回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 午前11時。

 ショッピングモールに到着した。レンジャーショーの会場は、北フロアの中央部分だ。4階まで吹き抜けになっているため、見上げると客たちが見降ろしていた。

 ここでは30分前から待っている。わりと前の方に座れた。大人は遠慮した方がいいかなと思うぐらいに子供が多い。周りにも大人はいる。子供の付き添いだ。

「ゆうとー。今日は俺が保護者だぞ」
「一緒に楽しもうねーーっ」
「へえ?言い返さないのか。ますますイジメてやるぞ」
「新月マンに倒されろーーっ」
「はいはい。始まりますよー」
「おおーー!」

 わーー!レッドーー!

「……月夜のレンジャーショー!始まるぞーー!」

 レッドの声が流れたことで、周りから歓声があがった。お馴染みの音楽が鳴り響き、司会の女性が登場した。まずは挨拶の練習から入る。ここの気合いの入り方で参加者が選ばれるそうだ。

「さあーーー、お姉さんと一緒に、ご挨拶の練習だよーー。こーーんにちはーー!」
「こんちにはーーー!」

 こーーんにちはーー!

「月夜のレンジャーーー!」
「ブルーーー!」

 ダダダダダーーー、ダダラッララダダダーー。

「頑張れーーって、応援してねーーー!」

 ワーーーーー!

 ショーが始まった。お姉さんがサイドに引込んだ後、全身黒タイツの ”新月マン” と、シルバーの鎧を着た "クレーターマン"が登場した。お姉さんに襲い掛かっている。それはいけないと思い、立ち上がった。

「だめだだめだだめだーー!女性にーー!」
「はいはい。あんよはこっちだぞーー」

 子供たちと同じく地団太を踏んだ。これぞ連帯感だ。年齢など関係ない。

 チャララーーー! 

「待て!そうはさせないぞ!」

 テーマ曲と同時に、黒、黄、緑のレンジャーが登場した。飛び蹴りをするたびに歓声が上がっている。俺も飛びあがっている。

 さっそく戦いが始まった。華麗な動き、ケリのタイミングがカッコいい。しかし、劣勢になってきた。子供たちから応援の声が飛んできた。

「ピンクーー!うしろだーー!」
「ゆうとー、珈琲をこぼすぞ」
「げええええっ、なんてことするんだーー!」
「ああ、溢したか。拭くぞーー」
「裕理さん!コーヒー飲みたい!」
「はいはい。ストローを口に入れろ」
「うえーーっ。ごほほほほっ」

 ストローの先を口に入れてもらった。そして、勢いよく飲み込んでしまい、気管に入り、むせ返った。しばらくの間、ハンカチを口に当てて、ステージを眺めた。そうしている間に、子供たちの中から戦うメンバーが選ばれた。ここが気合いの見せ所なのに。

「げええええっ。裕理さんーー、もうダメだーーー」
「ネガティブゆうと、応援を続けろーー。まだ分からない。ブルーだぞーー」
「ひいいいいいいっ。登場シーーンを見逃したーーー!あああ……」

 これぞ、ネガティブの呪いだ。ブルーの登場シーンまで見逃したなんて。
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