上 下
58 / 71
06 君なき日々

04

しおりを挟む
 僕が、職員室に訪れると担任が僕の方を見て笑う。

「そろそろくるところだと思っていたよ」

「え?」

 担任は、ゆっくりと僕に近づきそして指導室へと案内される。

「川名みさきさんのことだろう?」

「はい」

「あの子は今……
 バイト先の工場で休まず働いているよ」

「バイトですか?」

「学校も辞めるそうだ」

「どうして……?」

「あの子も君と同じ苦しみを持っていたんだ。
 あの子のジンクス【好きになった人は必ず死ぬ】というやつにね」

「川名さんもジンクス持ちなのですか?」

「そうだよ。
 君もだろう?斎藤一くん」

「……先生はどうしてそれを?」

「僕は、どんなジンクスも効かないジンクスを持っているんだ。
 それに見分ける方法なんていくらでもある。
 教えはしないけどね」

「……そうですか」

「行かないのかい?」

「何処へですか?」

「彼女の元へさ。
 今ごろ泣いているかもしれないよ。
 ひとりぼっちのさみしさは、君が一番良く知っているんじゃないのかい?」

「そうですね」

 先生は一枚の紙を僕に渡す。

「ここに彼女はいるよ。
 今すぐ行って抱きしめてこい」

 担任は、そう言って笑う。
 僕は、先生にお辞儀をしたあとその場を去った。
 行くんだ。
 そして、僕も打ち明けよう自分がジンクス持ちであることを……
 そして、護も美姫もジンクス持ちだったってことを……
しおりを挟む

処理中です...