【完結】29歳で「売れ残り」とお見合い勧告されましたが、裏では最強のアルファ部長が「運命だ」と逃がしてくれません

Marine

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「その……瞳」

 俺が手を伸ばすと、彼は愛おしそうに手の甲に口づけた。

「いやっ、そうじゃなくて! 晃さんの目が金色なんですけど」
「ああ、共鳴(レゾナンス)だ。運命のつがいにしか起こらない」
「えっ?」
「こうやって触れていると、ほら、お前の目も」

 彼が俺を抱きかかえて、ラウンジの鏡を指した。
 そこに映っているのは、金色の目をした自分の姿だった。

「……うそ」
「残業中にお前が発情したとき、あんなに言っただろう?」

 そういえば「運命だ」とか「美しい」とか言っていたような気はするが……。

「ちょっと記憶が飛んでいて……」
「なにっ! じゃあ覚えていないのか?」
「……す、すいません。でも、発情暴走してたから……」
「あれは発情暴走じゃない」

 桐生部長は面白そうに唇の端を上げた。

「そんな勘違いをしていたわけだな……どうも様子がおかしいと思っていた。発情暴走のような事故は一万人に一人と言われている。しかも、40代から50代の未番のおめがが一番多い」
「じゃ……俺のは」
「単に抑制剤が効かなくなってきたのと……近くに運命のつがいがいたからかな」

 まさか、あんなに悩んだのに、根本からかんちがいだったのか。
 あんな絶妙なタイミングで発情暴走の話なんてするから! いや、知識のない俺が一番悪いんだが。

「だって……目の色が変わったじゃないですか」
「混濁(コンタミ)と間違えていたのか。あれは充血したような赤黒い濁りだ。共鳴のほうは澄んでいるだろう」
「う……う」

 何も言い返せない。
 思い返せば、確かに産業医は『瞳の色が変質して混濁』と言っていた気がするし、ネットにもそう書かれていた。
 彼の瞳の色は濁っていなかったから、疑問を持てば分かりそうなものだ。

「正しい知識が不足しているのは問題だな。研修に追加しておこうか」

 彼は俺をぎゅっと抱きしめた。

「運命のつがいの共鳴色を、間近で見せることができるわけだしな」
「そんなの……恥ずかしすぎます」

 ラウンジで抱きしめられるのに困って抵抗したが、がっちりと捕まえられていて、脱出は難しかった。
 でも、さきほど彼が追い払ったから、見物人は誰もいない。
 俺は諦めて力を抜いた。
 
「ところで、あの最初の夜のことを覚えていないと言ったな」

 彼の笑みに凄みが増して、なんだか怖い。

「仕方が無いからもう一度言うぞ。
ずっと前に一度、お前のフェロモンを偶然嗅いだことがあった。
その時から、お前をつがいにすると心に決めていた。
今日は突発的な事故で、こうして抱いてしまったが、共鳴によって運命のつがいだということが分かった。
これからはお前を離さない。
俺の……つがいになってほしい」

 彼の瞳には、前のことを懐かしく思い出すような、優しい光が宿っていた。
 それは一週間前より、ずっと……いったい、いつから彼は、俺のことを……。
 その気持ちに応えられるのは、俺だけなんだ。
 
「はい」

 小さく答えると、彼が俺の顎を引き寄せた。

「会社のラウンジでキスすると……コンプライアンス違反ですよ……」
「あとで始末書を書いておく」

 二人の唇が、ふわりと溶け合った。
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みんなの感想(3件)

ahama.01
2026.01.12 ahama.01

とても良かったです。
読みやすくて展開やキャラがとても好みでした。
素敵なお話をありがとうございました。

2026.01.12 Marine

ahama.01さん
素敵な感想をありがとうございます。
展開やキャラが「好み」と言っていただけて、ガッツポーズするくらい嬉しいです!
最後まで楽しんでくださり、本当にありがとうございました。

解除
しぶしぶ
2026.01.10 しぶしぶ

とても面白かったです。キュンキュンしました。

2026.01.10 Marine

しぶしぶさん
ありがとうございます! 二人の恋愛にキュンとしてもらえて、作者冥利につきます。
最後まで楽しんでくださり、ありがとうございました!

解除
なのはな
2026.01.10 なのはな

とっても面白かったです!
文章も読みやすく、展開もとっても好みでした。
ありがとうございました!

2026.01.10 Marine

なのはなさん、コメントありがとうございます。
「読みやすい」と言っていただけて、作者として一番嬉しいお言葉です。
展開も楽しんでいただけたようで何よりです。
温かいお言葉、とても励みになりました!

解除

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