おねこのさんぽみち

はらぺこおねこ。

文字の大きさ
43 / 61

ほんわか:ツンデレサンタ

しおりを挟む
 僕はクリスマスは嫌いだ。
 僕には家族がいる。。
 だけどみんな優秀だからクリスマスの日は仕事に出る。
 と言っても、今は別々に暮らしている。

 1年の中で、クリスマスは僕だけがひとりぼっち。
 みんな、サンタと一緒に仕事か恋人や家族といる。
 と言っても、みんながいたらいたで虐められるから嫌なんだけどね。

 僕は、部屋を出て空を見上げる。
 そこには、沢山の星が輝いていた。

 少し歩こう。

 僕は、白く輝く道を歩くことにした。
 冷たい道を白い息を吐きながら歩く。
 冷たくて心がきゅんとするまたそれが心地良い。

 僕は人に見つからないように、静かに歩いた。
 僕の鼻は赤い。
 赤いからといって特別なことなんてひとつもない。
 いじめの対象になるだけだ。

 僕が外に出れるのはクリスマスの誰も居ない夜だけ。
 そう言う意味ではクリスマスは好きかも知れない。

 僕は崖を飛び越える。
 冷たい風が肌を刺激し身軽な身体が宙に浮く感じは、まるで空を飛んでいるような感覚。

 これが原因でトナカイが空を飛べると町に噂が立ってしまったことがあったな。
 懐かしい。
 あれは僕が崖を飛び越えた姿を人に見られてしまったからなんだ。
 それから僕はクリスマス以外道を歩く事を禁止されてしまったんだ。

 僕は色々なことを考えながら走った。
 走って、走って、走った。

 20キロくらい走った。
 少しスピードを落とそう。
 そう思ってペースを下げたとき僕は鋭い鞭で打たれた。
 僕はびっくりしてこけてしまった。

「トナカイみっけ」

 僕が振り返ると、そこには真っ赤な衣装を着た女の子が仁王立ちで構えていた。
 その足元には、白い大きな袋が置かれていた。

 誰?サンタさん?
 でも、サンタは目立たないように規約でに全身黒い服が指定されていたはず。
 赤なんてあんな目立つ姿ありえない。

 僕は震えた。
 震えながら訪ねた。

「誰ですか?僕の鼻が赤いからそんなことをするのですか?」

 僕の鼻は赤い。
 それが理由で化け物扱い。
 猟銃で撃たれたことなんていっぱいある。
 また僕はいじめられるのか。
 僕は絶望した。

 赤い服の女の子は、口を低い声で言った。

「あなた、私のソリを引きなさい!」

 ん?どういうことだろう?
 もしかして本当にサンタ関係の人?

「あの……
 僕、君のことあんまり知らないんだけど」

 僕は普通の会話をしたつもりだった。
 するとこの女の子は僕に怒鳴りつけるようにいった。

「イヤなの?乗せるの?どっち!?」

 僕は反射的に乗せると言ってしまった。
 まぁ、堂々と街を歩けるのならいいか……
 僕は、そう納得する事にした。

 彼女は、僕に荷物をつけると、ソリに乗り手綱を引っ張った。

「てっきり、その鞭で叩かれると思ったよ」

 僕がそういうと彼女は、手綱を強く引っ張り

「なに?叩かれたかったの?」

 僕は何も言えなかった。
 暫くの無言の中、彼女の方が先に口を開いた。

「あなた、名前は?」

「僕は、ルドルフ。君は?」

「私は、ミラ=ニコラ=ニコラウス。
 ミラで良いわ」

「そっか。
 ミラはやっぱりサンタ関係の人?」

「あなたには私がサンタに見えなくて?」

「え?でも、サンタが赤い服だなんて、目立っちゃうよ……」

「黒い服なんて、喪服みたいでやーよ。
 赤いほうが可愛いじゃない」

「そ、そうだね……」

 僕たちは、他愛もない雑談を交わしながら、街に行きプレゼントを子どもたちに渡して歩いた。
 しかも、手渡し……
 ミラ曰く、煙突から入ったら赤い服が“すすまみれ”になるし、足跡が床について大変らしい。
 子どもにばれないように進入するには、かなりの労力が必要らしいんだ。
 よくよく考えたら、男のサンタは体重が120キロ必要なはず。
 だから、みんなどうやってそんな機敏に動けるんだろう?
 不思議だ。

 僕たちは、それから毎年一緒にペアを組んで子どもたちにプレゼントを渡している。

 サンタは毎年、僕にこう言うんだ。

「勘違いしないでよね!
 暗い夜道は、ピカピカのアンタが便利なだけなんだから!」

 僕は毎年あきれて苦笑いをするんだけどね。
 さて、今から君のもとに届けるね。
 最高で最愛のプレゼントを届けるために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

にたものどうし

穴木 好生
児童書・童話
イモリとヤモリのものがたり

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

かぐや

山碕田鶴
児童書・童話
山あいの小さな村に住む老夫婦の坂木さん。タケノコ掘りに行った竹林で、光り輝く筒に入った赤ちゃんを拾いました。 現代版「竹取物語」です。 (表紙写真/山碕田鶴)

生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち

はるかず
児童書・童話
生まれることもできない卵の雛たち。 5匹の殻にこもる雛は、卵の中でそれぞれ悩みを抱えていた。 一歩生まれる勇気さえもてない悩み、美しくないかもしれない不安、現実の残酷さに打ちのめされた辛さ、頑張れば頑張るほど生まれることができない空回り、醜いことで傷つけ傷つけられる恐怖。 それぞれがそれぞれの悩みを卵の中で抱えながら、出会っていく。 彼らは世界の美しさを知ることができるのだろうか。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

二本の枝

早乙女純章
児童書・童話
一つの木から、まっすぐに伸びる枝と、ぐにゃぐにゃに伸びる枝がありました。 ぐにゃぐにゃな枝は、寄り道ばかりで、下に伸びていっているので、大地はとても近い世界。 まっすぐな枝は空に向かってひたむきに伸びていき、太陽をとても近くに感じています。 二つの枝はどんどんはなれていきます。

処理中です...