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対抗戦編
第40話「報復」
しおりを挟む更衣室でベーゼは連隊戦の準備を始める。
「ベーゼ……痣が」
「ん? どしたケルブスそんな顔色変えて?」
「左腕まで痣が伸びてる。背中もすごいことなってるよ」
「うーわマジかよ……」
「どうしたござるか……ってベーゼ殿腕が!?」
「ローチ……今その話をしてたところだ」
「そうでござったか」
「んー、みんなどうしたの……ってベーゼ!?」
「コーラーお前もか」
「いやだって痣が!」
「騒がしいぞ!! どうしたんだ!! うお! ベーゼの痣が――」
「レギウスお前までいわんでいい! 何回目だ!」
「これが天丼か……」
三人がざわつく中、ベーゼは上着を被り、アームカバーを装着して痣を隠す。
「まぁ大丈夫だろ」
「聖痕だっけ? クーリーさんから聞いたよ」
「どっかも神様の祝福でもあり呪いでもあるってさ。いい迷惑だぜ」
「そうだね」
ケルブスはベルトに剣を二本吊すと、準備を終える。
「俺も準備よし! さて、今日こそは本気出せるな」
「個人戦は知力と魔法は2対0で勝利、闘技と舞踊は負け。これでどっちが代表か決まるでござる」
「ローチお前負けたのか……」
「ベーゼ殿が棄権した時点で裏があったのはわかったでござる。小生の手の内を探られるよりわざと負けて相手に見誤った実力を教えたかったでござる」
「舞踏はすまない! 最後の最後でステップを間違えてしまった!」
「レギウスは謝るな。そもそも俺が余計なことした。母さんならあいつらを軽く捻れたしな」
「まぁまぁ、これで勝てばいいだけの話じゃないか! 気張っていこうよ!」
コーラーの言葉に三人は鼓舞され、意気揚々と会場に入っていった。
****************
「全員揃ったわね」
アドルフィネが木箱の上に立つと胸を張っている。しかしスピロタはアドルフィネを上から眺めている。
「ベーゼの問題も解決したし、何よりもAクラスには沢山の借りがあるわ! ぶっ殺すわよ!」
ついつい本音を漏らすアドルフィネに全員が「おー!」と返す。
「じゃあ、小生らは戦陣に切り込ませてもらうでござる」
「じゃあな!」
「試合開始の合図が鳴るまでは交戦しないようにね!」
「オッケー」
「承知したでござる」
ベーゼとローチは森へと先行する。
「なぁローチ」
「どうしたでござる?」
「なんでお前実力を隠すんだ?」
「…………」
「だってお前強いだろ?」
「嫌味でござるか?」
「そんなんじゃねえけど」
「……昔、小生の先祖にクロハンペンに亡命したものがいるでござる。一家は反逆罪としてクロハンペンとの国境にある場所に流刑。だから貴族連中に目をつけられるとそれを蒸し返されるでござる」
「だから地味を装って……」
「そう言うことでござるが、昨日、クーリー殿と話をしたでござる」
「あっ、そういやクーリーが人の言葉を――」
「その通りでござる」
「んで、その後の話は?」
「今はまだ話せぬでござる」
「わーったよ。力になっからそん時は言えよ?」
「かじけないでござる」
天に閃光が走る。ドォンと花火でも鳴るような音が炸裂した。
「始まったでござるな」
ローチは地面から水を吸い上げると服の下からライフル銃を取り出す。
「えっ!? 銃!?」
「これは小生の一族が開発した水圧作動式銃でござる。元は魔力作動式でござったがスペリオルスキルにも対応させた武器でござる」
「剣買ってたじゃん……」
「帳簿見るなんて簡単に誰でもできるでござる。それに小生は狩人でござるよ?」
「それもそうか」
バキッ――
「枝を踏んだでござるな。足音も聞こえるでござる。ひとつふたつみっつ……四人でござるな」
「なんでわかるんだよ!?」
「耳を澄ませるでござる」
「その必要はない!」
草木を斬りわけてリナレウスが現われる。その後ろにはサルカツスにアメリカーナ、ラテラリスが現われる。
「この数は厄介でござるな……」
ローチは涼しい顔で嘘をつく。
「ローチ、悪いが救援を頼めるか?」
「しかし――」
「まぁ、そのなんだケルブス達も心配するだろ?」
「……いいのでござるな?」
「こいつらぶっ殺す、一人で借りを返す」
「承知したでござる!」
ローチは水を操ってまるでウォータースライダーのように加速しながら移動していった。
「あれれ、仲間に見捨てられた? 捨て駒かなぁ?」
「さぁな」
「まぁいいや、さてわかってるよね君が俺に逆らうとどうなるか?」
「母親か」
「その通り!」
「どうぞ好きにしてくれ」
「粋がるね! 表情を隠しているようだけどそのポーカーフェイスの裏はどうなってるのかな?」
ベーゼはニヤッと笑う。
「何なら観客席見てくるか? 暢気に手を振ってくれるぜ?」
「貴様……ふふ……ふははは!」
リナレウスは腹を抱えて笑う。
「……なに笑ってやがる?」
「いつ、人質が君の母親だけって言った?」
「どういうことだ」
「ウメヤキ村……小さい村だよね。あー、たしかケルブスだっけあのいるだけで俺たちの邪魔をするやつ。たしかあいつの家もウメヤキ村だよなぁ」
「テメエ……」
「策ってのは二重三重に張り巡らせるんだよ!」
リナレウスは勝ち誇ったようにベーゼに歩み寄る。それに付いていくように残りの三人もベーゼを包囲する。
「……ふふ、あっはっはっは!」
「何を笑っているベーゼ?」
「そうだよなウメヤキ村、確かに……お前ぐらい権力があればそれもできるな」
「だから何を笑っている?」
「なあリナレウス、俺が何者かわかるか?」
「ただの平民さ」
「そうか」
首をぐるりと回し、指を鳴らし、アームカバーを外す。
「なんだ……その腕……」
赤紫色の痣は赤熱し、陽炎が立つくらい熱気を放っている。
「これが、俺の答えだ」
ベーゼは右拳を固めるとリナレウスを殴り飛ばした。
その瞬間――ベーゼの中で何か弾けた――。
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