。神さまから、次のお母さんを選んでねと言われました。さっそく雲の上から眺めました。夏樹は弱い子なので、優しい家族の元へ生まれることが出来ます……。お父さん、お母さん、男の子の、3人家族を見つけました。とても優しそうな人たちです。……夏樹が万理に相談しました。『あの家の子に生まれたいね。キミはどう?……わたしもいい思う』……さっそく、神様に頼みに行きました。……しかし、2人同時に生まれることが出来ません。神さまからはこう言われました。『お母さんが大変だから、一人ずつにしてね』……と。どちらが先に生まれるのか、ジャンケンをして決めました。……夏樹が勝ったので、先に天国から出発しました。夏樹が生まれた後、万理が神さまに頼みに行きました。……『今から行ってもいい?』『2年後にしてね』『待てないの!』……神さまは困りました。優しくて、押しが弱いからです。……万理は、せっかちな性格をしています。天国から出発した後、夏樹とは1歳違いの兄妹として、生まれました。お母さん達は忙しくなりましたが、おかげで仲良くなりました……。夏樹と仲良しになる男の子がいます。圭一という子です。……生まれる前に、神様から”なんとかお願いします”と頼まれて、”いいよ”と引き受けました。それは次のお話です。……つづく」
黒崎さんのことだと想像した。俺と似ている部分がある。音楽が好きなことと、子供時代に寂しい思いをしたことだ。いいや、もっと大変だろう。俺には祖母がいた。黒崎さんの場合は、可愛がってくれたお兄さんを、事故で亡くている。ずっと守ってくれた人だそうだ。寂しいのを我慢しているうちに怖い人になった。それは黒崎さん本人から聞いたことだ。
音楽の話がメインで、黒崎さんとはメールでやり取りをしている。とても可愛がってくれている。どこが怖い人だったのか?今とは違うと思った。早瀬が昔の姿を知っているが、聞かないようにした。
「夏樹と暮らし始めたからだよね。俺も裕理さんと暮らして楽しいもんなあ。ああ……。藍生は……」
妹のことが心配になった。大人になる前に、両親が亡くなったら?母方の祖父母がいるだろうが、いつまでも元気ではないだろう。
「そうか……。藍生には俺しかいないんだ。そっかー」
急に力が湧きてきた。守ると決めているが、さらにヤル気になってきた。俺しかないと分かったからだ。他の”誰か”がいない。求められるかもしれない。
「よっしゃー!あああ……」
すぐに両親が亡くなるわけではないのに。なんて縁起の悪いことを考えたのか。まあいいか。ポジティブな思考に切り替えて、ニュース番組を見始めた。
もっと遠くに行くのかな?その世界が合っているのなら、俺の希望を押し付けられない。一緒に音楽をやりたいのだと。夏樹のことには憧れている。羨ましいと思ったこともある。実家の両親からも、黒崎家からも求められているからだ。
俺の場合は両親からは求められていない。祖母だけが居場所だった。目立たない存在の子供だった。家族が集まる場所でも隅っこの方にいる。居ないことにすら気がつかれない。
この話をした時、自分を貶めるようなことを言うなと、夏樹から叱られた。早瀬からもだ。今ではパートナーと親友、ミュージシャンとしても求められている。大丈夫だ。こうして考え込んでいるうちに、番組が進んでいた。
「あああーー、もうすぐ終わるよーー」
「『……オーープン・ザ・ドアーー!生まれ変わろうね!』……来週のミカリンは”友達がやって来た”……みんな見てねーー』」
きれいな旋律の曲が流れた後、放送が終わった。次のニュースの時間までは長いCMタイムだ。スマホで再放送分をチェックした。
「ふむふむ。今日は“新しい命”だったのかー。そうだ。絵本を読まないと……」
夏樹は絵本が好きで、自分でもストーリーを書いている。妹が生まれる話をすると、構想が浮かんだと話していた。読んでくれと頼まれている。早瀬が帰ってくるまで読もう。珈琲を飲みながら、パソコンを開いた。
添付ファイルを開くと、”神さまからのお願い”というタイトルがあった。登場人物の紹介欄もある。夏樹の実家がモデルだ。
「お父さん、お母さん、兄の伊吹、妹の万理。主人公が”夏樹”なのか。ふむふむ……」
次のページから物語が始まった。
「……夏樹と万理が生まれる前のお話です。2人はずっと兄妹で生まれています。神さまから、次のお母さんを選んでねと言われました。さっそく雲の上から眺めました。夏樹は弱い子なので、優しい家族の元へ生まれることが出来ます……。お父さん、お母さん、男の子の、3人家族を見つけました。とても優しそうな人たちです。……夏樹が万理に相談しました。『あの家の子に生まれたいね。キミはどう?……わたしもいい思う』……さっそく、神様に頼みに行きました。……しかし、2人同時に生まれることが出来ません。神さまからはこう言われました。『お母さんが大変だから、一人ずつにしてね』……と。どちらが先に生まれるのか、ジャンケンをして決めました。……夏樹が勝ったので、先に天国から出発しました。夏樹が生まれた後、万理が神さまに頼みに行きました。……『今から行ってもいい?』『2年後にしてね』『待てないの!』……神さまは困りました。優しくて、押しが弱いからです。……万理は、せっかちな性格をしています。天国から出発した後、夏樹とは1歳違いの兄妹として、生まれました。お母さん達は忙しくなりましたが、おかげで仲良くなりました……。夏樹と仲良しになる男の子がいます。圭一という子です。……生まれる前に、神様から”なんとかお願いします”と頼まれて、”いいよ”と引き受けました。それは次のお話です。……つづく」
黒崎さんのことだと想像した。俺と似ている部分がある。音楽が好きなことと、子供時代に寂しい思いをしたことだ。いいや、もっと大変だろう。俺には祖母がいた。黒崎さんの場合は、可愛がってくれたお兄さんを、事故で亡くている。ずっと守ってくれた人だそうだ。寂しいのを我慢しているうちに怖い人になった。それは黒崎さん本人から聞いたことだ。
音楽の話がメインで、黒崎さんとはメールでやり取りをしている。とても可愛がってくれている。どこが怖い人だったのか?今とは違うと思った。早瀬が昔の姿を知っているが、聞かないようにした。
「夏樹と暮らし始めたからだよね。俺も裕理さんと暮らして楽しいもんなあ。ああ……。藍生は……」
妹のことが心配になった。大人になる前に、両親が亡くなったら?母方の祖父母がいるだろうが、いつまでも元気ではないだろう。
「そうか……。藍生には俺しかいないんだ。そっかー」
急に力が湧きてきた。守ると決めているが、さらにヤル気になってきた。俺しかないと分かったからだ。他の”誰か”がいない。求められるかもしれない。
「よっしゃー!あああ……」
すぐに両親が亡くなるわけではないのに。なんて縁起の悪いことを考えたのか。まあいいか。ポジティブな思考に切り替えて、ニュース番組を見始めた。
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