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07 しあわせになりたい

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「なんなんだ?お前は……」

 怪人がいう。

「なんだろうね」

 男が答える。

「俺がお前みたいなおやぢに負けるものか!」

 怪人がそういって男に銃を向ける。
 そして容赦なく躊躇いなく銃を放った。

 男の額に銃が当たる。

「そうなのかい?」

「な、なんで死なない?
 ダイアモンドすら撃ち抜く俺の弾丸が!!」

「なんでだろうね。
 おじさんにもわからないよ」

 男が小さく笑う。

「クソ!この化物が!」

 怪人は大砲を召喚し男に向けて放った。

「……満足したかい?」

 男は優しく笑う。

「これも!これさえも!効かないのか!?
 化物か?」

「化物……なのかもだね」

 男は目を閉じる。

「……これならどうだ!」

 怪人が剣を構え男を刺した。
 刃は男の胸を貫く。
 しかし男は微動だにしない。

「さぁ、懺悔の時間だ」

 男はそういって怪人の体を突き飛ばす。

「懺悔だと?」

「君たちは人を殺しすぎた」

「殺しが悪いだと?殺しは俺ら怪人の本能だ!」

「そうだね。
 だから僕は君を殺す。
 僕は僕の本能で人に仇なすものは全て滅ぼす」

「なぜだ?なぜだ?なぜだ?
 俺はまだ死にたくない!」

「そういって命を乞う人を君は何人殺した?」

「……俺は!」

「だから、さよならだ」

「嫌だ!俺は死にたくない」

 怪人は男に背を向ける。

「僕は今から君にパンチをする」

 怪人は走り出す。
 逃げて逃げて逃げ延びて。
 いつかこの男を殺して復讐する。
 そう誓って走った。

「パンチ。空振り」

 怪人の右肩が吹き飛ぶ。

「あ……?」

 怪人は驚く。
 その威力に。

「お前は何者なのだ?
 その威力、もしかしてあの方の盾さえも――」

 怪人は最後までその言葉を言うことなく塵となった。
 男は言った。

「僕は何者でもないよ。
 ただの『おやぢ』さ。
 そしてただのサラリーマンさ」

 男の名前はサラリーマン。
 サラリと現れサラリと怪人を倒す男。
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