悪役令嬢に嵌められて婚約を破棄され、国を追放された聖女を救うため、王国一の剣士は旅に出る~もちろんこの後の展開は想像通りです~

マーラッシュ

文字の大きさ
44 / 62

不穏な影

しおりを挟む
 ロマリオに向かった翌日。

 俺達はいつもの日常に戻っていた。
 朝早くから村長さんが作物の育ち具合を知らせてくれ、エルウィンが朝食の材料を持って現れる。
 そしてリリアを起こしてご飯を食べて、それぞれの仕事場へと向かう。

「ユートくんのその弓の技術はどうやって身につけたんだ?」

 森の奥で猪を仕留めた後、ノアの村で長らく狩りを担当しているソルトさんが話しかけてきた。

「どうやって⋯⋯ですか。それは狙った獲物に矢が当たらなかったら、自分に矢が飛んで来るからです」
「「「えっ?」」」

 俺の言葉に村人達は、ちょっと何を言っているのか意味がわからないといった様子だった。
 普通はそう思うよな。だけどこれは事実だ。おかげで何度死にそうになったことか。しかし結果として弓の腕は上がったので文句はいえない。

「冗談です。何回も練習したからですかね⋯⋯はは」
「びっくりした。ユートくんでも冗談を言うんだな」
「言いますよ。例えばリリアは肉の串焼きを一人で三十本食べるとか」
「ハッハッハ! それは面白い冗談だ!」
「身体が小さいリリアちゃんがそんなに食べるわけないもんな」

 まあこれも本当のことだけど誰も信じないよな。

「それにしても最近獲物の数が多くないか?」
「魔物が減ったからこの辺りが安全になって、動物が増えたんじゃないのか」

 確かにそういう見方もある。このまま勘違いしてくれればいいが、いつかそれもおかしいと気づく時がくるかもしれない。その時リリアはどうなってしまうのか? いざという時の身の振り方も考えておいた方がいいかもしれない。

「とにかく悪いことじゃない。鉱山でミスリルが取れるようになるし、作物も良く育つ、出稼ぎに行っていた若い者達も帰ってくるし、良いこと尽くめだ」
「それじゃあ若い者達に腹一杯食べさせるため、もう一匹狩りに行くか」
「そうだな」

 その若い者達の中にリリアも入れてくれると助かる。最近食費がすごくて。実は俺が狩りについてきてるのもたくさんの食糧を確保するためだったりするのだ。

「ユートくん、俺達で獲物を追い込むから弓矢で仕留めてくれ」
「わかりました」

 村の人達が先行し、俺は後からついていく。

「いたぞ!」

 しばらくすると村人達の声が上がったので、俺は弓を引き構える。
 草木が揺れ、何かが近づいてくる気配がした。村の人達が上手くこちらに誘導してくれたのか、後は俺が矢を当てるだけだ。
 しかしこちらに向かってくる気配は、動物のものとは思えない。もしかしてこれは⋯⋯

 俺は茂みから出てきたものに対して、反射的に弓を向ける。

「まて! 俺だ俺」

 何と茂みから現れたのはエルウィンだった。

「今日はこの辺りで狩りをしていることは知ってるよな? いきなり飛び出してきて危ないぞ。危うく射つところだった」
「絶対に射つなよ。とりあえずその弓をこっちに向けるのはやめてくれ」

 俺はエルウィンの言葉に従って弓を下に降ろす。
 それにしても何故ここにエルウィンが? 今日はいつも通り洞窟へ向かったはずだが。

「それで何があったんだ?」
「それが発掘したミスリルを置きに村に戻ったら⋯⋯兵士がいたんだ」
「兵士? ロマリオのか」
「いや、あれはロマリオの⋯⋯サレン公国の兵士じゃなかった」

 サレン公国の兵士じゃない!? まさか⋯⋯

「リリアは! リリアはどうした!」

 俺はエルウィンの胸ぐらを掴み問い詰める。

「ちょ、苦しい! 落ち着けって!」
「これが落ち着いていられるか! リリアはどうした!」
「その兵士達に連れて行かれちまったよ」
「お前は黙って見ていたのか!」
「無茶言うなよ。俺がついた時は既にリリアちゃんは捕まってたんだ」
「それでもエルウィンなら何とか出来ただろ!」
「相手は一人や二人じゃねえ。少なくとも百人近くはいた。俺一人じゃどうにもならねえよ」
「ちぃっ!」

 俺はエルウィンを離し、急ぎ村へと向かう。
 今はこうしている時間もおしい。
 それにしても大部隊でリリアを奪いに来るとは。やはり聖女の祝福が失われ、王国が衰退しているということなのか。
 だがそんなことは俺にとってはどうでもいい。今はリリアを取り戻す!

 俺は捕らえられたリリアを救うため、森の中を風のように駆け抜けて、ノアの村へと急ぐのであった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...