異世界転生者のリトライ~これから起こることは全てわかっている。世界でただ一人の回復術師はとても有能でした~

マーラッシュ

文字の大きさ
31 / 49

勝者の願い

しおりを挟む
 アーノルドが倒れてから三十分後。

「き、気持ちわりい⋯⋯」

 水を飲んだことでアーノルドが復活し、何とか話せる程度には回復していた。

「大丈夫か?」
「大丈夫じゃねえよ。これは明日、二日酔いは確実だな」

 まあ誘導したとはいえ、自分から勝負を持ちかけてきたのだから、自業自得だな。
 遊び人としてのプライドが、俺に負けることを許せなかったのだろうか。

「それにしても何だその酒の強さは。初めて見た時からただ者じゃないと感じてはいたが⋯⋯」

 アーノルドの勘が何かを感じ取ったのか? だがまさか異世界転生者でこの時間軸が二度目だとは思わないだろう。

「とにかく負けは負けだ。ユートの言うことを一つ聞く約束だったな」

 約束を覚えていたか。酒に酔って覚えていないという事態は回避出来たようだ。

「お金ですかね?」
「それとも権力?」
「もしかして私達を好き放題できる権利かもしれないわ」
「「ユート様やらし~い」」

 メイド達が勝手に盛り上がっている。人の願いを捏造しないでほしいものだ。そして捏造するのはメイド達だけではなかった。

(。最低ですね)
(⋯⋯そんなこと考えてないぞ)
(今の間は何ですか? セレスティア様に誓ってハレンチなことを考えてないと誓えますか?)
(う、うるさいよ。ちょっと今大事な所だから黙っててくれないか)

 頭の中が読まれているって本当に嫌だな。
 それにしてもやはりルルには、俺がズルをしてアーノルドに勝ったのがわかっていたか。
 そう。確かに俺は酒は強い方だが、アーノルドには到底敵わないことは前の時間軸でわかっていた。
 だから俺は魔法を使って、酒に酔った状態を回復させていたのだ。
 口に入ったアルコールは肝臓で分解されるが、大部分は分解できず心臓や脳、全身に運ばれる。アルコールが血液によって脳に運ばれるといわゆる酔っぱらった状態になるのだ。
 そして肝臓でアルコールが分解されるが、この時発生するアセトアルデヒドは毒性が強く、頭痛や吐き気などの症状を引き起こす。
 そのため状態回復魔法クリアを使って、元の健康な状態に戻すことで、酒を再び飲めるようにしたのだ。
 ただ皆が見ている前で魔法を使うことは出来ないので、度々トイレに行っていたという訳だ。

「それでどうする? さすがにこの三人をお前のものにするという願いは勘弁してほしいのだが」
「そんなことしないから安心してくれ。だけど今すぐ願いは思いつかないから保留で」
「じっくり考えるということか。何を頼まれるか怖いな」

 本当は何を願うか決めてある。だけど今それを言うと不心感を抱かせることになってしまうので、伝えることは出来ない。

「それじゃあ俺は行くよ。楽しい時間をありがとう」
「こっちこそ楽しかったぜ。次はアルドリックとして会うかもしれないな」
「ユート様、またのお越しをお待ちしています」
「今度は私を指名してくれると嬉しいわ」

 俺はアーノルド、アリッサさん、ダリアさんに見送られながら、会計をするためにフローラさんと受付へと向かった。

 いくらになるだろうか。グラフト産の酒もミュルヘン産の酒も高額だから金貨二、三枚はいきそうだが。

「お会計はどれくらいかな?」
「いえ、今日のお酒の料金は、アーノルド様がお支払いになるそうです」
「えっ?」

 俺は驚き後ろを振り向く。
 するとアーノルドは笑顔でこちらに向かって手を上げていた。
 やれやれ。そういえばアーノルド――アルドリックは太っ腹な所があったな。
 俺はアーノルドに感謝の意を示すために頭を下げる。

 こうして帝国の第三皇子であるアルドリックと接触することに成功し、俺は城へと戻るのであった。

 そして再び護衛の任務につくため、リリシアの部屋の前に行く。

「おうユート、戻ったのか」

 リリシアの部屋の前に戻ると、ザインが話しかけてきた。
 さっきまでは女の子に振られたためか意気消沈していたが、今は普段通りに見える。
 立ち直りの早い奴め。まあ引きずって護衛の任務に支障を来すよりはいい。

「何か変わったことはあったか?」
「今、ルドルフ皇子の使いとかいう奴が来てるくらいだな」

 ルドルフ皇子の使い? いったい何の用だ? あまり良い予感はしないな。
 そして程なくして一人の女性がリリシアの部屋から出てきた。俺達に頭を下げると、そのまま立ち去っていく。
 何のためにリリシアを訪ねて来たのか気になる。
 些細なことが未来を変えるかもしれないので、リリシアに直接聞くことにしよう。
 俺は部屋のドアをノックしようとするが⋯⋯

(大変です! 王女の様子が⋯⋯)

 突然頭の中にルルの焦っている声が響くのであった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

処理中です...