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12時半。
早瀬が昼食を作ってくれた。ほうれん草とチーズとトマトのオムレツだ。すでにオムレツ職人になろうとしている。バリエーションが豊富だから、インスタグラムをやればいいのに。俺が作った味噌汁の写真を撮るくせに、自分の料理は取ろうとはしない。
「はふーーっ。トマトが好きになったよー」
「食べられる野菜が増えたね」
「インスタを始めたらいいのに。レシピ投稿サイトへ出すとか」
「インターネットは苦手だ。夏樹君も同じだろう?」
「そのとおりだよ。そうそう、夏樹達と好きな童話のことを話してたんだよ。夏樹が気に入っているのは、ラプンツェルだよ。……知っている?女の子が塔に閉じ込められる話。ずっとそこで育ってきて……」
「髪の毛を伸ばして垂らすんだろう?ロープがわりにして、王子様に登ってきてもらう」
「そうだよ。よっぽど好きになったんだなーって、森本達と学食で話してたんだ。……でさー、森本が、高校生の時の夏樹が言ったことを教えてくれたんだ。なんて言ったと思う?」
「分からないな。ひねくれたことだろうけど」
「”そこまでして誰かと話したいのって、どんな気持ちだろう?“って言ったそうだよ。絵本が好きなのは、現実を語らずに夢のある話がいいからなんだって。返す言葉がなかったよー」
「はははっ。圭一さんと上手くいくのが分かる」
「マジで気難しい子だったんだね。今もそういうところはあるけど」
昔から優しい子なんだとは分かる。たしかに友達が出来にくいタイプだろう。それでもいいって割り切っていたなんて。カッコいいじゃないか。
明日は夏樹との予定がある。遠藤さんの誘いで、スタジオ見学に連れて行ってもらう。来日しているギタリストに会えるかもしれない。取材の一部で、演奏をするそうだ。生で聴けるだけでも飛び上がるほど嬉しい。明日は大学が休講だ。もし授業があったとしても、サボっていたかも知れない。
「夏樹君は明日何時に迎えに来てくれるんだ?」
「9時だよ。気を遣ってくれているよ……」
「お互い様だと言ってくれただろう」
「26日までは出てこないよね?バンドコンテストの当日だよ」
白澤さんのことだ。悪質なため勾留されている。示談にも応じてもらえないほどだ。破れかぶれの状態だと思う。八つ当たりをしてくる恐れがある。会社も退職だろう。その現実が分かっていながら起こしたことが恐ろしい。
しばらく気を付けることにした。夏樹や森本達が協力してくれている。夏樹も不安なことがあるため、一緒に車で移動している状況だ。泊まりに行った日に見かけた、あの2人が関係している。その件を話していると、夏樹から電話が入った。
「もしもしー?。どうしたの?」
「……悠人、ごめん。明日の見学に行けなくなった。黒崎さんがお母さんのところに行くんだ。……向こうでトラブルが起きて」
「遠藤さんに伝えておくよ。大丈夫?トラブルって」
「じつはね……」
「ええ?そんな……」
黒崎さんのお母さんはお父さんと離婚した後、再婚している。黒埼さんが小学6年生の時だった。妹と弟が生まれている。お母さんが再婚相手から暴力を振るわれたそうだ。黒崎さんや夏樹と電話で話している時にだ。これから黒崎さんが飛行機で向かい、たぶんお母さんのことを都内へ連れて来ることになりそうだと言った。妹と弟も連れて来るはずだから、宿泊先の段取りで忙しそうだ。
プツ。電話を切った直後、また着信が入った。佐伯久弥と表示されている。しぶしぶ電話に出ると、今から一時間ぐらい、かくまってくれと言われた。
「さくやー、何をしたんだよ?」
「……俺はしていない。メンバーだ。報道前だよ」
「裕理さーん。佐久弥がねー」
「オッケー。入ってもらえ」
一体何があったのだろうか。慌ただしい。今日も外は寒いから、珈琲を用意しようとキッチンへ行った。
早瀬が昼食を作ってくれた。ほうれん草とチーズとトマトのオムレツだ。すでにオムレツ職人になろうとしている。バリエーションが豊富だから、インスタグラムをやればいいのに。俺が作った味噌汁の写真を撮るくせに、自分の料理は取ろうとはしない。
「はふーーっ。トマトが好きになったよー」
「食べられる野菜が増えたね」
「インスタを始めたらいいのに。レシピ投稿サイトへ出すとか」
「インターネットは苦手だ。夏樹君も同じだろう?」
「そのとおりだよ。そうそう、夏樹達と好きな童話のことを話してたんだよ。夏樹が気に入っているのは、ラプンツェルだよ。……知っている?女の子が塔に閉じ込められる話。ずっとそこで育ってきて……」
「髪の毛を伸ばして垂らすんだろう?ロープがわりにして、王子様に登ってきてもらう」
「そうだよ。よっぽど好きになったんだなーって、森本達と学食で話してたんだ。……でさー、森本が、高校生の時の夏樹が言ったことを教えてくれたんだ。なんて言ったと思う?」
「分からないな。ひねくれたことだろうけど」
「”そこまでして誰かと話したいのって、どんな気持ちだろう?“って言ったそうだよ。絵本が好きなのは、現実を語らずに夢のある話がいいからなんだって。返す言葉がなかったよー」
「はははっ。圭一さんと上手くいくのが分かる」
「マジで気難しい子だったんだね。今もそういうところはあるけど」
昔から優しい子なんだとは分かる。たしかに友達が出来にくいタイプだろう。それでもいいって割り切っていたなんて。カッコいいじゃないか。
明日は夏樹との予定がある。遠藤さんの誘いで、スタジオ見学に連れて行ってもらう。来日しているギタリストに会えるかもしれない。取材の一部で、演奏をするそうだ。生で聴けるだけでも飛び上がるほど嬉しい。明日は大学が休講だ。もし授業があったとしても、サボっていたかも知れない。
「夏樹君は明日何時に迎えに来てくれるんだ?」
「9時だよ。気を遣ってくれているよ……」
「お互い様だと言ってくれただろう」
「26日までは出てこないよね?バンドコンテストの当日だよ」
白澤さんのことだ。悪質なため勾留されている。示談にも応じてもらえないほどだ。破れかぶれの状態だと思う。八つ当たりをしてくる恐れがある。会社も退職だろう。その現実が分かっていながら起こしたことが恐ろしい。
しばらく気を付けることにした。夏樹や森本達が協力してくれている。夏樹も不安なことがあるため、一緒に車で移動している状況だ。泊まりに行った日に見かけた、あの2人が関係している。その件を話していると、夏樹から電話が入った。
「もしもしー?。どうしたの?」
「……悠人、ごめん。明日の見学に行けなくなった。黒崎さんがお母さんのところに行くんだ。……向こうでトラブルが起きて」
「遠藤さんに伝えておくよ。大丈夫?トラブルって」
「じつはね……」
「ええ?そんな……」
黒崎さんのお母さんはお父さんと離婚した後、再婚している。黒埼さんが小学6年生の時だった。妹と弟が生まれている。お母さんが再婚相手から暴力を振るわれたそうだ。黒崎さんや夏樹と電話で話している時にだ。これから黒崎さんが飛行機で向かい、たぶんお母さんのことを都内へ連れて来ることになりそうだと言った。妹と弟も連れて来るはずだから、宿泊先の段取りで忙しそうだ。
プツ。電話を切った直後、また着信が入った。佐伯久弥と表示されている。しぶしぶ電話に出ると、今から一時間ぐらい、かくまってくれと言われた。
「さくやー、何をしたんだよ?」
「……俺はしていない。メンバーだ。報道前だよ」
「裕理さーん。佐久弥がねー」
「オッケー。入ってもらえ」
一体何があったのだろうか。慌ただしい。今日も外は寒いから、珈琲を用意しようとキッチンへ行った。
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