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16-3(早瀬視点)
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22時半。
悠人のことを寝かしつけた。まるで子ども扱いだが、そうしたくなる。トラのユーリに右手を乗せた状態で、スースーと寝息を立てている。もう少し様子を見ていよう。
するとその時だ。ベッドから降りた時に、父からの着信が入った。そっと寝室から出てリビングに移動した。書斎には行かない。悠人が探しに来た時に遠慮をするからだ。
「……お父さん。どうした?」
「……悠人君の怪我の具合が気になったからだ。たった一日じゃ変わりないだろうが……」
「痛みが引いたようだ。熱も下がった。かなり疲労があったようだ」
「そうか。こういう時に悪いが、話したいことが三つある。……次の代表取締役社長の候補者のことだ。島田一貴さんと交渉中だ」
島田一貴。プラセルコーポレーションの代表取締役社長だ。黒崎の4番目の兄でもある。黒崎製菓グループを避けて、自分で事業を立ち上げた人だ。本人は千尋製菓に来ることに乗り気ではない。
「……あっさりと断られた」
「……ははは」
身内で争うという、まるで昔の体制の企業だ。沈んだも同然の状況から浮き上がった。これから新しい船に乗り込むところだ。期待されていたかじ取り役が逃げたのは仕方がない。千尋製菓を選ばなくても、自分の城がある。
「僕は途方にくれた。次の代表取締役社長に推されているが、そのつもりはない。すでに引退する年だ」
「まだ若いだろう?俺に来いということか?そう言っているのはお母さんか?」
「企業としてお前を呼びたい。取締役のひとりに推されている。その気はないだろう?」
「全くない。圭一さんが49歳で引退するまで支える。その後も残る」
「これで一つ目の話が終わった。二つ目は圭一君の妹さんのことだ」
「彼女がどうしたんだ?」
この場で名前が上がることに違和感がある。黒崎とは父親違いの妹だとされているが、黒崎隆氏が実父だ。親子鑑定の必要がない程に似ている。会話の中の反応や考え方は、若い頃の黒崎と同じだ。夏樹と悠人から話を聞いて、そのままじゃないかと思って驚いた。
「早瀬家としては、お前と彼女の結婚を希望している」
「ははは……。笑いすぎた。悠人が起きる」
「タッグを組みたい目的だ」
「いつの時代だよ?」
「圭一君のお母さんが立ちあげた、モデルスクールが影響している。うちがスポンサーになっただろう。その縁だ。どうしても、安定した船にすがりつきたいわけだ」
「お母さんとは離婚調停中だろう?その関係か?」
「彼女の方から調停を申し立てられた。はははは……」
「好きにさせておけばいいよ。今度はこんな話か?お父さんが圭一さんのお母さんと再婚しろと」
「先方から願い下げだ。三つめは君のお父さんのことだ。どこの誰か教えていない。聞くか?」
「聞かない。いや、これだけは聞いておきたい。黒崎隆氏じゃないだろう?」
「違うよ。ははは!分かっているだろう?」
「そうだね、あの人が兄貴なのは嫌だ。お母さんから結婚のことで口出しされなくなった。理由は悠人のことか?」
「森井物産の関係があるかもしれない。悪い考え方だ。うちの家を出て正解だ」
「お父さんが出してくれたんだよ。ありがとう」
「そろそろ切る。デビューステージは必ず観に行く」
「伝えるよ。大げさにしなくても会えばいいのに。悠人はふっくらした人が好きだよ」
「もっとふっくらしておこう。おやすみ……」
通話を終えた後、寝室へ行った。悠人が寝返りを打っていたからホッとした。痛み止めの効果があるだろうが、寝息を立てたままでいる。回復に近づいているのだろう。
トラのユーリとのツーショットをカメラに収めた自分は重症だ。悠人に参っている。そっと寝室から出て、朝食の下ごしらえを始めた。かぼちゃグラタンとサラダを食べさせるために。
悠人のことを寝かしつけた。まるで子ども扱いだが、そうしたくなる。トラのユーリに右手を乗せた状態で、スースーと寝息を立てている。もう少し様子を見ていよう。
するとその時だ。ベッドから降りた時に、父からの着信が入った。そっと寝室から出てリビングに移動した。書斎には行かない。悠人が探しに来た時に遠慮をするからだ。
「……お父さん。どうした?」
「……悠人君の怪我の具合が気になったからだ。たった一日じゃ変わりないだろうが……」
「痛みが引いたようだ。熱も下がった。かなり疲労があったようだ」
「そうか。こういう時に悪いが、話したいことが三つある。……次の代表取締役社長の候補者のことだ。島田一貴さんと交渉中だ」
島田一貴。プラセルコーポレーションの代表取締役社長だ。黒崎の4番目の兄でもある。黒崎製菓グループを避けて、自分で事業を立ち上げた人だ。本人は千尋製菓に来ることに乗り気ではない。
「……あっさりと断られた」
「……ははは」
身内で争うという、まるで昔の体制の企業だ。沈んだも同然の状況から浮き上がった。これから新しい船に乗り込むところだ。期待されていたかじ取り役が逃げたのは仕方がない。千尋製菓を選ばなくても、自分の城がある。
「僕は途方にくれた。次の代表取締役社長に推されているが、そのつもりはない。すでに引退する年だ」
「まだ若いだろう?俺に来いということか?そう言っているのはお母さんか?」
「企業としてお前を呼びたい。取締役のひとりに推されている。その気はないだろう?」
「全くない。圭一さんが49歳で引退するまで支える。その後も残る」
「これで一つ目の話が終わった。二つ目は圭一君の妹さんのことだ」
「彼女がどうしたんだ?」
この場で名前が上がることに違和感がある。黒崎とは父親違いの妹だとされているが、黒崎隆氏が実父だ。親子鑑定の必要がない程に似ている。会話の中の反応や考え方は、若い頃の黒崎と同じだ。夏樹と悠人から話を聞いて、そのままじゃないかと思って驚いた。
「早瀬家としては、お前と彼女の結婚を希望している」
「ははは……。笑いすぎた。悠人が起きる」
「タッグを組みたい目的だ」
「いつの時代だよ?」
「圭一君のお母さんが立ちあげた、モデルスクールが影響している。うちがスポンサーになっただろう。その縁だ。どうしても、安定した船にすがりつきたいわけだ」
「お母さんとは離婚調停中だろう?その関係か?」
「彼女の方から調停を申し立てられた。はははは……」
「好きにさせておけばいいよ。今度はこんな話か?お父さんが圭一さんのお母さんと再婚しろと」
「先方から願い下げだ。三つめは君のお父さんのことだ。どこの誰か教えていない。聞くか?」
「聞かない。いや、これだけは聞いておきたい。黒崎隆氏じゃないだろう?」
「違うよ。ははは!分かっているだろう?」
「そうだね、あの人が兄貴なのは嫌だ。お母さんから結婚のことで口出しされなくなった。理由は悠人のことか?」
「森井物産の関係があるかもしれない。悪い考え方だ。うちの家を出て正解だ」
「お父さんが出してくれたんだよ。ありがとう」
「そろそろ切る。デビューステージは必ず観に行く」
「伝えるよ。大げさにしなくても会えばいいのに。悠人はふっくらした人が好きだよ」
「もっとふっくらしておこう。おやすみ……」
通話を終えた後、寝室へ行った。悠人が寝返りを打っていたからホッとした。痛み止めの効果があるだろうが、寝息を立てたままでいる。回復に近づいているのだろう。
トラのユーリとのツーショットをカメラに収めた自分は重症だ。悠人に参っている。そっと寝室から出て、朝食の下ごしらえを始めた。かぼちゃグラタンとサラダを食べさせるために。
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