2 / 3
めくるめく夜に
しおりを挟む
夜も更け、竜の里をあげての祝言の宴席が始まる。
唯一人『娶る』事が叶わなかった自分が宴席に出向けば、水を差す事になるだろう・・ロアンは参加の辞退を告げる。
周囲からの向けられる、気の毒そうな視線が居た堪れなかった。
一人夜の里をあてもなく彷徨っているといつに間にか、双子の子供に懐かれ手を引かれていた。
「こっち。こっちだよ。」
『娶り』の時期以外、人が訪れる事の少ない里だ、客人が珍しいのだろう。
子供といえど、小柄なロアンとさして身長は変わらず、驚くほど大柄だ。
また美しい顔立ちで、これもまた平凡なロアンとは比べ物にならない程整っている。
竜の末裔と言われる里の人々は、総じて美しく大柄な体躯に恵まれている。
だが彼らは、争いを好まず温和で竜と共に静かに慎ましく暮らしているのだ。
何処からか微かに歌声が聞こえてくる。
鈴の音の様に澄んだ声と言うのは、この様な音なのだと思わせる、美しい声だった。
ここに来て、どうやらこの双子がロアンを声の主の元へ案内しているらしい事に気が付いた。
林を抜け湖の畔へ出た先には、月の光を浴び金色に輝く髪を靡かせ歌う美女が佇んでいた。
あんな夢みたいに綺麗な人が、この世にいるんだ・・・。
しかし・・?・・何やら違和感が・・。
双子に引かれ美女に近づいて行くと、その違和感の正体が次第に分かってきた。
・・この美女・・俺よりも頭四つは確実に大きい。
小柄なロアンが、首が痛くなる程見上げる身長差だ。
これは・・里中でも、抜きんでて大柄なんじゃ・・・。
金糸の様に輝く艶やかな髪、澄んだ新緑を思わせる翠の瞳、通った鼻梁に、蠱惑的な唇、豊満でたわわな胸元、薄絹から覗く滑らかな手足・・。
我が国一番と美女と称えられる皇女を遠目に見かけた事はあるが、この方の美しさには遠く及ばない。
ロアンがこれまで出会った女性の中で最も美しい人を目の前に、知らず体が強張っていた。
「二人共、案内ご苦労様でした。さ・・騎士様・・こちらの席へどうぞ。」
勧められ場には、心づくしに料理や酒が揃えられていた。
成程・・竜を娶れなかった俺を気使い、わざわざ祝宴の喧噪が届かないこの場所に別席を設けてくれたという事かな。
里の者の気遣いが心に染みるなぁ。
「あの・・騎士様・・お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「あぁすまない!名乗りもしていなかったな、ロアンだ。平民だから家名は無い。貴方の名は?」
「・・ヒスイと申します。」
「精霊の様な美しい方と、差し向かいで飲むなんて緊張します・・。」
「まぁ嬉しい・・。」
席に着き感謝を伝えるが、この身長差だどうしても目線の先が胸元にいく。
眼福だが少々目のやり場に困る。
口当たりの良さと、照れ隠しに酒が進んむが、かなり酒気が強い物だった様だ。
さして強い訳でも無いロアンは、あっという間に、ふわふわとした夢心地になっていた。
騎士としての振る舞いもすっかり解けて口調も態度も平民丸出しの素のロアンを、ヒスイが蕩ける目で見つめていた。
「選ばれた仲間が羨ましい・・ううん妬ましいかも・・。みっともないなぁ俺。・・愛し子なんて呼ばれて、自分じゃわかんないけど、腹の底のどっかに慢心があったのかなぁ?」
いつの間にか美女の膝上に坐らせられ、その腕の中に閉じ込められていた。
まるで赤子の様にあやされている様だ。
あぁいい匂いだ。それに柔らかい・・。
「俺竜が好きなんだ。竜騎士になれなくても、竜に関わる仕事をやっていきたい・・。今迄やってきた事を無為にしたくないよ。」
「ロアン様は、心根の真っすぐな方なのですね。」
ほうっと頭上にかかる吐息のくすぐったさに思わず見上げると、そっと触れるだけの口付けを落とされた。
へ?今口付けられたのか?
ぽかんと、惚けた表情で固まるロアン。
ヒスイは、華が綻ぶような妖艶な微笑を浮かべなから、戯れの様にペロンとロアンの唇をもう一舐めした。
「・・可愛らしい御方。」
顔を真っ赤にし、ますます固まるロアンに、ヒスイの舌が差し込まれ絡みつく。
体躯に見合う大きな舌が、ロアンの咥内を味わいつくすかの様に犯かしていく。
荒々しく動き回る舌とは裏腹に、まるで壊れ物を扱うかの様に、そのままそっと押し倒された。
「ん・・うんっ・・んん・・。」
「あぁ・・なんて甘いの。やはり間違いない貴方が私の・・。」
ヒスイの小さな呟きが聞こえたが、酸欠状態でくらくらと逆上せるロアンは、それどころではない。
そこから先は怒涛だった。
大柄な彼女の腕の中に閉じ込められたまま、まるっとさくっと剥かれ、何度も求められた。
ヒスイの手練手管は考えられない程匠で、何度も上り詰めては、彼女の中で果てる。
めくるめく爛れた夜に、ロアンの啼き声だけが響いていた。
ロアンとて男だ。
先輩の奢りとはいえ、娼館経験だってもちろんある。
だけど、こんな気持ち良くなかったよ!
唯一人『娶る』事が叶わなかった自分が宴席に出向けば、水を差す事になるだろう・・ロアンは参加の辞退を告げる。
周囲からの向けられる、気の毒そうな視線が居た堪れなかった。
一人夜の里をあてもなく彷徨っているといつに間にか、双子の子供に懐かれ手を引かれていた。
「こっち。こっちだよ。」
『娶り』の時期以外、人が訪れる事の少ない里だ、客人が珍しいのだろう。
子供といえど、小柄なロアンとさして身長は変わらず、驚くほど大柄だ。
また美しい顔立ちで、これもまた平凡なロアンとは比べ物にならない程整っている。
竜の末裔と言われる里の人々は、総じて美しく大柄な体躯に恵まれている。
だが彼らは、争いを好まず温和で竜と共に静かに慎ましく暮らしているのだ。
何処からか微かに歌声が聞こえてくる。
鈴の音の様に澄んだ声と言うのは、この様な音なのだと思わせる、美しい声だった。
ここに来て、どうやらこの双子がロアンを声の主の元へ案内しているらしい事に気が付いた。
林を抜け湖の畔へ出た先には、月の光を浴び金色に輝く髪を靡かせ歌う美女が佇んでいた。
あんな夢みたいに綺麗な人が、この世にいるんだ・・・。
しかし・・?・・何やら違和感が・・。
双子に引かれ美女に近づいて行くと、その違和感の正体が次第に分かってきた。
・・この美女・・俺よりも頭四つは確実に大きい。
小柄なロアンが、首が痛くなる程見上げる身長差だ。
これは・・里中でも、抜きんでて大柄なんじゃ・・・。
金糸の様に輝く艶やかな髪、澄んだ新緑を思わせる翠の瞳、通った鼻梁に、蠱惑的な唇、豊満でたわわな胸元、薄絹から覗く滑らかな手足・・。
我が国一番と美女と称えられる皇女を遠目に見かけた事はあるが、この方の美しさには遠く及ばない。
ロアンがこれまで出会った女性の中で最も美しい人を目の前に、知らず体が強張っていた。
「二人共、案内ご苦労様でした。さ・・騎士様・・こちらの席へどうぞ。」
勧められ場には、心づくしに料理や酒が揃えられていた。
成程・・竜を娶れなかった俺を気使い、わざわざ祝宴の喧噪が届かないこの場所に別席を設けてくれたという事かな。
里の者の気遣いが心に染みるなぁ。
「あの・・騎士様・・お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「あぁすまない!名乗りもしていなかったな、ロアンだ。平民だから家名は無い。貴方の名は?」
「・・ヒスイと申します。」
「精霊の様な美しい方と、差し向かいで飲むなんて緊張します・・。」
「まぁ嬉しい・・。」
席に着き感謝を伝えるが、この身長差だどうしても目線の先が胸元にいく。
眼福だが少々目のやり場に困る。
口当たりの良さと、照れ隠しに酒が進んむが、かなり酒気が強い物だった様だ。
さして強い訳でも無いロアンは、あっという間に、ふわふわとした夢心地になっていた。
騎士としての振る舞いもすっかり解けて口調も態度も平民丸出しの素のロアンを、ヒスイが蕩ける目で見つめていた。
「選ばれた仲間が羨ましい・・ううん妬ましいかも・・。みっともないなぁ俺。・・愛し子なんて呼ばれて、自分じゃわかんないけど、腹の底のどっかに慢心があったのかなぁ?」
いつの間にか美女の膝上に坐らせられ、その腕の中に閉じ込められていた。
まるで赤子の様にあやされている様だ。
あぁいい匂いだ。それに柔らかい・・。
「俺竜が好きなんだ。竜騎士になれなくても、竜に関わる仕事をやっていきたい・・。今迄やってきた事を無為にしたくないよ。」
「ロアン様は、心根の真っすぐな方なのですね。」
ほうっと頭上にかかる吐息のくすぐったさに思わず見上げると、そっと触れるだけの口付けを落とされた。
へ?今口付けられたのか?
ぽかんと、惚けた表情で固まるロアン。
ヒスイは、華が綻ぶような妖艶な微笑を浮かべなから、戯れの様にペロンとロアンの唇をもう一舐めした。
「・・可愛らしい御方。」
顔を真っ赤にし、ますます固まるロアンに、ヒスイの舌が差し込まれ絡みつく。
体躯に見合う大きな舌が、ロアンの咥内を味わいつくすかの様に犯かしていく。
荒々しく動き回る舌とは裏腹に、まるで壊れ物を扱うかの様に、そのままそっと押し倒された。
「ん・・うんっ・・んん・・。」
「あぁ・・なんて甘いの。やはり間違いない貴方が私の・・。」
ヒスイの小さな呟きが聞こえたが、酸欠状態でくらくらと逆上せるロアンは、それどころではない。
そこから先は怒涛だった。
大柄な彼女の腕の中に閉じ込められたまま、まるっとさくっと剥かれ、何度も求められた。
ヒスイの手練手管は考えられない程匠で、何度も上り詰めては、彼女の中で果てる。
めくるめく爛れた夜に、ロアンの啼き声だけが響いていた。
ロアンとて男だ。
先輩の奢りとはいえ、娼館経験だってもちろんある。
だけど、こんな気持ち良くなかったよ!
1
あなたにおすすめの小説
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
呪われた黒猫と蔑まれた私ですが、竜王様の番だったようです
シロツメクサ
恋愛
ここは竜人の王を頂点として、沢山の獣人が暮らす国。
厄災を運ぶ、不吉な黒猫─────そう言われ村で差別を受け続けていた黒猫の獣人である少女ノエルは、愛する両親を心の支えに日々を耐え抜いていた。けれど、ある日その両親も土砂崩れにより亡くなってしまう。
不吉な黒猫を産んだせいで両親が亡くなったのだと村の獣人に言われて絶望したノエルは、呼び寄せられた魔女によって力を封印され、本物の黒猫の姿にされてしまった。
けれど魔女とはぐれた先で出会ったのは、なんとこの国の頂点である竜王その人で─────……
「やっと、やっと、見つけた────……俺の、……番……ッ!!」
えっ、今、ただの黒猫の姿ですよ!?というか、私不吉で危ないらしいからそんなに近寄らないでー!!
「……ノエルは、俺が竜だから、嫌なのかな。猫には恐ろしく感じるのかも。ノエルが望むなら、体中の鱗を剥いでもいいのに。それで一生人の姿でいたら、ノエルは俺にも自分から近付いてくれるかな。懐いて、あの可愛い声でご飯をねだってくれる?」
「……この周辺に、動物一匹でも、近づけるな。特に、絶対に、雄猫は駄目だ。もしもノエルが……番として他の雄を求めるようなことがあれば、俺は……俺は、今度こそ……ッ」
王様の傍に厄災を運ぶ不吉な黒猫がいたせいで、万が一にも何かあってはいけない!となんとか離れようとするヒロインと、そんなヒロインを死ぬほど探していた、何があっても逃さない金髪碧眼ヤンデレ竜王の、実は持っていた不思議な能力に気がついちゃったりするテンプレ恋愛ものです。世界観はゆるふわのガバガバでつっこみどころいっぱいなので何も考えずに読んでください。
※ヒロインは大半は黒猫の姿で、その正体を知らないままヒーローはガチ恋しています(別に猫だから好きというわけではありません)。ヒーローは金髪碧眼で、竜人ですが本編のほとんどでは人の姿を取っています。ご注意ください。
彼女は白を選ばない
黒猫子猫
恋愛
ヴェルークは、深い悲しみと苦しみの中で、運命の相手とも言える『番』ティナを見つけた。気高く美しかったティナを護り、熱烈に求愛したつもりだったが、彼女はどうにもよそよそしい。
プロポーズしようとすれば、『やめて』と嫌がる。彼女の両親を押し切ると、渋々ながら結婚を受け入れたはずだったが、花嫁衣装もなかなか決めようとしない。
そんなティナに、ヴェルークは苦笑するしかなかった。前世でも、彼女は自分との結婚を拒んでいたからだ。
※短編『彼が愛した王女はもういない』の関連作となりますが、これのみでも読めます。
ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています
柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。
領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。
しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。
幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。
「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」
「お、畏れ多いので結構です!」
「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」
「もっと重い提案がきた?!」
果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。
さくっとお読みいただけますと嬉しいです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
貴方は私の番です、結婚してください!
ましろ
恋愛
ようやく見つけたっ!
それはまるで夜空に輝く真珠星のように、彼女だけが眩しく浮かび上がった。
その輝きに手を伸ばし、
「貴方は私の番ですっ、結婚して下さい!」
「は?お断りしますけど」
まさか断られるとは思わず、更には伸ばした腕をむんずと掴まれ、こちらの勢いを利用して投げ飛ばされたのだ!
番を見つけた獣人の男と、番の本能皆無の人間の女の求婚劇。
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
番が逃げました、ただ今修羅場中〜羊獣人リノの執着と婚約破壊劇〜
く〜いっ
恋愛
「私の本当の番は、 君だ!」 今まさに、 結婚式が始まろうとしていた
静まり返った会場に響くフォン・ガラッド・ミナ公爵令息の宣言。
壇上から真っ直ぐ指差す先にいたのは、わたくしの義弟リノ。
「わたくし、結婚式の直前で振られたの?」
番の勘違いから始まった甘く狂気が混じる物語り。でもギャグ強め。
狼獣人の令嬢クラリーチェは、幼い頃に家族から捨てられた羊獣人の
少年リノを弟として家に連れ帰る。
天然でツンデレなクラリーチェと、こじらせヤンデレなリノ。
夢見がち勘違い男のガラッド(当て馬)が主な登場人物。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる