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Scene08 ワインレッドの心
185 こんにちはの数だけさよならをいう
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「こんにちは」
恋次がそういうと菜花が言う。
「さようなら」
そしてふたりは笑う。
何度目かのやり取り。
何度も行ったやり取り。
小さく優しく。
温かい世界。
そんな姿を見て落ち込む水面。
どうして自分が選ばれないのか。
どうしてあそこにいるのは自分じゃないのか。
何度も何度も繰り返す自問自答。
答えなんて出ない。
2月14日のバレンタイン。
水面は恋次の下駄箱にチョコを入れようとした。
人の気配を感じる。
隠れる水面。
なにに隠れるのかわからない。
「げー下駄箱にチョコが入ってる」
キングアンドプリンスの岸くんにそっくりな通称きっしゃんがいう。
「いいじゃん?」
橋本環奈にそっくりな女の子、はっしーが照れながら笑う。
「知ってるか?俺の足臭いんだぞ?
つまりこのチョコも臭い、臭う。
そんなチョコ食えるか」
きっさんがそう言ってそのままチョコをゴミ箱に捨てる。
「知らない!」
はっしーが目に涙を浮かべてその場から離れる。
「すごいところを見ちゃったな」
水面が小さくため息。
歌声が聞こえる。
「生きていることがつらいなら……
一緒に笑って行けばいい。
親も兄弟も3日くらい。
笑ってくれるだろう」
校庭で安志が歌ってる。
「変な歌」
水面がそっと笑う。
「おっす、おかあさん」
「……」
水面が安志を睨む。
「えっと。
水面さん」
「よろしい」
水面が小さく笑う。
「れんれんにチョコ渡さないのかい?」
「恋次くんは菜花さんと一緒にいるのがしあわせなの」
「どうしてそう思いんだい?」
「恋次くんは、笑ってるから」
「君にも笑ってくれるだろう?」
「なんか違うの」
「ん?」
「菜花さんが可愛そうだから優しくするの。
そう思ってしまう私が嫌いで嫌いで仕方がないの」
水面が笑う。
「そっか」
「こんなに悲しいのに涙が流れないの」
「そっか」
「私もあんな風に笑いたい」
水面はそう言って空を見上げる。
「……うん」
「ごめんなさい。
こんなことを言って。
困るよね。今日はさようなら……です」
水面は安志に背中を向ける。
「こんにちは」
安志が小さく言う。
水面は驚く。
「え?」
「君が『さようなら』って言うのなら。
その数だけ僕は『こんにちは』を言うよ」
「……」
「でも『こんにちは』って言ってもらえたら『こんにちは』って返すからな」
「ばーか」
水面はそう言って涙をボロボロと流した。
校庭の上の屋上。
満が平吉に言う。
「青春だな」
「だね」
平吉がチョコを食べながら言う。
「チョコいいな」
満はため息を吐くと空を見上げる。
「とても同じ空の下にいるとは思えないな」
2月14日。
世界はバレンタイン。
寒空の下。
世界は澄んでいた。
恋次がそういうと菜花が言う。
「さようなら」
そしてふたりは笑う。
何度目かのやり取り。
何度も行ったやり取り。
小さく優しく。
温かい世界。
そんな姿を見て落ち込む水面。
どうして自分が選ばれないのか。
どうしてあそこにいるのは自分じゃないのか。
何度も何度も繰り返す自問自答。
答えなんて出ない。
2月14日のバレンタイン。
水面は恋次の下駄箱にチョコを入れようとした。
人の気配を感じる。
隠れる水面。
なにに隠れるのかわからない。
「げー下駄箱にチョコが入ってる」
キングアンドプリンスの岸くんにそっくりな通称きっしゃんがいう。
「いいじゃん?」
橋本環奈にそっくりな女の子、はっしーが照れながら笑う。
「知ってるか?俺の足臭いんだぞ?
つまりこのチョコも臭い、臭う。
そんなチョコ食えるか」
きっさんがそう言ってそのままチョコをゴミ箱に捨てる。
「知らない!」
はっしーが目に涙を浮かべてその場から離れる。
「すごいところを見ちゃったな」
水面が小さくため息。
歌声が聞こえる。
「生きていることがつらいなら……
一緒に笑って行けばいい。
親も兄弟も3日くらい。
笑ってくれるだろう」
校庭で安志が歌ってる。
「変な歌」
水面がそっと笑う。
「おっす、おかあさん」
「……」
水面が安志を睨む。
「えっと。
水面さん」
「よろしい」
水面が小さく笑う。
「れんれんにチョコ渡さないのかい?」
「恋次くんは菜花さんと一緒にいるのがしあわせなの」
「どうしてそう思いんだい?」
「恋次くんは、笑ってるから」
「君にも笑ってくれるだろう?」
「なんか違うの」
「ん?」
「菜花さんが可愛そうだから優しくするの。
そう思ってしまう私が嫌いで嫌いで仕方がないの」
水面が笑う。
「そっか」
「こんなに悲しいのに涙が流れないの」
「そっか」
「私もあんな風に笑いたい」
水面はそう言って空を見上げる。
「……うん」
「ごめんなさい。
こんなことを言って。
困るよね。今日はさようなら……です」
水面は安志に背中を向ける。
「こんにちは」
安志が小さく言う。
水面は驚く。
「え?」
「君が『さようなら』って言うのなら。
その数だけ僕は『こんにちは』を言うよ」
「……」
「でも『こんにちは』って言ってもらえたら『こんにちは』って返すからな」
「ばーか」
水面はそう言って涙をボロボロと流した。
校庭の上の屋上。
満が平吉に言う。
「青春だな」
「だね」
平吉がチョコを食べながら言う。
「チョコいいな」
満はため息を吐くと空を見上げる。
「とても同じ空の下にいるとは思えないな」
2月14日。
世界はバレンタイン。
寒空の下。
世界は澄んでいた。
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