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09 謳うものと唄われるもの

88 いつでもどこでも参上

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「はい、参上しましたよ」

男がニッコリと笑う。

「なんだおっさん!やるってか?」

しかし、男はジルを無視して少女に尋ねる」

「ジルさんはどこです?」

すると少女は首を横に振る。

「いません」

少女がそう言うとジルが怒鳴る。

「俺がジルだ!」

「……そうなのですか?」

「その人は偽物です」

少女が言う。

「ああん?」

「だって貴方は、私のこと知らないでしょ?」

「なにを言っているんだ?」

「私はジルのことを知っている。
 ジルは貴方のようなことをしない」

「……?」

ジルは首を傾げる。
ジルは目を閉じて考える。
なにかを思い出せる。
そんな気がしたから。

でも、それは間違いだった。

顎に強い打撃を受けたからだ。

ジルはそのまま意識を失った。

「はい!先生!
 倒しましたよ」

「源さんって呼んでくれないんですね」

「えー。あれは台本だったから……」

「名演技でしたよ」

「えへへへへー」

少女が照れ笑いを浮かべた。
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