マーメイド

はらぺこおねこ。

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03 大好き

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「貴方はもしかして久留里先生ですか?」

 しかし、美知子がそう尋ねるとその男がうなずく。

「あ。うん。
 僕は、久留里十三だよ。
 でも、先生はやめて欲しいな。
 照れくさい」

 十三は、そう言って照れてみせる。

「美智子さんの知り合い?」

 壱が、そう尋ねると美知子が首を横にふる。

「久留里先――
 いえ、久留里さんは、優秀で有名な研究員なんです。
 世界で唯一、バリアとかビーム、レーザーの開発に成功した人です」

「よくわかんないけど、すごい人なんだね」

 壱が苦笑いを浮かべた。

「そうです。
 とてもとてもすごい人なんです」

 するとリーダー格の男が言った。

「糞が!
 覚えてやがれ!
 久留里十三!
 名前は覚えた!研究員だがなにか知らないが親父の権限でお前の首を飛ばしてやるからな!」

 そして、男子高生たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

「君たち怪我はないかい?」

 十三が、そう尋ねると梨麻が答える。

「俺は大丈夫っす。
 だけど彼女は……」

 そう言って服が敗れた女性の方を見る。

「……あ、私は大丈夫です。
 あの何が起きたのでしょうか?」

 十三以外の者たちみんなが知りたい状況だった。

「ああ、悪は滅びるべきだからね少しお灸をすえたんだ。
 一応、警察にも連絡しているから、もうすぐ来ると思うよ」

 十三が、そう言ったとき。
 すぐにパトカーのサイレンの音が鳴り響き壱たちの周りに集まった。

 このあとすぐに婦女連続暴行事件の犯人がわかり。
 あの男子高校生は逮捕されることになった。
 逮捕された男子高生の父は政治家だった。
 もちろんのことながら、父親はもみ消そうとしたが十三が提出した動画によりそれは叶わなくなった。
 父親の辞職とともにこの事件が解決した瞬間だった。



「結局、あの人は何者だったんっすかね?」

 梨麻が、病院の庭でそう言って呟く。

「わかんない。
 でも、ものすごく強い人だったね」

 となりで、壱がそう言った。

「そうっすね……
 って、壱さん凄いっすね。
 本当に警備会社の社長になってる。
 菜々が好きだったパンダの絵。
 壱さんが描いたパンダの絵が、マスコットキャラクターになっているし……」

「うん、やっぱり僕は――」

「いえ、その続きは知りたくないっす」

「そっか」

 壱は小さく苦笑いを浮かべた。
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