泣けない僕と泣き虫な彼女

はらぺこおねこ。

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Scene01 やさしい世界

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「それがどうした?
 そいつらは、俺の奴隷だ。
 奴隷が奴隷商人をやって奴隷を扱う。
 こんな楽しい話ほかになにかあるか?
 さぁ、ドラゴンよ!あの小僧を焼き殺せ!」

ドラゴン使いの商人が、そう言ってドラゴンに言います。
ドラゴンは、それに従い火を吹きます。
若者は、その炎を避けます。

「避けるだけか?
 避けるだけでは、ドラゴンは倒せないぞ!
 はは!」

ドラゴン使いの商人が嬉しそうに笑っています。

「悔しいけどあいつの言うとおりよ。
 あのドラゴンを斬らなければ殺られるわよ!」

狂音が、そう言って悲鳴をあげます。

「五月蝿い……!
 なんだこれ?
 耳鳴りが止まんないぞ……!」

ドラゴン使いの商人が、頭を抑えながら若者を睨みつけました。

「あいつもなかなか強いみたいよ!
 私のフレイジーバウンドが通じないもの!」

「うん。
 あのドラゴンさんも強いですよ!
 皮膚がとっても硬そうです!」

若者は、そう言って周りを見渡します。
若者は何かに反応しました。

「どうしたの?」

狂音の質問に若者が答えます。

「声がする」

「声……?しないわよ?」

狂音が、そう言うと若者は一本の傘を見つけました。

「傘……?」

若者がゆっくり。
ゆっくりと傘に近づきます。

「おいおいおい!
 俺は無視か?
 さぁ、ドラゴンよ!
 その小僧を焼き尽くせ!」

ドラゴン使いの商人がドラゴンに指示を出しました。
するとドラゴンの口から灼熱の炎が広がります。
若者は、狂音を鞘に収め傘を広げました。
灼熱の炎は、その傘により防がれました。

「俺のドラゴンの炎が効かないだと?」

「はい、この傘……
 僕のです。オリハルコンで出来ているんです。
 ドラゴン程度の魔力の炎なら余裕で防いでくれます」

「ドラゴン程度だと?
 お前は、ドラゴンの恐ろしさを知らないようだな!
 さぁ、焼いて焼いて焼き尽くせ!」

ドラゴン使いの商人が、そう言ってドラゴンにいいます。
ドラゴンが、炎を吐く。
若者が、その炎に突っ込む。

「華時雨・雨笠」

若者は、そういうと炎がその傘、華時雨に吸い込まれていきました。
若者が、そのドラゴンの口の中に傘をねじ込みます
そして傘を折りたたみます。

「華時雨・折笠」

若者が、そう言って先ほど吸収した炎の魔力を一気に解き放ちます。
ドラゴンの口の中で、魔力は爆発しドラゴンは気絶しました。

「俺のドラゴンを一撃で倒しただと?」

「ドラゴン一匹……
 この華時雨があれば、簡単に倒せますよ。
 しかも、炎しか吐けない一色ドラゴンなんて簡単です」

若者はそう言ってドラゴン使いの商人に向けて狂音を向けます。

「頼む!命だけは……!」

ドラゴン使いの商人は怯えた声で若者に命乞いをしました。

「見苦しいわね」

狂音が、そう言葉を放ちました。

「命だけは!」

ドラゴン使いの商人が手を合わせて頼みます。

「なら、両手両足をもいだろか?」

そう言ってひとりの少女が現れます。
黒髪の眼鏡の少女です。

「あ、貴方さまは……」

ドラゴン使いの商人が、腰を抜かしました。

「ウチは、ハデス。
 魔獣商人のハデス!
 人身売買は協会で禁止されてんねんで!
 アンタは、協会違反を犯した。
 よって逮捕させてもらうわ」

ハデスと名乗る少女が、そう言うと手にロープを召喚します。
そして、ドラゴン使いの商人をあっという間に拘束しました。
そのままハデスは、その若者の方を見ます。

「アンタ、強いな。
 名前は?」

「名前?」

若者が首を傾げる。

「名前ないんか?」

ハデスが、若者に尋ねます。
すると狂音が答えます。

「フェニーチェよ」

「フェニーチェ?」

ハデスが、目を細めました。

「不死鳥って意味よ。
 今、思いついたの。
 だって今のこの子の魔力は、不死鳥レベルなの!」

「……そっか。
 フェニーチェ。いい名前やな」

「あとこの子、記憶もお金もないから寄付してくれると助かるわ!」

狂音がそう言うと、ハデスが笑う。

「寄付は嫌いやから仕事を紹介したるわ」

「あ、ありがとうございます」

フェニーチェの名前を貰った若者が、小さく頭をさげます。

「ああ、よろしくやな!」

ハデスが、手を出しました。。
フェニーチェも手を伸ばしふたりは、握手をしました。
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