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02 目覚める者たち

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「くそ、この女!
 舐めやがって!」

「貴方見たいに下品な人がいるから、この資格に試験が必要になってくるのよ」

 ティコは、そう言うと男の方に指を向けて呪文を唱えた。

「アッシュ!」

 ティコの指先から黒い矢が飛び出る。
 そして、黒い矢が男に触れた瞬間。
 男は、黒焦げになった。

「手加減してあげたから、死なないと思うけど……
 救護の人、この人を治療してあげて!」

 ティコは、そう言うと男の体を魔法で浮かせた。
 そして、同時にティコを囲んでいた男達の体を浮かせた。

「じゃ、みなさんバイバーイ」

 ティコが、そう言うと男達は一斉に会場の外へと吹き飛んだ。

「そろそろ読んでいる小説の続きが気になるから早く帰りたいんだ。
 棄権したい人が居たら、今のうちに棄権してね。
 次からは、ちょっとだけ本気を出させてもらうから……」

 ティコが、そう言うと何名かの人間が手を挙げた。

「棄権します。」

 こういうモノは連鎖するもので、一人が棄権するとまた一人と次々と手を挙げていく。

「そうそう、今、無理して試験に受からなくても、次もあるから無理しなくていいんだよ」

 そして、残ったのは亜金を含めて20名だけとなった。

「あらあら、20名も残ったの?
 ここまで、脅してこんなに残れるなんて思っていなかったわ」

 ティコは、そう言ってニコニコと笑った。

「ご褒美をあげなくちゃね……
 私に一撃でも与える事が出来た人には、特別に国家試験を授与するわ!」

 それを聞いた周りの魔法使い達は、我こそはと自分が一番得意な呪文の詠唱を始めた。

「ソーラレイ」

「ラ・ムール」

「ドラコフレア」

「ボム」

 それぞれの魔法が、ティコに命中する。
 しかし、ティコは再びクスリと笑うとこう言った。

「リフレクシールド!」

 ティコの周りに虹色のカーテンが、現れ魔法をそのまま返した。
 受験者達は、自分が出した得意な魔法が命中しその場でぐったりと倒れた。

「残ったのは、亜金君だけね……」

 ティコは、そう言って亜金の鼻をチョンと突いた。

「あ、はい……」

「亜金君は、どうして攻撃魔法を使わなかったのかな?」

「攻撃魔法が苦手でして……」

 ティコは、そこまで聞くと亜金の頭に手を当てた。

「スリーピング」

 亜金は、眠気に襲われそのまま床に倒れた。

「はぁ、今年も合格者なしかぁ~~」

 ティコは、そう言うとその場を去った。

――喫茶店・クルクルチョキ


「で、亜金は失格になったのか?」

 玉藻がため息をついた。

「はぁ……
 ティコさん相手に傷を与えるなんて無理だよ」

「そんな事を言っているから落ちるんだ。
 みんな出来ると思って受験しているんだぞ?」

「そうだけどさー
 ティコさんに勝てと言う事自体無理な話だよ。」

「マイナス思考。
 亜金の悪い癖だ」

 玉藻は、ため息をついた後言葉を続けた。

「そもそも亜金は、どうして攻撃魔法が苦手なんだ?」

「ほら、俺って魔族の血が流れているだろ?
 攻撃魔法を使うと、その血が騒ぐって言うか……
 制御出来なくなるんだ」

「制御しようとしないから、制御出来ないんだ」

「こらこら、そんな意地悪を言わないの」

 そう言って現れたのは、クルクルチョキの女主人である火恋(かれん)だった。
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