異世界転生したら『ハンペン』だけど俺は賭博駄女神(母)と追放悪役令嬢(嫁)と異世界をめっちゃ楽しく生きていく!!!!

白井伊詩

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カニカマ学園編

第22話「魔眼の持ち主」

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 スピロタ・モレリア――
 亜人種であるラミアと血を引いた人間との混血児、目は縦長の瞳孔にアッシュの瞳、長い舌の先は二股に分かれている。

それだけでも目立つがそれ以上に目を見張るのはその背丈、ベーゼの身長を大きく超える2メートルの長身を持つ。無口で自由奔放な性格と言われている。
 
 そこまで目立つのにベーゼとケルブスは一度もその姿を見たことが無い。アドルフィネも高等部になってからは一度も見かけてない。まさに雲隠れしていることになる。
 
 カニカマ学園を抜け出していることも考えられたが、何人かがスピロタを見かけたという証言が時より聞こえることから可能性は低い。
 
「寮もいない、学園にもいない……一体どこにいるのよ!」
「もう五日も探してるのにどこにもいねえってどういうことだよ。本当に身長2メートルもあんのか?」
「中等部の時にはそのくらいあったわよ! この目で見たもの!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
 
 ケルブスはベーゼとアドルフィネを落ち着かせる。
 
 ベーゼは教室の窓から外の風景をぼんやり眺める。すぐそこにある樹齢百は超えるであろうナラの木は青々と茂っている。
 
「ベーゼ聞いてる?」
「んあ?」
「だーかーらー! スピロタをどうやって見つけるかって話よ!」
「うーん、どうするか……もういっそ違うやつから見つけにいくか?」
「私が諦めたみたいで癪に障るわ」
「餌で釣るとか?」
「動物じゃないんだから」
「うーん、どうすっかなぁ」
 
「そもそも、なんでスピロタは僕たちが彼女を探しているのを知ってい――ッ!?」
 
 ケルブスが何かを言いかけた瞬間、硬直したままその場から数秒動けなくなった。
 
「ケルブス!? これって『阻止の魔眼』じゃない!?」
「てことはこの近くにいるってことだな! 廊下見てくる!」
 
 
 
 ベーゼは廊下に飛び出して周りを見渡すが人の気配はない。
 
「遅かった……?」
「幻覚系の魔法じゃないかしら?」
「やられたか」
 
 
「でも何でいきなり僕に魔眼を使ったんだろうね?」
「お、大丈夫だったか?」
「一瞬体が硬直しただけ。なんともないよ」
「それならいいけどよ」
 
「魔眼を使った理由……」
「追われていたのは私たちの方かも知れないわね。いいわこの勝負、受けて立つわ」
「隠れんぼか……得意だぜ」
「二人がそう言うなら、手伝うだけだよ」
 
 
 
 ****************
 
 
 
 しかし、三人は意識を改め二日間スピロタを探したが、時よりケルブスとアドルフィネが魔眼を受けるだけでその姿を見つけることができないままだった。
 
「なんで見つからないのおおおおおお! 朝から晩まであの女の部屋に張り込んでいたのに!!」
「しかもちょくちょくここにいるぜって感じで魔眼をアドルフィネかケルブスが食らってるな」
「なんでベーゼには魔眼を使わないのよ!」
「わかんねえよ……」
 
「あああああああ! おちょくられてる感じがしてムカつくわあああ!!」
 
 いつになくご乱心のアドルフィネをよそ目にベーゼは黒板にカニカマ学園のざっとした見取り図を描く。
 
「ゴチャゴチャ言っててもしんどいだけだ。状況をまとめよう」
「はぁ……そうね」
 
 ベーゼはケルブスとアドルフィネが捜索している場所を書き出して漏れないところがあるか確認する。
 
「うーーん、こりゃ探せるところはほとんどねえな」
 
「でも、僕たちが魔眼を食らっているのは高等部の敷地だけなんだよね」
 
「ケルブス……ああ、そうか! わかったかもしれない!」
 
 ベーゼはパズルが解けたようにニヤリと笑って黒板に×印を入れる。
 
「これは?」
「魔眼を食らった場所だよ。教室に校庭、その他諸々――」
 
 次々に×を入れていき、そしてそれらが全て収束する位置を示し出す。
 
「それが何なのよ!」
 
 
「……やっぱりな、スピロタは最初から動いていなかった」
 
 ベーゼは教室の窓を開けて大きく息を吸う。
 
「スピロタ!! 教室に入ってきてくれ!」
「ちょっとベーゼ、そんなの叫んだところで聞こえるわけ無いでしょ! 第一にここは二階の教室――」
 
 ナラの木から人影が飛び出し、窓枠に足をかける。
 
「正解、よく、見つけた」
 
 身長は2メートル、ベーゼでさえ見上げてしまうほどの背丈にスラリと起伏の無い胴体、身長に対し、へその位置が高い。
 黒のセミロングの髪は光が反射すると虹色に照り返す独特な髪質を持つ。
 
 スピロタは教室に入ると、ベーゼに近づき、長い舌を伸ばす。二股に分かれた舌が蛇のように動いてからすぐに口の中に収まる。
 
「俺は臭いか?」
 
 ベーゼはスピロタの嗅覚が人間と同じで鼻ではなく、鼻の形をしたヤコプソン器官であることが推察できた。彼女は蛇と同様で舌をチョロチョロ出すことで臭いを感じ取る。
 
「オス、臭う」
「そりゃあ悪かったな」
「別に」

「まぁ、それはそれとして、初めましてじゃないがベーゼだ。よろしく」
「ケルブスだ」
「アドルフィネよ」
「スピロタ、よろしく」
 
 スピロタと三人と握手をすると彼女は嬉しそうに縦長の瞳孔を細くした。
 
「え、じゃあずっとその木の上にいたわけ?」
「そう、授業、見てた」
「教室で見てなさいよ……」
「アメリカーナ、面倒」
「Fクラスなんだからあいつ気にしなくていいわ。どうかしら教室で授業を受けてみる?」
「わかった。次回以降、そうする」
 
 スピロタはあっさりと承諾した。
 
「でもなぁ、アメリカーナに見つからない方法が今度はネックになるな」
「それもそうね、スピロタの身長じゃ目立つものね」
「目立つ、申し訳ない」
 
「気にしなくていいよ。僕もそれなりに悪目立ちしちゃうから……」
「かぁー! イケメンはいいねえ!」
「ケルブスは女生徒人気がすごいわ」
「そうかな?」
 
 ケルブスは特に自覚していないためか首を傾げるだけだった。
 
「とりあえずスピロタはどうする?」
「衝突? 待機?」
「スピロタはそのどちらがよいのかしら?」
「争いは好まない」
「そう、それなら――」
 
「報復は、嫌い、じゃない」
 
 スピロタは静かにそして彼女もまたAクラスに対して腹に一物があるようだ。
 
「じゃあ誇示しなくちゃね、スピロタは健在って」
「わかった」
 
 スピロタは首を縦に振る。それから少しの間を空けてから尋ねる。
 
「私、怖くない?」
「いや別に?」
「背が高いから見下ろされるとちょっと怖いくらいかしら?」
「特に?」
「そう……私、ラミアの舌、体人間、だから、うまく、喋れない」
「こっちが慣れりゃいいだけだろ?」
「ありがとう」
 
「それだけ言えりゃ十分じゃねえか。しかしラミアか……一回は本物を見てみたいな」
「蛇、好き?」
「知らないようだから説明するけどベーゼは生き物なら何でも好きなのよ」
「変態?」
「せめて研究者と言ってくれないか……」
「だから、蜘蛛族の女、仲いいの?」
「蜘蛛……あっパープレアか。そんなところだ」
「変態」
「もうどうとでも言え」
 
 スピロタは口角を上げた。三人が思っている以上に彼女は心優しい人間のようだ。
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