15 / 18
悪党が密会するのは深夜と相場が決まっている
しおりを挟む
俺とリーゼロッテはアクトーク商会の外に出る。
するとそこにはアインスの姿しかなかった。
「戻りました。それでツヴァイさんはどこへ」
リーゼロッテは疑問に思い、アインスに問いかける。
だがその答えは予測出来るものだったので、代わりに俺が口を開く。
「馬車を追ったんだろ」
「さっすがクロイツちゃん。その通りだよ。ワルイらしき人が乗ってたからね」
動きが早いことだ。さすがアインスとツヴァイといったところか。
「俺達も追うぞ」
「えっ? どうやって追うのですか? 馬車がどこへ向かったかわからないし、そもそも人が走って追いつけるのですか?」
リーゼロッテの疑問はもっともだ。
だけどその心配はない。なぜなら⋯⋯
俺は迷いもせず、月が照らす王都の道を駆ける。背後からはアインスとリーゼロッテが追ってきていた。
「本当に馬車の向かった先はこちらでいいのですか?」
「ああ。百%間違っていないから安心してくれ」
俺は自信満々に答えるが、リーゼロッテは訝しげな目を向けている。
まあ当然か。傍から見れば俺は適当に馬車を追っているように見えるかもしれない。だけど俺には明確な理由がある。
俺は走りながらチラリと地面に視線を向けた。
「足元を見てくれれば、俺の言っていることがわかるよ」
「足元ですか? あっ! これは⋯⋯羽ですか」
そう。俺達が進む方向には所々白い羽が落ちていた。
「こっちだ」
十字路の左側に白い羽が落ちていたため、俺は躊躇いもせず左に曲がる。
「なんですかこの羽は? まさか⋯⋯」
「ツヴァイが俺達のために置いていったんだ」
「羽を? どうやってそのようなものを⋯⋯」
もちろんツヴァイが常時懐に羽を持っていたわけではない。
「まあそれはそのうちわかるよ。今はツヴァイを追うぞ」
「わかりました」
俺達は羽の示す方向に向かって駆ける。すると羽は街の中央へと向かっていた。
中央区画には多くの貴族が住んでいる。やはり俺が予想している場所へと向かっている可能性が高い。
悪党が密会して悪巧みをするのは、人目がつかない深夜と相場が決まっているからな。
そしてしばらく羽を辿って行くと、一つの大きな屋敷の前にたどり着いた。
「クロイツ様」
突然建物の陰から声をかけられたので視線を向けると、そこにはツヴァイの姿があった。
「馬車はこの建物に入っていきました」
「追跡をしてくれてありがとう」
「いえいえ~⋯⋯クロイツ様のためなら」
俺はお礼の言葉を伝えたが、ツヴァイは何故か頭をこちらに向かって下げていた。
何だ? 何でお礼を言われたツヴァイが頭を下げているんだ? それに上目遣いでチラリと何度も見てくるし。
「早く♪早く♪」
どうやら何かを催促されているようだ。
ん? もしかして⋯⋯
俺は差し出された頭を撫でる。
するとツヴァイは嬉しそうな声を上げた。
「う~ん♪ 満足満足♪」
どうやら俺の選択は間違っていなかったようだ。
だがある意味選択を間違えてしまったかもしれない。何故ならツヴァイの頭を撫でたことによって、不機嫌にしている者がいるからだ。
「お姉ちゃん浮気は良くないと思うなあ」
ルイ姉が頬を膨らませて、いかにもご機嫌ななめといった様子だ。
「いや、別に浮気じゃないだろ? アインスと付き合っているわけじゃないんだから」
「そんなこと言うんだ。クロイツちゃんひどい」
ひどいって⋯⋯何で事実を言って怒られなくちゃならないんだ。
「アインスちゃん残念でした。クロイツ様の寵愛は私のものです」
「一度頭を撫でてもらっただけで随分強気だね。私なんてもっとすごいことをされたことがあるから」
二人の間に火花が飛び散る。頭を撫でただけで何故か一触即発の空気になってしまった。
「今はどういう時かわかってないのか。喧嘩するなら後でやってくれ」
俺はツヴァイとアインスを注意するが反応はなく、完全に二人の世界に入っているように見えた。
「それならどっちが活躍出来るか勝負しましょ」
「わかった。クロイツちゃん⋯⋯この屋敷にいるワルイとボーゲンにお仕置きすればいいんだよね」
「それじゃあ。用意⋯⋯スタート」
「ちょっと待て」
アインスとツヴァイは俺の制止を無視し、屋敷の中に向かって走り出す。
勝手な行動はしないでほしいんだけど。
俺は二人の行動に頭を抱える。
「統率が取れていませんね。もしこれが騎士団でしたら軍法会議ものですよ」
「仰る通りです」
俺はリーゼロッテの言葉を認め、うなだれる。
「それより二人を止めなくていいんですか? アクトーク商会とは違って、貴族の家には私兵がいますよ。もし二人が遭遇したら⋯⋯」
「ああ、それなら心配してないから大丈夫」
「大丈夫? それはどういうことですか?」
「見ればわかるよ」
俺達はアインスとツヴァイの後を追う。
すると俺が予想していた光景が目に映るのであった。
するとそこにはアインスの姿しかなかった。
「戻りました。それでツヴァイさんはどこへ」
リーゼロッテは疑問に思い、アインスに問いかける。
だがその答えは予測出来るものだったので、代わりに俺が口を開く。
「馬車を追ったんだろ」
「さっすがクロイツちゃん。その通りだよ。ワルイらしき人が乗ってたからね」
動きが早いことだ。さすがアインスとツヴァイといったところか。
「俺達も追うぞ」
「えっ? どうやって追うのですか? 馬車がどこへ向かったかわからないし、そもそも人が走って追いつけるのですか?」
リーゼロッテの疑問はもっともだ。
だけどその心配はない。なぜなら⋯⋯
俺は迷いもせず、月が照らす王都の道を駆ける。背後からはアインスとリーゼロッテが追ってきていた。
「本当に馬車の向かった先はこちらでいいのですか?」
「ああ。百%間違っていないから安心してくれ」
俺は自信満々に答えるが、リーゼロッテは訝しげな目を向けている。
まあ当然か。傍から見れば俺は適当に馬車を追っているように見えるかもしれない。だけど俺には明確な理由がある。
俺は走りながらチラリと地面に視線を向けた。
「足元を見てくれれば、俺の言っていることがわかるよ」
「足元ですか? あっ! これは⋯⋯羽ですか」
そう。俺達が進む方向には所々白い羽が落ちていた。
「こっちだ」
十字路の左側に白い羽が落ちていたため、俺は躊躇いもせず左に曲がる。
「なんですかこの羽は? まさか⋯⋯」
「ツヴァイが俺達のために置いていったんだ」
「羽を? どうやってそのようなものを⋯⋯」
もちろんツヴァイが常時懐に羽を持っていたわけではない。
「まあそれはそのうちわかるよ。今はツヴァイを追うぞ」
「わかりました」
俺達は羽の示す方向に向かって駆ける。すると羽は街の中央へと向かっていた。
中央区画には多くの貴族が住んでいる。やはり俺が予想している場所へと向かっている可能性が高い。
悪党が密会して悪巧みをするのは、人目がつかない深夜と相場が決まっているからな。
そしてしばらく羽を辿って行くと、一つの大きな屋敷の前にたどり着いた。
「クロイツ様」
突然建物の陰から声をかけられたので視線を向けると、そこにはツヴァイの姿があった。
「馬車はこの建物に入っていきました」
「追跡をしてくれてありがとう」
「いえいえ~⋯⋯クロイツ様のためなら」
俺はお礼の言葉を伝えたが、ツヴァイは何故か頭をこちらに向かって下げていた。
何だ? 何でお礼を言われたツヴァイが頭を下げているんだ? それに上目遣いでチラリと何度も見てくるし。
「早く♪早く♪」
どうやら何かを催促されているようだ。
ん? もしかして⋯⋯
俺は差し出された頭を撫でる。
するとツヴァイは嬉しそうな声を上げた。
「う~ん♪ 満足満足♪」
どうやら俺の選択は間違っていなかったようだ。
だがある意味選択を間違えてしまったかもしれない。何故ならツヴァイの頭を撫でたことによって、不機嫌にしている者がいるからだ。
「お姉ちゃん浮気は良くないと思うなあ」
ルイ姉が頬を膨らませて、いかにもご機嫌ななめといった様子だ。
「いや、別に浮気じゃないだろ? アインスと付き合っているわけじゃないんだから」
「そんなこと言うんだ。クロイツちゃんひどい」
ひどいって⋯⋯何で事実を言って怒られなくちゃならないんだ。
「アインスちゃん残念でした。クロイツ様の寵愛は私のものです」
「一度頭を撫でてもらっただけで随分強気だね。私なんてもっとすごいことをされたことがあるから」
二人の間に火花が飛び散る。頭を撫でただけで何故か一触即発の空気になってしまった。
「今はどういう時かわかってないのか。喧嘩するなら後でやってくれ」
俺はツヴァイとアインスを注意するが反応はなく、完全に二人の世界に入っているように見えた。
「それならどっちが活躍出来るか勝負しましょ」
「わかった。クロイツちゃん⋯⋯この屋敷にいるワルイとボーゲンにお仕置きすればいいんだよね」
「それじゃあ。用意⋯⋯スタート」
「ちょっと待て」
アインスとツヴァイは俺の制止を無視し、屋敷の中に向かって走り出す。
勝手な行動はしないでほしいんだけど。
俺は二人の行動に頭を抱える。
「統率が取れていませんね。もしこれが騎士団でしたら軍法会議ものですよ」
「仰る通りです」
俺はリーゼロッテの言葉を認め、うなだれる。
「それより二人を止めなくていいんですか? アクトーク商会とは違って、貴族の家には私兵がいますよ。もし二人が遭遇したら⋯⋯」
「ああ、それなら心配してないから大丈夫」
「大丈夫? それはどういうことですか?」
「見ればわかるよ」
俺達はアインスとツヴァイの後を追う。
すると俺が予想していた光景が目に映るのであった。
20
あなたにおすすめの小説
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。
しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。
やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。
一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。
これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる