喫茶★失恋

はらぺこおねこ。

文字の大きさ
72 / 93
05 にょ

72

しおりを挟む
 空は青く。
 海は青い。

 でも、いつかは赤くなるんだ。
 そんな事、考えた事もなかった。

 私は、先生に博くんの事を尋ねた。

「にょにょにょにょにょ」

 しかし、先生は困った顔をして苦笑いを浮かべた。
 港ちゃんも私の傍にやって来た。
 港ちゃんは、じっと先生の顔を見つめて、博くんの事を聞いていた。
 私は、目を見たらわかるけど、先生にはわからなかったのか、今度は困った顔をした。
 私は、考えた。
 どうしたら、先生に伝わるかな?

 私たちは、一生懸命頭を悩ませた。
 そして、私は思いついた。
 文字で伝えよう。
 私は、紙と鉛筆を取り出し、文字を書いた。

「ひろしくんは?」

 先生は、ゆっくりと私の頭を撫でて言いました。

「博君はね、今、病院で入院しているんだー
 瞳ちゃんと港ちゃんもお見舞いに行く?」

 私たちは、コクリと頷いた。
 私たちは、先生に手を引かれ大きな病院に向かった。

 私は、この病院を知っている。
 ママが死んだ時に来た病院だ。

 505号室。

 そこに博君が居た。
 だけど、少し様子が変だ。

 髪の毛が無かった。

「にょにょにょにょにょにょにょ?」

 私はびっくりした。

『どうしたの?』

 って聞きたかった。
 だけど、言葉にならない。

 博くんは、照れくさそうに笑いながら言った。

「髪の毛全部、抜けちゃった」

 私は、ゆっくりと博くんの手を握った。
 
「どうしたんだよ?」

 私でも、どうしてかはわからない……

 だけど、そうしないと、不安で不安で仕方が無かった。

 今、握りしめておかないと、博君がどこかへ消えてしまいそうで怖かった。

 気づいた時……
 私は、ボロボロと涙を流していた。
 何故だかわからないけど……
 涙が流れた。

「どうしたんだよ?」

 博くんが、そう言うと笑った。
 港ちゃんは、私の頭をいい子、いい子してくれた。

「にょにょにょにょ……」

 言葉が出ない、何を言ったらいいのか解らない……
 ただ、私は、『にょ』しか言えなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...