回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 ガーーー。

 大学に向かっている車内は賑やかだ。久しぶりに行く感覚がある。3年生からの学部選択では、”理学部惑星環境学科” へ進むことが決定した。慌ただしい毎日が過ぎていき、大学からの決定通知を見逃していた。真羽から聞いて気づいた。夏樹も知らなくて呆然としていた。特に困ったことはなかった。

 とうとうVisible rayの告知サイトにて、俺と夏樹がメンバーだと発表された。そのページを読んでいるところだ。

 ミッシュアップコンテストで優勝したメンバーだと、ネットで話題になったようだ。さっそくチェックした。俺達の写真とインタビューが掲載されている。ドキドキしながらサイトを目で追った。

「ふむふむ。俺達のインタビューを読むよー?ボーカル・Natsuki、ギター・yu-to。ミライ・アマチュアコンテスト2位。ミッシュアップコンテストにて優勝。IRON ANGEL。ナツキの趣味は家庭菜園。自宅の畑で、九条ネギとトマトを育てている。絵本マニア。……ユートの趣味は味噌汁づくり。佐久弥の趣味はお菓子づくり、ミシン。……どんなバンドだよー。趣味はアクセサリーって言ったのに。味噌汁なんて言っていないよー。朝ご飯で作っているんだ。もうーー」
「ゆうとー、嘘はダメだよ。恥ずかしい趣味じゃないだろ?エプロンとスリッパ集めよりさ……」
「ふむふむ、正論ですね。さすがは黒崎さんを撃ちぬいた男ですねー」
「ああでもしないと本音を出せないからさ~~」

 それは黒崎さんのことだ。お母さんと再婚相手が離婚することになった。最後の条件として、相手から出されたのが、娘の二葉に会いたいというものだ。暴力を振るった人だから、黒崎さんとしては会わせたくない。夏樹が黒崎さんを説得した結果、今日、二葉と一緒に会いに行っている。

 二葉はO大を志望している。こっちの大学に入り直した後、黒崎製菓で秘書のバイトを始めるという。黒崎製菓のビジネスコンテストの結果を見て、黒崎家のお父さんが期待したからだ。学費はお父さんが出すという。どうして二葉がその話に承諾したのかというと、弟の朝陽のことがあるからだ。朝陽は医学部志望で、たくさんの学費がかかる。二葉が話に承諾することで、朝陽の学費が少しでも助かるからだ。その朝陽だが、バレンタインイベントでこっちで出来た仲間と一緒に女の子を強引にナンパして、問題を起こしている。心が安まる暇が無いだろう。

 どうもしんみりした空気になった。少し話題を変えたくて、前から思っていたことを口にした。黒崎さんと二葉が似ていることを。なぜか黒崎家のお父さんにも似ている。ずっと不思議だった。彼女は再婚相手との子供だと聞いていたのに。

「二葉ちゃんって、黒崎さんに似ているよね?」
「外見も中身もね、そっくりそのまま。威圧感も同じだよ」
「弟に言ったんだよね?バレンタインイベントで横暴なことをしたから。……勉強してから言いなさい。二度も言わせるな!か。カッコいいなー。黒崎さんはお父さん似だよね?」
「うーーん。最近はママに似てきたんだ。もっと前はお義父さんだったけど」
「じゃあ、二葉ちゃんもお母さん似なのか。黒崎家のお父さんに似ていると思ったんだけど」
「ああ、鋭いね……。お義父さんの実の娘なんだ。だからこっちに呼んだよ。もちろん、ビジネスコンテストの結果に期待したからだけど」
「……だからよけいに!?」
「それもあるよ。二葉ちゃんは、倉口さんだけがお父さんだって言ったよ。お義父さんの前で。本当の父親に会う気はありませんって」
「……こんなことを言ってもいいのかな?」
「いいよ、こっちが言い出したんだし」
「リスペクトする!弟を医学部で勉強させたくてだろ?」
「それも理由だよ……」
「……っ」

(俺なんか両親に恨みしか向けていなかったのに。もっとツラいよね。俺は自由に会えるもん……。やっぱり両親のことが好きだ……)

 助手席の長谷部さんが覗き込んできた。気を取り直して、ステージの構成を確認しておきましょうと言われた。それに大きく頷いて、仕事に集中するようにした。

 さっそくタブレットと紙を広げた。今回のステージでは、自分たちの意見を取り入れてくれる。チャレンジしたい照明効果などだ。
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