182 / 286
16-4(悠人視点)
しおりを挟む
午前11時。
ぼんやりと目を開けた。背中側から光が差し込んでいる。朝になったのかな?トラのユーリを支えにして寝返りを打った。窓の外は晴れ渡っていた。けっこう日が高い。
「何時だろう?11時か。12時間以上も寝たんだー……」
大学の寮生活のときは珍しくなかった。二時限目からの授業が多かったから、遅くまで寝ていた。今はまったく違う生活パターンだ。規則正しくしている。おかげで肌ツヤが良くなったらしい。久しぶりに会った友達から言われた。朝っぱらから抱かれて寝不足でも、体調に変化はない。
「よいしょっと……」
ユーリを支えにして起き上がった。すっかり身体に馴染んでいる。怪我が治っても一緒に寝たい。早瀬は笑わないと言ってくれた。どうしようかと迷った後、ユーリを抱えて寝室を出た。早瀬の気持ちが嬉しいからだ。
パタパタ……。
さっそくリビングへ行った。朝ごはんを食べていないから、腹の虫が騒いでいる。それだけが目的ではない。早瀬に会いたいからだ。同じ家に住んでいても。
「裕理さーん、おはようーー」
「起きたのか。具合はどうだ?」
「もう痛くないよ。動かしても平気。ほら……」
軽く動かしても痛みが起こらなかった。痛み止めを夜中に追加で飲まずに眠れたのは、回復の証だろう。
来週の水曜日までは、ギターを弾かないと決めた。ほんの数日の不安と、これから先のことを天秤にかけた。その結果、修行だと思うことにした。指が動かなくて演奏が出来なくても、すぐに勘を取り戻す訓練にもなる。
(ギターのことだと、ポジティブになれるんだよなー。負けたくない!って思うし……)
「いててて……」
「こら、大人しくしろ」
右手を振りすぎてしまった。熱を持った気がして焦ったが、すぐに治まった。はあ……。息を吐いて早瀬の隣に座った。
早瀬がテーブルでパソコンを開いている。画面に出ているのは、CGで作成したプロモーションビデオだった。これを参考にして撮影時のイメージをする。若干、もらっていた計画書と内容が違うようだ。夏樹の立ち位置に変化があるし、俺も近くに寄っている。
「今までと違うんだね。新しいのが届いた?」
「そうだよ。君に観てくれって。……よく気がついたな。まだ撮っていないシーンだろう」
「全体を通してイメージしたいから覚えたんだ。そのシーンだけ動いても、ヘンテコだし。……ふむふむ。夏樹が妖怪っぽくなるのかー」
これなら休んでいる間も遅れずに済む。デビューの日は延期されていない。みんなが突っ走っている状況だ。ふと、タスクバーに視線が向いた。”悠人の腹”という、気になるファイル名だ。
「カチカチ……」
「あああ……」
声をかけずに開いてやった。自分の名前のファイルならいいだろう。早瀬のことを右手で威嚇してやった。効果絶大だ。画像を開くと、俺が腹を出して寝ているものが10枚以上出てきた。沈み込むに決まっている俺へのフォローだと思う。
珍しく良い方に受け取った後、別の画像ファイルを発見して、呆れて物が言えなくなった。さらに発見したものに腰を抜かしそうになるのを踏み留まり、元気な足でブルーキックをしてやった。俺の画像がハートのフレームに囲まれていたからだ。呆れた俺は、何も言わずに早瀬の飲んでいる珈琲を飲んでやった。
早瀬が慌てている。まだ何かあるのかと聞くと、もう無いと言っていた。おかげで元気になった。しかし、早瀬がエロいことを言い出さないように、機嫌が悪いふりをしたままで、プロモーションビデオのCGを見始めた。こうして1日がスタートした。
ぼんやりと目を開けた。背中側から光が差し込んでいる。朝になったのかな?トラのユーリを支えにして寝返りを打った。窓の外は晴れ渡っていた。けっこう日が高い。
「何時だろう?11時か。12時間以上も寝たんだー……」
大学の寮生活のときは珍しくなかった。二時限目からの授業が多かったから、遅くまで寝ていた。今はまったく違う生活パターンだ。規則正しくしている。おかげで肌ツヤが良くなったらしい。久しぶりに会った友達から言われた。朝っぱらから抱かれて寝不足でも、体調に変化はない。
「よいしょっと……」
ユーリを支えにして起き上がった。すっかり身体に馴染んでいる。怪我が治っても一緒に寝たい。早瀬は笑わないと言ってくれた。どうしようかと迷った後、ユーリを抱えて寝室を出た。早瀬の気持ちが嬉しいからだ。
パタパタ……。
さっそくリビングへ行った。朝ごはんを食べていないから、腹の虫が騒いでいる。それだけが目的ではない。早瀬に会いたいからだ。同じ家に住んでいても。
「裕理さーん、おはようーー」
「起きたのか。具合はどうだ?」
「もう痛くないよ。動かしても平気。ほら……」
軽く動かしても痛みが起こらなかった。痛み止めを夜中に追加で飲まずに眠れたのは、回復の証だろう。
来週の水曜日までは、ギターを弾かないと決めた。ほんの数日の不安と、これから先のことを天秤にかけた。その結果、修行だと思うことにした。指が動かなくて演奏が出来なくても、すぐに勘を取り戻す訓練にもなる。
(ギターのことだと、ポジティブになれるんだよなー。負けたくない!って思うし……)
「いててて……」
「こら、大人しくしろ」
右手を振りすぎてしまった。熱を持った気がして焦ったが、すぐに治まった。はあ……。息を吐いて早瀬の隣に座った。
早瀬がテーブルでパソコンを開いている。画面に出ているのは、CGで作成したプロモーションビデオだった。これを参考にして撮影時のイメージをする。若干、もらっていた計画書と内容が違うようだ。夏樹の立ち位置に変化があるし、俺も近くに寄っている。
「今までと違うんだね。新しいのが届いた?」
「そうだよ。君に観てくれって。……よく気がついたな。まだ撮っていないシーンだろう」
「全体を通してイメージしたいから覚えたんだ。そのシーンだけ動いても、ヘンテコだし。……ふむふむ。夏樹が妖怪っぽくなるのかー」
これなら休んでいる間も遅れずに済む。デビューの日は延期されていない。みんなが突っ走っている状況だ。ふと、タスクバーに視線が向いた。”悠人の腹”という、気になるファイル名だ。
「カチカチ……」
「あああ……」
声をかけずに開いてやった。自分の名前のファイルならいいだろう。早瀬のことを右手で威嚇してやった。効果絶大だ。画像を開くと、俺が腹を出して寝ているものが10枚以上出てきた。沈み込むに決まっている俺へのフォローだと思う。
珍しく良い方に受け取った後、別の画像ファイルを発見して、呆れて物が言えなくなった。さらに発見したものに腰を抜かしそうになるのを踏み留まり、元気な足でブルーキックをしてやった。俺の画像がハートのフレームに囲まれていたからだ。呆れた俺は、何も言わずに早瀬の飲んでいる珈琲を飲んでやった。
早瀬が慌てている。まだ何かあるのかと聞くと、もう無いと言っていた。おかげで元気になった。しかし、早瀬がエロいことを言い出さないように、機嫌が悪いふりをしたままで、プロモーションビデオのCGを見始めた。こうして1日がスタートした。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる