チートな王太子は身分をひた隠す〜聖獣の契約者である王子のお忍び冒険者生活〜

はいだ ゆを

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本編

第13話:先輩冒険者と再び

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「それにしてもなあー、明らかに生態系が狂ってきてるよな」

 サリトは自らが狩ってきた魔物たちを眺め、呟いた。

 ユリウスも森で遭遇した魔物たちを思い浮かべ、神妙な顔つきをしながら口火をきった。

 思い浮かべるのは森の中での様子。明らかに有り得ない魔物同士が、同じエリアに現れていた。

「ああ。まだ森が浅い所でもCランクの魔物と戦ったりもしたしな......低ランク冒険者の薬草採取の依頼も、今は少し危険かもしれない 」

「「だが......」」

 ユリウスとサリトはハモリ、そのまま考え込んだ。

「薬草採取は、低ランク冒険者たちの貴重な収入源だからな......」
「ったく、アイツらもドブ掃除とか雑用すりゃあ良いんだけどなあー」

 低ランク冒険者の依頼は殆どが薬草採取か、街中の雑用。だが、魔物を討伐する姿を夢見て冒険者になった者たちは、薬草採取はともかく雑用は嫌がるものが多かった。

 そこを嫌がらずにコツコツとこなした結果、ユリウスたちは街の人々に顔を覚えてもらえ、可愛がられているのだ。

「まあ、雑用依頼もそう数は無いし……」
「......大規模討伐が行われる時、参加が義務付けられたのは高ランク冒険者たちだけだが、低ランク冒険者たちも後ろから援護するぐらい義務づけた方が良いかもな」
「あー、弓とかでか? 確かに、それなら採取依頼が暫くの間潰れても大丈夫か」

 サリトはポリポリと顎をかいた。

「掛け合ってみっか、ギルド長に」
「!」
「Sランクの俺からの話ならあのオッサンも良く聞いてくれるだろうしなー」

 ユリウスは一つ頷いた。

「ああ。低ランク冒険者たちの安全の為でもあるし、考えてくれるだろう」

 二人が話し合っていると、ネルが言いずらそうに声をかけてきた。

「ああー......兄さん? ここカウンター前。ちょっと横にずれよーか」

 ネルがユリウスとサリトの腕を引っ引っ張り、横に移動させた。

「「あ」」

 二人が後ろを振り返ると、冒険者たちが沢山並んでいた。

「おい! 何立ち止まってんだユーリ!」
「オッサンもだぞ! Sランクのくせに何やってんだ!」
「威厳がないぞ!」

「すまん!」サリトが冒険者たちへと謝る。

「悪い、ここで立ち止まってする話では無かった」ユリウスはオドオドとしたまま、話に割って入れなかった受付嬢へと謝った。

「何やってんだ、騒がしいぞ」
「おう、オッサン! 良いとこに!」
「あ? サリトとユーリか。......って、お前にオッサン言われたく無いぞ!」

 ドレードの拳骨がサリトの頭へと落ちた。

「ギルド長、良いとこに。少し話がある」
「ッいって......俺も一緒にな」
「......二人が一緒って事は今回のスタンピード関係か」

 ユリウスたちは同時に頷いた。

「俺もお前たちの報告は直に聞きたいと思ってたし、丁度いい。そんなとこで騒いでないでとっととこっちへ来い」

 ユリウスたちは野次を飛ばしてくる冒険者たちへと「悪かったって」と謝りながら、受付裏の部屋へと足を踏み入れたのだった。

 
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