ジンクス∞漁猫∞～君と僕の物語

06 君なき日々

01

　何も響かない。
　何も届かない。
　毎日ごはんを作りに来るって言ったじゃないか。
　毎日朝、起こしに来てくれるって言ったじゃないか。
　あれ以来、君は僕の前に現れなくなった。
　アパートの大家さんも居場所はわからないらしい。
　バイト先にも連絡したけどわからない。

　川名さん、君は今、どこにいるの？

　あれから一ヶ月が過ぎる。

　夏休みの事件なんてなかったように時は流れる。

　授業もある。
　ないのは、美姫と護の机だけ。

　無情なまでに時間だけが流れる。

「斎藤くん」

　宮崎さんが声をかけてくれる。

「あ……宮崎さん」

「お弁当食べない？」

　僕は時計を見る。
　12時だ。
　もうそんな時間か。

「うん、食べる」

　僕は、カバンからパンを取り出す。

「じゃじゃん！
　今日は、私がお弁当を作ってきたわよ」

「え？」

　宮崎さんが、そう言ってお弁当を2つ取り出す。

「……いいの？」

「うん」

「ありがとう」

　僕は、そう言って手を合わせて食べる。

「美味しい」

「プロ並みだからね」

　宮崎さんが小さく笑う。
　川名さんの話には触れない。
　きっと僕が傷つくと思っているのだろう。
　宮崎さんは、学校が始まってからいつも一緒にご飯を食べてくれている。
　最初は、嫌な人だと思っていたけれど優しい人なんだなって思う。
　ちょっと油断すると好きになってしまうくらい優しくしてくれている。
　だけど、僕はもう誰も好きにならない。
　好きになった人を失うなんてつらい思い。
　もう二度と経験したくない。
　川名さんもそうなのかな？
　川名んさん、今君は何をしているの？
　ご飯食べてる？きちんと眠れてる？
　僕は、こうやって毎日川名さんのことを考えている。
　きっとこれが好きってことなんだろうな。
　じゃ、川名さんは僕以外の人としあわせなのかな？
　そうだといいけど、川名さんもジンクス持ちだって言っていた。
　僕のジンクスの効果なんて効かないんだろうな。
　川名さん、自殺とかしてないよね？