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01 ジンクス

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 僕は気合を入れて机に頭をつける。

「え?寝るのですか?」

 川名さんが驚く。

「うん。
 授業なんて寝てても頭に入ってくるから……」

 僕がそう言うと宮崎さんが、覚めた口調で僕を睨む。

「この人のこういうところが腹立つのよね」

 そう言い残して自分の席へと戻る。
 まぁ、授業中寝ているやつに成績が負けたら腹が立つのも問題ないか……
 勝たないように今度のテストも調整しないといけないかな。

 僕は、そう思うと深い眠りについた。

 チャイムが鳴る。
 それと同時に誰かが僕の頭を優しく叩く。

「一、ご飯の時間だよ」

 美姫の声だ。

「ん……
 もうそんな時間?」

 僕が、そう言うと護の声が耳に入る。

「早く起きなければお前の弁当も食っちまうぞ」

 それは困る。
 僕は、ゆっくりと体を起こし周りを見た。

 護と美姫がいる。
 そして、川名さんも近くいる。

「川名さんも良かったら一緒にお弁当を食べようよ」

「いいのですか?」

「うん」

 川名さんが、恥ずかしそうにそう言ったので僕はうなずく。
 お弁当はひとりで食べるよりみんなで食べたほうが美味しい。
 なので、宮崎さんの方を見る。
 この機会だ、嫌われていても友だちになってみよう。

「な、なに?」

 宮崎さんが少し困った顔をしている。

「宮崎さんも一緒に食べよう?」

「え?」

「それいいね!
 宮崎さんも一緒に食べようよ!」

 美姫が、そう言って宮崎さんの方を見て笑う。

「えっと……」

 宮崎さんがかなり困っている。

「そうだな、宮崎も来いよ。
 一の嫁候補は多い方がいい」

 護がそう言うと宮崎さんの顔が少し赤くなる。

「なんで嫁になるのよ。
 そういうのは手順を踏んでから……」

「まぁ、そんなわけで宮崎さん。
 貴女を逮捕します!」

 美姫が、そう言って宮崎さんの手を引っ張る。

「もう……
 仕方がないわね」

 宮崎さんは、そう言ってゆっくりと立ち上がる。
 そして僕らは、中庭へと向かった。
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