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コンコン……。
ドアをノックをした。お兄ちゃんだぞと声をかけた。そして、予想外のことが起きた。あっけなくドアが開かれたからだ。向こうに立っていたのは、やつれた女性だった。小さな女の子にも見えた。
「……お兄ちゃんとお菓子を食べよう。お父さんも来たぞ。うっとおしいなら戻らせるけど?」
「……ううん」
そう話しかけると、莉奈が小さく首を横に振った。
部屋に入り、すぐに目に入ったのがカーテンだ。きっちりと閉められている。照明の下には散乱したクッションと、白いシャツが破られた状態で落ちていた。そして、割れたグラスもある。莉奈は整理整頓が出来る分だけ目に付いた。俺を見て、ビクビクしている。笑って済ますしかないだろう。
「グラスを割ったのか?片づけないと危ないぞー?」
「うん……」
「莉奈が割ったのか?落としたのか?それとも……、壁に投げたのか?」
「……」
「ははははー」
「……え?」
「イライラしたのか?誰にでもそういう時はある」
「……」
「カステラは好きだろう?疲れている時は甘いものがいい」
テーブルの上を見た。ラグの上に置いた小さなものだ。たしか俺の部屋にあったものだ。食事を運ばせているようだ。ほとんど食べていないサンドイッチが置かれている。何と声をかければいいのか。
(本当に男は役に立たない。悠人なら大丈夫だろう。あの子ならどう声を掛けるだろう?そうか……これだな)
カステラをひと口サイズにちぎった。それを彼女の口元へ持って行くと驚いた顔をした。かまわず口の中に入れてやった。少しずつだ。
「ほら食べろ。頭が働かないぞー?いい子のフリが出来ないぞー?」
「……っ」
「ほーら、泣いてしまえー」
「……っ」
「わあわあいけ!お母さんが来たら追い出してやる。この家から連れて行ってもいいんだぞ?ほーら」
「……っ」
莉奈の痩せた体を抱き寄せた。自分よりもずっと小さな背中をしている。膝の上で握りしめているその手も、小さなものだった。
最初は遠慮がちにも思えた小さな嗚咽が、次第に大きくなった。まるで生まれた赤ん坊のようだ。ここに居る莉奈は泣くことができる。そうすると歩けるようになる。赤ちゃんはつかまり立ちをするそうだ。悠人が調べていた。ふむふむと……。それには大人の力、支えが必要だと。
「どうだー?もっと泣いていいんだぞ」
「ううん……」
「赤ちゃんみたいだな。今日は莉奈の誕生日にしようか。来月4日に27歳になる。今日は26歳の誕生日だ。27歳になる時は生まれ変わった莉奈で、その日を迎えよう。いいアイデアだろう?」
「でも……取り返しが……つかない。会社に行けないし、そしたら……お母さんに怒られるし……っ」
「会社を辞めるか続けるかは、まだ考えるな。コンラッド株式会社は休職制度があるだろう?それを活用するのは悪いことじゃない。まずは元気になろう。……お母さんのことはお父さんと俺に任せておけ!もっと言いたいことは?他に心配なことは?」
「友達がいないし……っ。会社の……っ」
「何があった?」
「……っ」
何か一つでもつまずくと、全てを否定された気分に陥る。この間のインターンシップ参加者と重なる。自分も同じだった。クソガキの黒崎から ”やっちまえ” と教えられた。
莉奈の話を聞くと、問題が起きたのは先月のことだ。大事な書類を紛失した出来事があった。他の社員が間違えて持って行ったことが判明したが、部署の誰もが莉奈を庇わなかった。日ごろの態度が悪いようだ。どんなことがあっても、まずは自分が悪いのではないか?と、一旦は受け取ることを一切しない。それが今回の出来事の原因だと察した。
ドアをノックをした。お兄ちゃんだぞと声をかけた。そして、予想外のことが起きた。あっけなくドアが開かれたからだ。向こうに立っていたのは、やつれた女性だった。小さな女の子にも見えた。
「……お兄ちゃんとお菓子を食べよう。お父さんも来たぞ。うっとおしいなら戻らせるけど?」
「……ううん」
そう話しかけると、莉奈が小さく首を横に振った。
部屋に入り、すぐに目に入ったのがカーテンだ。きっちりと閉められている。照明の下には散乱したクッションと、白いシャツが破られた状態で落ちていた。そして、割れたグラスもある。莉奈は整理整頓が出来る分だけ目に付いた。俺を見て、ビクビクしている。笑って済ますしかないだろう。
「グラスを割ったのか?片づけないと危ないぞー?」
「うん……」
「莉奈が割ったのか?落としたのか?それとも……、壁に投げたのか?」
「……」
「ははははー」
「……え?」
「イライラしたのか?誰にでもそういう時はある」
「……」
「カステラは好きだろう?疲れている時は甘いものがいい」
テーブルの上を見た。ラグの上に置いた小さなものだ。たしか俺の部屋にあったものだ。食事を運ばせているようだ。ほとんど食べていないサンドイッチが置かれている。何と声をかければいいのか。
(本当に男は役に立たない。悠人なら大丈夫だろう。あの子ならどう声を掛けるだろう?そうか……これだな)
カステラをひと口サイズにちぎった。それを彼女の口元へ持って行くと驚いた顔をした。かまわず口の中に入れてやった。少しずつだ。
「ほら食べろ。頭が働かないぞー?いい子のフリが出来ないぞー?」
「……っ」
「ほーら、泣いてしまえー」
「……っ」
「わあわあいけ!お母さんが来たら追い出してやる。この家から連れて行ってもいいんだぞ?ほーら」
「……っ」
莉奈の痩せた体を抱き寄せた。自分よりもずっと小さな背中をしている。膝の上で握りしめているその手も、小さなものだった。
最初は遠慮がちにも思えた小さな嗚咽が、次第に大きくなった。まるで生まれた赤ん坊のようだ。ここに居る莉奈は泣くことができる。そうすると歩けるようになる。赤ちゃんはつかまり立ちをするそうだ。悠人が調べていた。ふむふむと……。それには大人の力、支えが必要だと。
「どうだー?もっと泣いていいんだぞ」
「ううん……」
「赤ちゃんみたいだな。今日は莉奈の誕生日にしようか。来月4日に27歳になる。今日は26歳の誕生日だ。27歳になる時は生まれ変わった莉奈で、その日を迎えよう。いいアイデアだろう?」
「でも……取り返しが……つかない。会社に行けないし、そしたら……お母さんに怒られるし……っ」
「会社を辞めるか続けるかは、まだ考えるな。コンラッド株式会社は休職制度があるだろう?それを活用するのは悪いことじゃない。まずは元気になろう。……お母さんのことはお父さんと俺に任せておけ!もっと言いたいことは?他に心配なことは?」
「友達がいないし……っ。会社の……っ」
「何があった?」
「……っ」
何か一つでもつまずくと、全てを否定された気分に陥る。この間のインターンシップ参加者と重なる。自分も同じだった。クソガキの黒崎から ”やっちまえ” と教えられた。
莉奈の話を聞くと、問題が起きたのは先月のことだ。大事な書類を紛失した出来事があった。他の社員が間違えて持って行ったことが判明したが、部署の誰もが莉奈を庇わなかった。日ごろの態度が悪いようだ。どんなことがあっても、まずは自分が悪いのではないか?と、一旦は受け取ることを一切しない。それが今回の出来事の原因だと察した。
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