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私の神様は諭される

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絵本のコーナーの椅子は低すぎるので、若様を大人の読書スペースに促すと素直についてきた。

「若様。人ってあっという間に死ぬの。わかる?それはね、なっちゃんも例外じゃない。」

若様がぎょっとする。
僕は、ついと、図書館内の小さな女の子を指さして、知らん顔で話を進める。

「若様がなっちゃんに出合ったのは、あの子ぐらいの時でしょ。で、今はそっちの女の子ぐらい。あっという間だったでしょう?こうして逃げ回ってるうちに、誰かと番っちゃうかもしれませんよ?」

若様が『がーん』って表情になった。
なるほど、なっちゃんに聞いてた通りだな、こりゃ面白い。

「それとも、僕の糸で雁字搦めにくるんで、なっちゃん貰っていい?ふふっ。」

多分僕、今相当悪い顔して笑ってるんだろうなー。
揚羽が『ツンデレ』なら、僕は『ヤンデレ』・・自覚はある。
だってそれが蜘蛛の性だから仕方ない。

若様が必死になって首をふる。

まぁ、そうでしょうね。
僕が『なっちゃん』って名前呼ぶのも、嫌がるくらいだし。
鈍いなっちゃんは気づいてないけどさ。

・・欲しかったなぁ、なっちゃん。

「若様は、なっちゃんとずっと一緒にいたいんだよね。じゃぁ、とっとと戻って名付けの儀すませて、お嫁さんにしなきゃあねぇ?」

こくこく頷く若様。
若様、素直でチョロいなぁ。
ちょっと罪悪感。

「はい、じゃぁ家出は今日でお終いですよ。戻るにあたって、なっちゃんに番の約束を先にとりつけとかないと。」

きょとんとする若様。
何で?って顔だなぁ。

「若様・・。お嫁さんになって下さいって言って、『はい』って返事もらえないと番えないからね。もしかしたら、『嫌』って断られるかもしれないから?そこは若の頑張り次第。」

また『がーん』ってなってる。
ふふふっ。ほんと面白いよね若様って。

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