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03 歌われること

05

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「あー
 護と旅行!
 楽しみだなぁ―」

 美姫が嬉しそうに笑う。
 僕の心がチクリと痛む。
 わかっているんだ。
 僕の恋は実らない。
 だって、僕はジンクス持ちなのだから。
 さらにマイナスのジンクス持ち。
 僕が好きになった人は他の人としあわせになる。
 そんなのわかりきっている。
 だけど、僕だってしあわせになりたいな。
 僕にもしあわせ訪れないかな……

「楽しみにしてるぞ!
 ちゃんと勝負下着つけてくるんだぞ!」

 護がそう言って握りしめている美姫の手をさらにぎゅっとした。

「斎藤くんの手は、私が握りましょうか?」

 川名さんが、そう言って僕の手をぎゅっとしてくれる。
 なんだろう?この気持は……
 川名さんの優しさが心にしみる。

「あ……
 なんか取り残された感じがするのはなぜかしら??」

 宮崎さんが、そう言って笑うだけどどこか悔しそう。

「宮崎さん。
 手はどうしてふたつあると思いますか?」

「え?便利性とバランス性の関係?」

「違いますよ。
 ふたりと手をつなぐためですよ」

「それって、なんか違わない?」

 僕がそう言うと宮崎さんが僕の手の上に自分の手を置く。
 宮崎さんがちょっと照れている。
 ちょっと宮崎さんが可愛く見える。
 でも、それもすぐに終わる。

「だめよ!
 峰子ちゃん!」

「え?」

 葉月先輩が、僕の手の上においている宮崎さんの手を引っ張る。

「峰子ちゃんのおてては、私のもの!」

 葉月先輩が、そう言ってきゃっきゃと騒ぐ。
 葉月先輩は、小悪魔だね。
 僕の両手に華の時間が終った瞬間だった。
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